春先から世代別代表や高校選抜の活動で大忙しだった杉山。新主将として超名門校を栄光へと導けるか。写真:安藤隆人

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 杉岡大暉(現・湘南ベルマーレ)から引き継いだのは、市立船橋伝統のキャプテンマークだ。
 
「キャプテンの難しさは感じています。今年に入ってから、チームにいないことのほうが多いので、まだしっかりやれてるとは思ってません」
 
 DF杉山弾斗の言葉だ。
 
 杉岡、原輝綺(現・アルビレックス新潟)、高宇洋(現・ガンバ大阪)など、主軸の3年生がごっそり抜けるなか、昨年からレギュラーを張っていた経験者として、キャプテンに任命された。だが、相次ぐ世代別日本代表などの活動で、多忙を極める。2月にU-18日本代表の一員としてスペインに遠征し、4月には日本高校選抜に選ばれ、ドイツのデュッセルドルフ国際ユース大会に出場。つい最近まではU-19日本代表に招集され、フランスのトゥーロン国際ユースを戦った。新キャプテンでありながら、なかなかチームと向き合う時間がなかったのだ。
 
 不在のなか、市立船橋はプレミアリーグEASTで出遅れてしまう。5節を終えていまだ勝ち星なしの最下位に沈んでいる。苦しい状況に置かれていただけに、様々な想いが去来したという。
 
「僕自身はいろんな経験ができて、すごく刺激になっているぶん、その経験をチームに還元して、もっと高いレベルに引き上げたいと思っています。でもその一方で僕自身にも課題があって、いろいろ考えています」
 
 自身のパフォーマンスに満足できていないのだ。代表に行けば、周りのレベルが高いがゆえに、「サポートをしてくれるから、自分のミスをごまかせてしまう。良くないですよね。実際はボールを持ってからのテンポがまだ上げられなかったり、守備の面でも課題がある」と語る。
 
 とはいえ、チームに戻れば、みずからがチームを牽引しなければならない。チームの活性化と課題の解消。その両面を熟考しながら、日々サッカーと向き合っている。
 
「自分自身のプレーの判断スピードをもう1ランク、2ランク上げていかなければいけないし、同時にチームのレベルも上げていきたい。常に自分が高いレベルで意識を持ってやって取り組む。それが重要だと思っています」
 
 日に日に増す、自覚と責任感。だからこそ、今回のインターハイ出場は彼が自身に課した最低限のノルマだった。
 
「いまのうちからきっちりと『勝ち癖』をつけることが大事。インターハイの出場権を獲れれば、よりレベルの高い試合ができるし、インターハイで勝ち進めば、より成長できるチャンスが増える。このチームは勝ちを重ねることで、成長をしていかなければならない。絶対に出場権は獲らなければいけなかった」
 
 インターハイ千葉予選・準決勝、翔凛戦。キャプテンマークを左腕に巻いた杉山は、左サイドでスプリントを繰り返し、得意の左足で好クロスを供給するなど、立ち上がりから攻撃を活性化させた。
 
 前半30分にFW福元友哉のゴールで先制に成功すると、「むやみに上がらずに守備を意識した」と、全体のバランスを考え、リスクマネジメントに努めた。
 
 攻守のバランスが取れた市船は、前半39分に再び福元が追加点。後半10分にはハットトリック達成となる3点目を挙げ、一気にリードを広げた。
 
 そして迎えた後半23分、右FKを獲得すると、キッカーを務めた杉山が、ニアサイドに飛び込んだDF平川孟人にピンポイントクロスを送り、勝利を決定付ける4点目をアシスト。大量リードを奪ったあとも最後までチームメイトを鼓舞し続けるなど、リーダーとしての責務を全う。4-0の完封勝利に貢献した。
 
「まずは全国に出られるので、もっと全体的な力を高められるように意識してやり続けたい」
 
 チームと、自身の進化のために──。キャプテンマークに想いを込めて、杉山弾斗は前進を続ける。
 
取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)