「いわゆる“ダークな役”にも無限のアプローチがある」

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 先日公開された映画『22年目の告白-私が殺人犯です-』で、時効を迎えた連続殺人事件の殺人犯として世間を驚かせる曾根崎雅人を演じた藤原竜也。『カイジ』シリーズや『藁の楯 わらのたて』などが続き、「クズの役しかこなくなった」と以前笑って発言していた藤原だが、今回も挑戦的な演技を見せている。連続ドラマ「リバース」での新境地も話題を呼ぶ彼の心の内にあるものとは? そして、俳優としての新たな可能性を開拓し続ける、その原動力とは何か。

 この映画は『ジョーカー・ゲーム』の入江悠監督が放つ挑発的なサスペンスエンターテインメント。藤原が演じるのは、殺人犯として自ら告白本を出版して一躍“時の人”となる、カリスマ的な吸引力を持つキャラクター。最初に台本を読んだとき、藤原は「ヘンな男だな」と感じたといい、「でも読み進めると、多くの人が共感できる男でもある。こういうキャラクターは演じたことがなかった」と振り返る。

 実際に映画を観ていくと、これまでも数々のド派手なエンタメ作で“人間のクズ”を演じてきた彼がこの役を務めることに意味があるようにも思えてくる。「確かに、いくつかの役柄のイメージをうまく利用している役とも言えますよね。だから面白いと思ったし、本当に練り込まれた台本で、時代に合った鋭さをも詰め込んでいる。完成させるまでには大変な苦労があったはず」と深い敬意を払える台本だったことが、彼の役者魂に火をつけたようだ。

 曾根崎を演じる藤原は必要以上に絶叫したり、目を見開いていわゆる“熱のこもった演技”を誇示するわけでもない。数々の舞台を経験してきた彼ならいくらでも周囲から際立つ存在感をアピールできそうな役柄だが、とても控えめに、けれど控えた中にすごみや哀しみをにじませる繊細な表現をしている。

 それは入江監督の演出に導かれた部分もあったようで「ちょっとした声のトーンやセリフの言い回しなど、細かいところまで演出していただきました。その結果、こうしたジャンルに登場する役としても新しいキャラクターがつくれた気がします」と確かな手応えを感じている。

 またこの映画以前、いわゆる“クズの役”が続いたことについては「そういうタイミングだったのでしょう。でも僕にとってそれはどうってことないです。もちろん、またかよ! なんて思いません!」と余裕を持って笑い飛ばす。

 さらに海外の映画を引き合いに出して「いわゆる“ダークな役”にも無限のアプローチがあり、素晴らしい俳優さんがたくさんの素晴らしいキャラクターをつくり上げています。自分としてもいろいろな手法を用いて、経験や技術を駆使して演じていければいい。作品や監督が違えば撮影現場の雰囲気は変わるし、それで演技は自然と変わっていきますから」と一作ごと、一つの役柄ごとに真摯な態度で向き合うことを明かす。

 そうして連続ドラマ「リバース」でも、俳優として新たな一面を見せることに成功した藤原。どこか気弱で恋愛に疎い、ちょっとさえないキャラクターをごくナチュラルに演じているが「基本的なことです。正確に台本を読み、役柄の心情を一つ一つたどっていく。それほど難しい作業ではありません」とここでも、イメージを覆す! という肩に力の入った様子とは無縁。俳優としての今後やイメージについて策を練ることもないようで、「そういう意味では、ラク〜にやっているんですよね」と笑った。(取材・文/浅見祥子)

映画『22年目の告白-私が殺人犯です-』は公開中