眠気を覚ましたい時や疲れたとき、コーヒーや紅茶でカフェインを摂取する人も多いだろう。しかし、どんなものでも取り過ぎれば身体に悪影響を及ぼす。日本中毒学会の調査では、2011年〜2016年3月31日の5年間で101人が急性カフェイン中毒で搬送されている。心停止や死亡といった重篤な事例もある。

2013年、自販機でエナジードリンクが売られるようになってから急増

急性カフェイン中毒は、短時間でカフェインを摂取することで発症する。めまいや吐き気、脈の早まりや動機が代表的な症状だ。個人差はあるが、1〜2時間あたり1グラム以上の摂取で発症、5グラム以上で死に至ると言われる。

今回の調査では、心停止を起こした患者の最少摂取量は6グラムだった。調査を実施した埼玉医科大学の上條吉人教授は

「コーヒー1杯200ミリリットルに0.1〜0.12グラムのカフェインが含まれます。つまり、8〜10杯飲むと中毒を起こす可能性があります」

と話す。

101件の中央値は25歳と、比較的若い世代での中毒患者が多かった。教授は、エナジードリンク市場の拡大と何らかの関連があると見る。

「症例が急増した2013年は、エナジードリンクの自販機販売が開始された年。ドリンクでカフェインの効果に味をしめた若者が、より手軽に高い効果を得ようと、眠気防止剤に手を出していったのではないでしょうか」

2015年12月には九州地方の20代の男性が、エナジードリンクとカフェイン錠剤を併用して服用し、中毒に陥り死亡した。カフェイン中毒の死亡事例はこれが国内初だ。

また、カフェインが危険ドラッグの代わりに乱用されているのではないかとも推測する。

「危険ドラッグは2011年から2014年の短期間に若者の間で流行した後、2015年以降は取り締まりの強化もあって見られなくなりました。彼ら・彼女らは、入手し辛くなったドラッグの代わりにカフェインを大量に摂取し、ドラッグ服用時と同じような効果を得ようとしているのかもしれません」

「厚労省がカフェイン中毒の死亡例を周知しないのはおかしい」

調査でも、搬送された101人のうち97人と「想像に反して多い数」の患者が錠剤を服用していた。「手元にあればあるだけ飲んでしまうケースが多いため、購入個数の制限などの対策が必要」と強く訴える。

「厚労省は、製薬メーカーの薬で死亡事例が出ると大々的に取り上げるのに、身近なカフェインで死亡例や重症例が出ても発表しない。これはおかしいと思っています。今回具体的な数値が出たことで、やっと対策に乗り出すのではないでしょうか」

カナダやアメリカでは一日当たりのカフェイン摂取量の基準が定められているが、日本ではまだ無い。錠剤の購入個数制限については、独自に設けている薬局はあるものの、行政で規制するまでには至っていない。