地域リーグから日本を変える!〜アミティエSC京都の挑戦〜その1

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このところ、アマチュアから日本のサッカーを変化させようとする野心を掲げるクラブが数多く現れている。今治FCやいわきFCの取り組みはテレビで取り上げられ、話題になっている。

しかし、「日本を変えよう」としているクラブは彼らだけではないのだ。ユース年代の育成に「新たな風」を吹き込み、日本のサッカーを変える…そんな未来を描くクラブが。

その一つが関西サッカーリーグ1部に所属している「アミティエSC京都」である。

2009年にFC京都BAMB1993がアミティエ・スポーツクラブと統合。それによって生まれたこのチームは、強固な育成組織をベースとして構築されており、頂点から下まで一貫した指導を可能にしているクラブだ。

裾野が広がると同時に、日本サッカー界の競争は一層激化している。その中でJリーグを目指すというのはどのような道のりなのか?どんな戦いが繰り広げられているのか?

今回はアミティエSC京都の社長兼GMである松本尚也氏と、トップチームの監督を務めている元日本代表MF草木克洋氏にお時間を割いて頂き、それらのことを存分に伺ってきたぞ!

(聞き手:籠信明:@cage_nob&編集部T)

注目を高める地域リーグ、その戦いの「独自性」とは?

――本日はお越し頂きましてありがとうございます。まずは、先週の試合勝利おめでとうございます(5月27日、関大FC2008戦)。6-2での勝利でしたね、会場に見に行きました。

松本尚也社長兼GM(以下「松本」):ありがとうございます。アクアパルコ(洛西浄化センター公園)まで来たんですか?金網デスマッチの(笑)

――そこです(笑)。得点はかなり取りましたが、試合後監督はすこし不満そうでしたね?

草木克洋監督(以下「草木」):失点というよりも守備がルーズになったからね。「しっかりやれ」と伝達したにもかかわらず。得点が入ったからか、ピッチの中で相手の力を測ってしまったんやね。

――地域リーグはそういう油断で試合を落とすと影響が大きいですからね。上位と下位に差がありますし試合数も少ない。その中で首位を狙って戦うには?

草木:失点をゼロに抑える、そして手数をかけずに点を獲ろうと徹することやね。ビルドアップやポゼッションもありやけども、地域リーグでそれが100%出来る選手はまず揃わへんから。

3〜4人向いていない者がいると命取りになるからね。前線にパワー、スピード、決定力ある者を置いて、切り替えを早くして、敵陣で取り返す。それが全然なかったやろ、この前の試合では(笑)。

「うまいけど怖くない」では上には行けへんぞ、ここで幸せならそれを貫けばいいが、我々は違うと。

――監督は佐川急便大阪とアミティエSC京都で全社(全国社会人サッカー選手権大会)、地域決勝(全国地域サッカーチャンピオンズリーグ)に出ましたね。去年の全社では沖縄SVと東京23FCに勝利しました。リーグと戦い方に違いはありますか?

草木:連戦をしなければならないというのが一番過酷やね。全社は40分ハーフで、地域決勝は90分。それを4〜5日連続やから、カウンター主体では勝ち切れへんね。ポゼッションを織り交ぜながらゴールを取らないと。

Jでもそうやけど、ポゼッションとカウンターをうまく使い分けられるクラブでないと勝てないね。

ジャイアンツだけじゃ、夢がない!

――アマチュアチームとしてのトレーニングというのは大変ですか?午前に練習して午後にスクールで指導。昨年までは週3回だったとか。

草木:そう。笑うやろ?土曜日ゲームやったら週2回。1回フィジカル、もう1回が戦術。今は一日増えたけどね。ただ日曜日に試合やと、土曜日休み(笑)

――試合前日オフですか!その中でどんなところに気をつけて練習しているんですか?

草木:まず動き回れること。そういうフィジカルトレーニングを1年間通してやる。技術的なところは大半が映像を見ての作業になるね。練習前に毎週ビデオを作る。「また同じところを編集しとるわ…」と思いながらね(笑)

松本:編集も監督がやってくれるんですよ。いつも怒りながら(笑)

草木:またこれや!とかね。4時間くらいかかって、終わったら目がおかしくなっとるね(笑)

松本:プロみたいに綺麗な映像はないじゃないですか。僕らが撮ってるものやから、米粒みたいな感じでね。

――映像資料はどう手に入れているんですか?特に全社は前日まで相手がわかりませんよね。

松本:前乗りで選手が行ったり社長が行ったり。あとはクラブ同士の関係があるから、相手と同じリーグのクラブに頼んだり。うちにも要望が来ますね。

草木:全社は大変よ!どっちが勝つかわからないからどっちも見て、宿舎帰って作って、晩飯終わったら流さなきゃならん。

松本:午後2時キックオフの試合を、午後8時には完成させないといけない。

――…それは大変ですね。JFLに昇格するためにはそこを勝ち抜かなければならないわけですが、何を成長させなければならないですか?

草木:やっぱりメンタル的なタフさかな。その他はスピード、力強さ。テクニックよりは、スピードのほうが大事やね。

――JFLと地域リーグのレベル差は?

草木:あるね。強さ、速さは2枚ほど上やね。ただ、選手は15分やれば慣れるよ。

――4月23日には天皇杯でカターレ富山(J3)と戦いましたね。その時も差は感じました?

草木:いや、その時は感じへんかったね。(ロングボールを)蹴ってきよったからね(笑)。「立山連峰に届くくらい蹴ってきよった」って(記者に)言うたよ。

松本:それ、記事にそのまんま載ってましたね(笑)

草木:カウンターしたろうと思ってたから中盤を5枚にしてあったんやけども、パスを入れてこなかった。

我々の感覚では、J3はまだJリーグではない。ただ、日本のサッカーにはそのようなチームが必ず必要になると同時に、今の間に基盤を作っていかなければならない。今後J3にも入れ替え戦が始まると、都心部のクラブばっかりになっていくかもしれん。

それではジャイアンツばっかりになってしまう。それでは広がりがなくなってしまうし、子どもたちの夢も難しくなるよね。

日本のレベルは「めちゃくちゃ上がった」!しかし…

――草木監督は関西国際大学でも教えられていましたが、プロやアマチュアのクラブと求められるものに違いがありますか?

草木:人数が多いから、早めに名前を覚えることやね(笑) 。最初は70名おったけど一週間で覚えた。勝手にあだ名つけたりしてね。

選手の特徴を掴むことは難しい。今MIOびわこ草津に行った原口(原口大祐選手)がおったけど、彼も発見したのは夏くらいやったから。

――選手の入れ替えも大変になりますよね。

草木:でも、出来るだけ活性化させないとモチベーションが下がるからね。社会人リーグの方にも参加して。こっちも最後は兵庫県1部まで上がったんかな。

その4部とかって、めっちゃ質低いのよ。文句は言う、足は蹴る、飛び蹴りしてくる、終わったあとに胸ぐら掴む。ちょっと教育上悪いから早く抜けようとね(笑)。

でも、サッカーといえどもいろいろあるよ。世界へ行ったら、食べ物も風土も気候も違う。それぞれで変わる。同じスペインでも地域で特色がある。

――イタリアでも非常に攻撃的なチームや監督が出ますよね。

草木:モンテッラ(現ミラン監督)は面白いよね。(フィオレンティーナへ)行った時に色々話は聞かせてもらった。

練習は攻撃的で、ネガティブな言葉は使わへん。「ボールを失うな」ではなく、「保持し続けろ」と言う。前向きな発想でやっているね。

――日本の指導は?草木監督が現役時代と比べて、サッカーのレベルは向上しましたか?

草木:めちゃくちゃしたんちゃうかな。一貫指導というのが定着してるよね。各カテゴリが整備されて。欧州は1歳ごとにチームを作っていて、それを取り入れた。

昔は「ガンといってボンといってドンといけ」やったからね、全くわからへん。これを監督が言うんやからね(笑)。だけど、だからこそ自分で考えて育って、職人が生まれてきたんやろね。今はそういうのはおらん。JFAが「金太郎飴」を作ろうとするから。

日本の考え方は「このカテゴリみんなで一緒に上がろう」。でも欧州はたくさん集めて「上がれるのはこれだけ」という形。

――金太郎飴ができる理由は学校やユースの育成?

草木:いや、それよりは子供やと思うね。U-12まで。

松本:ポジションを決めずに個の技術を高めるという目的があって、スペシャリストが生まれないところはあると思いますね。8人制になったからなおさら難しくなっているのかなと。蹴ってはいけないみたいな風潮もあって、ヘディングが強い子が育たないとか。

阪神タイガースがあってもいい!

――昔のほうが個性ある選手が多かったと。衝撃を受けた選手は?

草木:やっぱりガマさん(釜本邦茂氏)ちゃうかな。

ヤンマーに入って「釜本がなんぼのもんじゃ」と思ってたけど、練習したら「なんやこれ」やったね。ガン!と後ろから行っても、全然動かへん。「なんや、岩か!」と思った。ホンマにすごかった。足元もうまいしね。

あと、ヘディングといえば原さん(原博実氏)。CKでストーン(ニアのゾーンを埋める役割)に入ったら、原さんのヘディングが当たっただけで悶えるくらい痛かった(笑)。

でも、彼らも誰に何を教わったわけではないからね。

――ヘディングがうまくないというのはよく言われますね。

草木:それは中学生の課題やね。世界大会行ったとき空中戦で全然勝てへん。海外の選手は試合の中で体の使い方を覚えたりするんやけど、日本はやりかけると「ピッ」て吹く。

審判には「FWが育たへんのとヘディングが弱いのは君らの責任やぞ」とよく言う。今の日本の環境ではストライカーは育たないと思うね。レフェリーに守られている。

怪我をさせるプレーは悪いけど、激しさとか強さは体で覚えなければムリやからね。

――そのあたりは日本リーグ(JSL)時代のほうが激しかった?

草木:汚かったね。読売クラブとかめっちゃ汚かった(笑)。ジョージ与那城、ラモス。松木(安太郎)さんなんか一番汚かった。めっちゃ嫌やったもん。「絶対足に来よるわ」と。

でも割り切ってたんやろうね。これがオレらのサッカーやと。これがプロやと。読売が一番凄かったんちゃうかな。アマチュアとは違ったね。

日本の育成は成功していると思うけど、ここからもっと変化をしていかなきゃならんかな、というのがあるね。日本のクラブから海外へ行く選手が増えて、結果は出てるけど。ただそれも他のクラブからJに入って…ということやから、一概に一貫指導されてるとは限らへんよね。香川真司も。

今でもボロカス言って走らせてというクラブもあるけど、そこからもJリーガーが出ている。結局精神的にタフな子は挫折したところで踏みとどまれるが、弱い子は踏みとどまらずに遊びに逃げるということがあるね。

――日本には遊びに逃げやすい環境がある?

草木:日本は共通の話題がまだサッカーではないからね。街が出来たところにクラブが生まれた。欧州はクラブの周りに街ができた。だからスタイルが守られるし、応援される。

その価値観も必要やね。だから阪神タイガースがあってもええんちゃうかな(笑)

草木克洋(くさき かつひろ アミティエSC京都監督・JFA公認S級コーチ)

現役時代はヤンマーディーゼル、ガンバ大阪、京都パープルサンガでFW、MFとして活躍。日本代表でも1988〜91年に招集され、国際Aマッチ2試合に出場した。

1994年に引退した後は指導者に転身し、佐川急便大阪、アローズ北陸、関西国際大学、成美大学で監督を務めた。2016年から現職。

松本尚也(まつもと なおや アミティエSC京都代表兼ゼネラルマネージャー)

高校を卒業後、少年サッカーの指導者を経てアミティエ・スポーツクラブの創設に関わりトップチームの初代キャプテンも務めた。京都支部責任者、クラブ理事、アカデミーダイレクターを歴任し、現在は代表取締役社長兼ゼネラルマネージャー。JFA公認B級ライセンス保有。

地域リーグでの戦いから、徐々に現在の日本サッカーについての話へ…。

「パート2」では松本尚也氏への質問を中心に、アミティエ京都での選手育成について、そしてこれから必要とされる指導について、興味深い話が飛び出してくるぞ!乞うご期待!