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『KNOCK OUT vol.3』

▽17日 TOKYO DOME CITY HALL 観衆 2,000人(超満員)

 最終の5R、小笠原瑛作(クロスポイント吉祥寺)が左ローを放つと、ムエタイ界の中でも権威のあるルンピニースタジアム認定スーパーフライ級王者、ワンチャローンが崩れ落ちると同時に、ワンチャローン陣営がタオルを投入。見事なKO劇だった。その瞬間、顔をくしゃくしゃにした瑛作の表情からは、喜びよりも先に安堵感を覚えたように見えた。

 「本当にキツかったです。何度も心が折れそうになりました」

 昨年12月に行われた『KNOCK OUT vol.0』(TDCホール)で、那須川天心相手に何もさせてもらえぬまま、1R 2分23秒、スバリと決まった左バックスピンキックによりTKO負けという、ルンピニー王者としてこの上ない恥をかいたワンチャローンは「KNOCK OUTのリングでもう一度チャンスが欲しい」とアピール。今回の来日はかなり気合が入りまくっていたという。天心も「ボクはワンチャローンが強いかどうかわかる前に勝ってしまったので」と話していたが、今回の瑛作戦ではワンチャローンの強さが見られるだろうという声はとても高かった。

 「僕も天心みたいに強さを出させる前に勝てたらいいんですけどね」戦前に瑛作はこんな話をしていたが、1R、パンチからローキックの連打で、ワンチャローンから先にダウンを奪うなど、瑛作は最初から飛ばすことで、ワンチャローンの強さを封じにかかっていた。しかし、1Rで一気に倒せなかったことで、「瑛作の心は折れてましたね」と山口元気会長は振り返っている。この言葉を裏づけるかのように、直後の2Rではワンチャローンのバックブローが決まり、瑛作はダウンを喫してしまう。その後は瑛作が立て直したことで、試合を優位に進めて、4Rには2度のダウンを奪うが、何度蹴られてもなかなか倒れないワンチャローンの姿からは、ルンピニー王者の強さと意地を見ることができた。それは試合後、ワンチャローンが歩いて帰れなかったことからも伺える。

 強さを出させずに勝った天心も素晴らしかったが、強さを引き出した上でKOした瑛作も価値ある勝利だったのは言うまでもない。

 「正直、話をいただいたときはワンチャローンかよ!リスクがデカイなって、嫌な思いしかなかったです。試合を受けるかどうか悩みましたね。でも、この試合は僕にとって勝敗以上にキャリアアップ出来る試合だと思うし、天心とやるには名のある選手と試合をして、倒さなきゃいけないって常に言ってきたので、やると決めたら気が楽になりました」

 カードが発表された直後に瑛作は、ワンチャローン戦を打診されたときの心境をこのように話していた。戦前の予想ではルンピニー王者ワンチャローンの実力は、瑛作よりも遥かに上という声が非常に高かった。小野寺プロデューサーも「今回は、強い選手と対戦することで、瑛作クンが苦しみながらも乗り越えていく姿を見たかった」と述べており、あえて強敵と当てることで、瑛作の新たな一面を引き出したかったようだ。結果、“覚悟”を見せた上で勝利を収めたのだから、瑛作の潜在能力の高さを示すこととなった。

 「皆さんにチャンピオンに勝つとこが見せられて嬉しいです。このKNOCK OUT、僕が引っ張っていくんで、皆さん僕についてきてください!あと天心!ミックスルールで忙しいと思うけどたまにはKNOCK OUTに帰ってきてください!」

 試合後、いつもの“キラつき”を取り戻した瑛作はマイクを掴むと、リング上からは初めて「天心」の名前を出した。バックステージや一夜明け会見では「お客さんが望むなら、すぐにやりたい気持ちはあります。ただ僕も天心ももっともっと知名度を上げて、世間からもKNOCK OUTがもっと注目されるようになったときに、誰もが見たいカードと思われたいですね」と素直な気持ちを話していたが、大会終了後の総括でKNOCK OUTの小野寺力プロデューサーは、「8月(20日)の大田区総合体育館大会に天心クンの出場が決まってますけど、まだ相手は決まってません。今回、ワンチャローンにああいう勝ち方をしたことで、瑛作クンも候補に入りますね」と注目の日本人対決実現に含みを持たせた。