「色々な人のサポートでここまで来られました」

 正に歴史的快挙! 世界三大レースのひとつ、インディ500を日本人として初めて制覇した佐藤琢磨選手が、テキサスでのレース後、忙しい合間を縫って日本へ凱旋帰国した。そしてその貴重な時間のなかから、インタビューの機会が得られた。

 WEB CARTOPがインタビュアーにお願いしたのは中谷明彦さん。ドライビング理論の座学を行う「中谷塾」の主宰で、佐藤琢磨選手は中谷塾一期生なのだ。中谷さんによれば久しぶりの対面だという。

 佐藤琢磨選手(以下佐藤):中谷さん! お久しぶりです!

 中谷明彦さん(以下中谷):本当に久しぶりだよね。まずはインディ500制覇、おめでとう!

 佐藤:ありがとうございます!

 中谷:話したいことは山ほどあるんだけど、まず、今日はこれを持ってきたんですよ(色紙を出す)。

 佐藤:もしかして皆の?

 中谷:そう、中谷塾の第一期生の寄せ書き。

 佐藤:懐かしい! ボクが書いたものもありますね。

 中谷:色紙というのは成功すると裏に書くんだよね。だから今日は、ぜひ「やった!」というのを裏に書いてもらえればと思うんだけど。

 佐藤:わかりました!

 中谷:ちょうど今年中谷塾が20年目なんですよ。

 佐藤:そうですよね、ボクがレース始めた年ですから。

 中谷:オレ今年還暦だし。

 佐藤:ホントですか(笑)?

 中谷:だから(琢磨も)20年経つとこうなるから。

 佐藤:(笑)

 中谷:F3でマカオで勝ったときも、マスターズで勝ったときも、それからイギリスでチャンピオン獲ったときもスゴイ嬉しかったし、もちろんF1行ったときももの凄く嬉しいけど、今回はそれ以上! ホントに嬉しいよね。

 佐藤:ありがとうございます! ホントにここから(中谷塾から)始まりましたからね。

 中谷:ここから始まったと考えると、長かったような、短かったような。でもいつの時もどこかで必ず活躍しているからね。ずっと見ていたけど、まさかここまで大成功するとは。

 佐藤:あはは! 中谷さんはF1の中国グランプリまで来て下さったり、本当に嬉しかったですよ。

 中谷:どうですか? インディ500で優勝して、写真もいっぱい見せてもらったけど、外国人に囲まれてさ。

 佐藤:いや、もう信じられないような思いです。自分はこれを目標にやってきたわけですけど、本当に色んな人がサポートしてくれてここまでやってこられたんだ、という思いが凄く強いですね。

 中谷:何年か前(2012年)もあとわずかで勝てそうだったけれど、常にトップ争いには絡んでいるし、3連勝しててもおかしくないと思っているんだけど、どう? 自信はついた?

 佐藤:そうですね。多分メンタル的にも強くなっているし、あるいは2012年、あそこで勝てなかったこと。あれはあそこに居ないとわからないことが沢山あるんですね。あの瞬間、中谷さんなら凄くよくわかると思うんですけど、同じようなシチュエーションでも普通に走っている練習と、レースと、それとインディ500のファイナルラップで闘う、ということは全然違うことで、あそこでボクは(最終ラップでのオーバーテイクに)挑戦しているんですけど、結果は失敗に終わっているんですよね。スピンして。
で、あれがあったからこそ、ホントにここに繋がっている。だから2017年のインディ500はレース全体をマネジメントできて、僕自身も本当に興奮していたけど、非常に冷静に色々なことを見ながら組み立て上げられたと思う。そしてそれを支えてくれる素晴らしいチームと、クルマを作ってくれたことが一番嬉しいですね。

「赤旗のときは寝てたってホント?」「はい、寝ました」

 中谷:ネットの情報で見たんだけど赤旗でレースが中断してたとき、寝てたって言うのは本当?

 佐藤:はい、寝ました!

 中谷:オレもね、そういうことあるのよ。

 佐藤:ありますよね!

 中谷:いつ始まるのかもわからないし、ずっと緊張してきているから、ちょっとでも休めるなら休みたいと思うんだよね。

 佐藤:コクピットって意外と気持ちいいんですよね。身体にピッタリしてるし暖かいし(笑)。

 中谷:インディ500は今、気候的に涼しいぐらいなの?

 佐藤:あの日のレースは暑くなかったですね。もちろん汗はジトッと出て来ますけれども。

 中谷:クールスーツは着ないの?

 佐藤:着ないですね。フォーミュラカーは場所がないので、一切着用しません。

 中谷:風を導入するとかもなく?

 佐藤:コクピットに舞う風しかありません。ですからやはり汗でびっしょりになりますね。1レースで体重が2から3kgぐらい減ります。

 中谷:ドリンクは?

 佐藤:だいたい1.5リットルぐらい積んでます。

 中谷:途中でドリンクの補給はできるの?

 佐藤:それはできません。だから軽い脱水症状ですね、レースを終える頃には。できるだけしっかり飲んでいかなければなりませんし、だからといって3リットルも4リットルも積んでも、レース中はそんなにゴクゴク飲めないじゃないですか。だから乾かないように軽く口のなかをしめらすように飲むような感じです。

 中谷:オレは3年ぐらい前に、またランボルギーニのワンメイクレースを始めたのね。で、優勝はしたんだけど、もう疲れちゃって疲れちゃって(笑)。ドリンクとクールスーツないと、あの程度のクルマでももうダメなんだよね。

 佐藤:GTカーの場合は車内の温度も凄く上がるでしょうし、また違う苦しさがありますよね。

 中谷:ところで今シーズンはまだまだレースが続いていくわけだよね。

 佐藤:はい! インディ500が終わったあと、デトロイトのダブルヘッダーがあって、テキサスのレースがあって、それでこの場に来ているので、ずっとノンストップです。

 中谷:それでまた来週末はレースだよね?

 佐藤:はい、ロード・アメリカがあります。

 中谷:今年は総合チャンピオンが狙える?

 佐藤:厳しいとは思います、正直。でも狙いたいです。今選手権3位に着けてまして、この先ボクたちが得意とするレースもそうでないレースもあり、でもそのチャレンジは十分価値があることなので、チャンピオンシップを狙って、チームと一緒にやっていきたいです。

 中谷:インディ500のウイナーっていうと、まわりの協力、メカニックなんかの動きも変わってくるんじゃない?

 佐藤:そうですね、やはり全員のモチベーションがグッと上がってるし、チーム全体もですけれどとくに26号車のメンバーのモチベーションが凄く上がっています。それとチーム内での情報は完全にオープンですし、共有するんですけれど、チーム内のコンペティションもあります。そうなるとチームメイトも負けたくないとなってさらに良くなって、その情報を共有したボクたちもさらに上に上がるから、凄く良い条件と環境が整いつつありますね。

 中谷:今アンドレッティだよね? 当時ボクもアンドレッティと接触していて、F1にアンドレッティから出る、なんて話もあったんだよね。

 佐藤:そうなんですか?

 中谷:さらに(ホンダの)八郷社長はボクの同級生だったりね。

 佐藤:色々繋がってますね!

 中谷:それからロジャー安川がスポッターだったんだって?

 佐藤:そうです!

 中谷:今年からロジャーなの?

 佐藤:いや、ボクがインディにいってからなので、これで8年目なんですよ。一緒にやるの。

 中谷:ニュースで見て、あっ、ロジャーなのって初めて知ったんだよね。

 佐藤:たしかにスポットライトが当たるポジションではないですが、ロジャーは本当にボクの優勝を支えてくれた大切なパートナーです。

 中谷:そのロジャーのお父さんは、当時三菱の仕事なんかもしてて、ボクがアメリカ行ったときに仕事で繋がったりとか、本当にどこかしら繋がっているよね。

 佐藤:狭い世界ですよね(笑)。

 中谷:残念ながらインタビューの終了時間なので、本当にこれからも頑張って!

 佐藤:ありがとうございます! 頑張ります!!