松野博一文科相(写真:つのだよしお/アフロ)

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 国家戦略特区における加計学園の獣医学部新設問題で、「総理のご意向」などと書かれた文書の存在について、文部科学省は「確認できなかった」との内部調査結果を公表していたが、15日、松野博一文科相は会見でその説明を一転させ、再調査の結果として文書の存在を認めた。

 同文書は5月17日付朝日新聞の報道によりその存在が明らかとなったが、文科省職員が同紙に情報を提供したという見方も強い。

 これについて、6月13日の参院農林水産委員会で自由党の森ゆうこ氏は、「文科省の文書再調査は(文科省内部の告発した)犯人捜しのためにやっているという話も出ている。今回告発した人は公益通報者に当たると思うが、権利を守る意識はあるか」と質問。これに対し同省の義家弘介文科副大臣が次のように答弁し、告発者を国家公務員法違反(守秘義務違反)で処分する考えのあることを示し、波紋を呼んでいる。

「文科省の現職職員が公益通報制度の対象になるには、告発の内容が具体的にどのような法令違反に該当するのか、明らかにすることが必要だ」

「告発内容が法令違反に該当しない場合、非公知の行政運営上のプロセスを上司の許可なく外部に流出されることは、国家公務員法(違反)になる可能性がある」

 加計学園への獣医学部新設をめぐっては、新設予定の愛媛県今治市が同学部建設用地(総額37億円相当)を同学園へ無償で譲渡し、建設補助金最大96億円を支給することがすでに決まっている。しかし、学部新設の認可権を持つ文科省では現在「認可申請中」の段階であり、正式に認可されていない。文科省は8月にも結論を出す予定だが、もし認可されなければ、告発によって行政の不適切な手続きが止められたという構図が成り立つ可能性もある。

 果たして、もし文科省内に告発者がいたとすれば、当該人物は公益通報保護法の対象になるのか。または、国家公務員法違反(守秘義務違反)の罪に問われるのか。弁護士法人ALG&Associates執行役員・弁護士の山岸純氏に解説してもらった。

●「秘密情報」の定義

 公益通報保護法で保護される「公益通報」というのは、「こういう違法行為が行われています」という通報を保護するものであり、「総理の意向」と書かれた文科省内の文書をマスコミに流すという行為自体や、「『総理の意向』と書かれた文書が存在します」という内容の通報自体は、この法律では保護されません。公益通報保護法は、とても難しい法律であり、弁護士でも慎重に対応するものです。

 政治家の方は、「なんとなく、公益通報保護法で保護されるべきと思う」といったようないい加減な質問をするのではなく、「こういう理由で公益通報保護法で保護される公益通報に該当します」といったように、法的理論に基づいて発言をしてほしいところです。そうでないと、否定する方が「こういう理由で公益通報保護法で保護される公益通報に該当しません」と弁明しなければならなくなり、本末転倒です。

 また、国家公務員法違反に問われるかについてですが、法律で保護される「秘密情報」は、適法な情報でなければなりません。たとえば、「脱税の方法を記載した書類」や「工場の排水が環境基準を超えることを示す記録」は法律で保護される「秘密情報」にはなりません。今回の場合、「内部文書がある」とマスコミに告発したわけですが、「内部文書」自体は違法なものでもないでしょうから、「秘密情報」として保護され、守秘義務違反(国家公務員法違反)を問われる可能性はあります。

 しかし、「秘密情報」とは、最高裁の判例(昭和52年12月19日)によって、「実質的にもそれを秘密として保護するに値すると認められるもの」とされています。もちろん、加計学園に関する文書の存在を隠したい政治家や企業役員もいるでしょうが、そういった「主観的に秘密としたい」という要望については、裁判所は“忖度”してくれません。

 したがって、実際に守秘義務違反を問うことは難しいでしょう。
(文=編集部、協力=山岸純/弁護士法人ALG&Associates執行役員・弁護士)