「組織という巨大なものに立ち向かえる、あなたは“小さな巨人”なんだ」

 これは小野田(香川照之)との最後の一戦に向かう香坂(長谷川博己)に、山田(岡田将生)がかける言葉だ。警察という組織の中では小さな存在である香坂は、己が信じる“正義”を背負ってきた。そんな香坂のことを認め、信頼している山田との“絆”が表れた、このドラマを象徴するシーンだ。

(参考:『小さな巨人』が描いてきた“見えない敵” 『踊る大捜査線』『シン・ゴジラ』との繋がりを考察

 ドラマはいよいよ香坂と小野田の最終決戦へ。三笠(春風亭昇太)や第9話での小野田とのバトルも手に汗握るものであったが、それらは前哨戦であると言わんばかりに、最終話はさらなる盛り上がりを見せた。早明学園を舞台にした殺人事件は、17年前に起きた事件と繋がっていた。鍵となるのは、小野田の部屋の金庫にある裏帳簿の切れ端。これは、前捜査一課長であり早明学園専務の富永から、小野田へと隠蔽を依頼されたものであった。小野田がその切れ端を持っていたのは、彼の中にもまた“正義”が眠っていたからに他ならない。それを香坂は信じた。

 17年前の事件の証拠を香坂の父、敦史(木場勝己)は掴んでいたが、警察という組織の中で揉み消されていた。組織という中で繋がれた悪しき絆。香坂にとっては、父を含めた2代に渡る正義の戦いだ。全てを押し付けられ、捜査一課長という使命と心中する覚悟を持った小野田。彼にも脈々と受け継がれる、捜査一課長としてのプライドがあった。「敵は味方のフリをする」、香坂を信じきった小野田は、17年前の真実を口にする。その録音データを盾に、香坂は小野田に組織の負の遺産をこの代で終わらせようと提案する。

 組織の中の捜査一課長の重み、自身の中で確かに眠る正義。その狭間で揺れる小野田は涙を流し、下唇を噛みしめ苦悩する。金庫の前に立った香坂は「この目にあなたの正義を見せてください!」と誘導する。どアップになる、これでもかというほどのカメラ目線。キャストによる熱い演技がこのドラマの最大の特徴であるが、今回のカメラ目線の“顔芸”は、過去最高レベルの熱量を感じずにはいられなかった。

 これまでも、香川はインフレが心配になるほど熱い演技でドラマに挑んでいたが、それは杞憂だったようだ。第7話にて「100%でも足りない、200%の覚悟が必要だ!」と香坂に言い放つシーンがあったが、最終話にして「500%の確信を持って言ってやる!」というセリフが飛び出た時は、このドラマは天井知らずだと確信をした。「認めないー! 絶対に認めないー!」ととんでもない見幕で容疑を否認する香川は、小野田という役を楽しんでいるようにすら感じる。

 小野田は裏帳簿を香坂に渡し、最後に涙を流しながら正義を貫く。しかし、富永をはじめとした事件の関係者は組織と示し合わせ罪を免れるのだった。早明学園と警察組織、政治家の癒着は、現実社会の問題とリンクさせた、“ノンフィクション”の物語でもある。「敵は味方のフリをする」。結果、敵は見えない組織という巨大な怪物だった。思えば『小さな巨人』というドラマそのものが、何か巨大な怪物に立ち向かっていたのかもしれない。

(渡辺彰浩)