<仮想コミュニティーで連携させ、指導部からの指示すら必要としない、新時代のテロが増殖する恐怖>

またもや世界は痛ましいテロのニュースに衝撃を受けた。事件が起きたのはイギリス中部マンチェスター。人気歌手アリアナ・グランデのコンサート会場入り口で男が自爆テロを決行し、これまでに22人が死亡した。

事件直後にはテロ組織ISIS(自称イスラム国)が犯行声明を出したが、実行犯のサルマン・アベディはリビア系移民2世で、英治安当局はリビアの過激派組織の関与についても捜査を進めている。

筆者2人がホワイトハウスにいた当時、米政府のテロ対策の主眼はISISなどのテロ組織が直接的にその指揮系統を使って欧米で実行するテロの防止だった。だがその後、ISISが先鞭をつけた手法が大きな懸念材料になった。テロ組織が直接的に関与せずとも、インターネットを通じて世界中のシンパに攻撃を実行させるという手法だ。

今やテロ組織は難民に紛れた戦闘員を送り込まずとも、ネットを利用してやすやすと国境を越え、大きな被害をもたらせる。

これは開かれた欧米社会を揺るがす安全保障上の核心的な問題だ。テロ組織がネットに流す宣伝動画やメッセージに触発された、いわゆるローンウルフ(一匹狼)はテロ組織の指導部に直接コンタクトを取る必要はない。自分たちで攻撃を計画し、準備し、実行する。

これは新たな脅威だろうか。そのとおり。ただし、一般的に言われている脅威とは少し違う。

ISISはローンウルフ型のテロを解き放ったのではない。むしろネットの巧みな活用で、ローンウルフ型テロの終わりの始まりを招いたのだ。

【参考記事】ISIS戦闘員を虐殺する「死の天使」

これを理解するには、ISISがソーシャルメディアを使って新兵募集や過激思想の伝播に革命をもたらしたことを理解する必要がある。さらに、なぜ一部の人々はISISのメッセージに洗脳されやすいかを理解する必要もある。

彼らは社会の中で孤立し、自分の居場所を求めていた人たちだ。ISISの大義のために武器を手にし、トラックで人混みに突っ込み、手製爆弾を製造すれば、コミュニティーの一員になれる。自分は独りぼっちではなく、新たな歴史をつくる勇敢な戦士たちの一員だと思える。

帰属意識がカギになる

ごく普通の市民でも主流のメディアに触れていれば、過激なプロパガンダの一端を目にすることになる。実際、多くのアメリカ人がISISの名を知ったのは14年8月にISISによる人質斬首ビデオの一部がニュースで盛んに流されたからだ。

[2017.6. 6号掲載]

ジェン・イースタリー、ジョシュア・ゲルツァー(元米国家安全保障会議テロ対策担当)