仏サンジュニアンにある「エルメス」のレザー工房で作られるウォレット(2017年6月8日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】ファッションデザイナーたちの卓越した技術とグローバル化の恩恵により、フランスの高級ブランドは新たな仕事を再び生み出している。全国的に高い失業率がもたらす暗雲をもろともせず、だ。

 高級品への世界的な欲求の高まりのおかげで、「エルメス(HERMÈS)」や「シャネル(CHANEL)」などのブランドはフランスを中心に何千もの技術スタッフを雇用し、350万人に及ぶ失業者を減少させることにも貢献している。バーキンで知られるフランスのラグジュアリーブランド「エルメス」は、アジアを中心とした海外で高まる需要に応えるため、2つのレザー工房を新設。220人の雇用を生み出した。

 そのほか「シャネル」や「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」「サンローラン(Saint Laurent)」といったフランスのメゾンもレディ・トゥ・ウェア、アクセサリーおよび香水において世界的なブランドとなった。売り上げの上昇、とくに中国人消費者たちの高級品への欲求を満足させるため、製造工業は雇用者を増やしている。世界銀行(World Bank)のデータによると、フランスにおける総体的な製造部門の少なさに反して、経済的な生産高の取り分は過去半世紀分の約11%にあたる。

「エルメス」が新設した仏サンジュニアン(Saint-Junien)にある工房では数十人もの職人がレザーを加工し、手袋や財布ほか、小さな商品を作り上げている。この設備では、機械を用いてオートメーション化した作業はない。作業は手で行われ、すべてのパーツには技術者の名前が刻まれる。

「このような現場を作ることは他の国では考えられない」と、「エルメス」の製造を担うエグゼクティブ・バイスプレジデントのギョーム・ドゥ・セーヌ(Guillaume de Seynes)は語る。「品質とブランドイメージのために、あえてこのような作業方法にしている。『メイド・イン・フランス』とは顧客にとって、フランスの製造技術を意味する」とし、その作業方法は何世代にも渡って引き継がれている。

■グローバリゼーションこそ、歴史的チャンス

「グローバリゼーションはラグジュアリー部門において、仕事を生み出し、国を豊かにする歴史的なチャンスと言える」と創業者、ティエリー・エルメス(Thierry Hermes)の子孫であるセーヌは語る。商品の85%をフランス本国で生産し、その86%を輸出する「エルメス」は、過去5年間で2,400もの新しい雇用をフランスで生み出した。

「エルメス」だけではない。「サンローラン」や「グッチ(GUCCI)」「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」などを傘下に持ち、パリを拠点とする世界第2のラグジュアリーグループ「ケリング(KERING)」もかさ上げをした。過去3年の間にラグジュアリー部門の従業員は13%も増加。2013年にはノルマンディー(Normandy)を拠点とする、なめし革工場「フランスクロコ(France Croco)」を獲得した。同社はワニ革の専門業者で、フランスとイタリアのトップメゾンに素材を供給している。従業員数は2020年までに、45人から160人まで増えると予測される。

 一方、高級ブランドグループの「モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(Moet Hennessy Louis Vuitton、LVMH)」も上昇し続ける売り上げに合わせて1,000もの職を昨年追加した。同社は「ディオール(Dior)」「ルイ・ヴィトン」「ゲラン(GUERLAIN)」「ジバンシィ(Givenchy)」、そしてシャンパンの「モエ・エ・シャンドン(MOËT & CHANDON)」やコニャックの「ヘネシー」を含む70ブランドを傘下に持つ。売り上げは今年400億ユーロ(約495兆5515億9200万円)に達した。

 同社の人事部部長であるシャンタル・ガンペルレ(Chantal Gaemperle)は「傾向を比較すると2017年はさらに少し上昇している」と語る。雇用は「技術者から経営者まで、すべての職業、すべての階層にいたる」と言い、内93%もの契約は終身雇用だという。

■ラグジュアリーはパワーシンボル?

 ラグジュアリー部門の成長はこのような形でも表れている。LVMHは今年、エネルギー事業の「トタル(Total)」や医薬品メーカーの「サノフィ(Sanofi)」も押しのけて、パリの株式取引において、時価総額でもっとも大きな会社となった。

「ラグジュアリーがフランスの経済において著しい重みを持つという、パワフルなシンボルだ」とボストンコンサルティンググループ(Boston Consulting Group)のグローバルラグジュアリー部門を率いるオリヴィエ・アブタン(Olivier Abtan)は語る。フランスのラグジュアリー会社はそのイメージを汚すことなく、高級感とクリエイティビティを保持することに成功している。さらにそこで生まれた新しい職は、今後も存続する見込みがあるとアブタンは考える。「これらの商品が並外れているのは、ハンドメイドだという点。職人技術は、ロボットに取って代われるものではない強い要素だ」

 しかしフランスはレザーとジュエリーにおける先導者であり続けている一方で、シューズの製造技術とレディ・トゥ・ウェアではイタリアに負けている。それはフランスの会社にとって真の挑戦となるとアブタンは付け加えた。

 さらにラグジュアリー効果は電化製品部門にまで届いている。「サーモミックス」のフードプロセッサーで知られるドイツの「フォアベルク(Vorwerk)」は、上昇する売り上げを維持するために、過去数年間で1億ユーロ(123億9300万円)をフランス中央にある自社工場に投資し、100の雇用を生み出した。
【翻訳編集】AFPBB News