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あまりにも「独自すぎる」スバル

自動車業界の常識では、スバルのような小規模メーカーは、成功するばかりか長期的に生き残るのもむずかしいとされてきた。年産100万台を多少超える程度であれば、ほかの、より大規模なメーカーとの合併を模索するべきだとも言われる。

しかし、スバルに関する限りそれは当てはまらない。独自の水平対向エンジンとフルタイム4WDを主力モデルすべてに設定し、独自の道を切り拓いてきた。

円とドルの為替レートが良好だった頃は、ポルシェやジャガー・ランドローバーを超える利益率を誇ったほどだ。

この4月には、富士重工業からブランド名であったスバルへと社名を変更。収入の94%ほどが自動車部門で、航空宇宙部門もあるが、その占める割合は4.7%に過ぎない。

トヨタが全株式の16.77%を保有しているものの、スズキとの持ち合いは2016年に解消。それ以外の大株主は、金融機関がほとんどを占めている。

その名を一躍有名にしたのは、1958年に発売された「てんとう虫」ことスバル360だろう。1972年にはレオーネに、スバル初の4WDを積むエステートバンを追加。後にセダンの4WDモデルも設定され、世界的に4WD乗用車メーカーとしての地位を確立する。しかし、近代スバルの真の礎となったのは、1989年デビューのレガシィだろう。

そうして50年近く前にレオーネで創出したニッチマーケットで、スバルは今も優位性を保っている。メーカー発表の数字によれば、スバルの全輪駆動車の生産台数は世界一だというのだ。

2015年度の4WD車の販売台数は96万5892台で、グローバルな総販売台数の15.3%を占める。これに次ぐのがアウディの72万510台で、SUV専業部門を擁するジャガー・ランドローバーは、スバルのほぼ半分の48万5797台で5位に留まる。

スバルの成功は、何が理由なのだろう?

ケチ、いや堅実でありつづける

スバルの成功は、シンプルなラインナップに負うところが大きい。主力モデルのエンジンはすべてボクサー4で、今やプラットフォームもインプレッサから新たに投入する7座SUVまで同一だ。

スバル初の量産車は軽自動車だが、2007年に14万5000台だったその販売台数は、2016年に3万4000台まで減少した。

低価格で利幅の小さい軽自動車はダイハツのOEMモデルに切り替え、結果として開発・生産コストの負担は軽減している。

このほかに他メーカーと共同開発しているのはBRZのみで、言うまでもなくトヨタ86の兄弟車だが、インプレッサがベースのプラットフォームを用いた後輪駆動車だ。2016年4月時点で、生産台数は22万3000台に達している。

現在、スバルの乗用車は大別して8車種だが、いずれもプラットフォームの基本は共通。その最新バージョンを採用しているのはインプレッサとXVで、近く登場するSUVのアセントもこれを使用する。それ以外のモデルには、今後3年で新開発プラットフォームが導入される予定だ。

スバルとしては、高い安全性能を持つ単一のプラットフォームとトランスミッションを開発し、それを遍く使用する方が好都合だ。しかし、アナリストの論法によれば、電力パワートレインや自動運転にももっと多くの投資をするべきだということになる。

その点、スバルはすでに対応に当たっているが、よりコスト効率に優れた方法を選んだ。既存の4WDドライブトレインをベースに、トランスミッション内にモーターを、リアアクスル上に駆動用バッテリーを配置したハイブリッドシステムを構築したのだ。

これは、スバルのエンジニアリングにおける典型的なアプローチだ。シンプルかつ容易に組み上げられ、今後もコンポーネンツを共用するあらゆるモデルへ流用できるシステムなのである。

彼らが目指すのは、全モデルが新規プラットフォームへ移行するまでに、「すべての乗員と歩行者を保護する全方位の安全システム」によって「安全性全般でナンバーワンのブランドとなること」だ。

「際立とう2020」と銘打った中期経営ビジョンでは、2020年までに年産110万台突破を目指すという。顧客信頼度ナンバーワンと、業界最高レベルの利益率も目標だ。

しかしスバルには、今のような高い目標を掲げられるまでに、たいへんな苦労があった。

思い出したくない過去から脱却 しかし欧州は…

現在の利益率は良好だが、10年前に世界的な不況が訪れる前には、かなり厳しい状況だった。2006〜2007年の生産台数は57万8000台で、黒字幅は薄く、2007〜2012年にも財務状況は不安定だった。

販売台数は2007年に60万1000台を多少超えるのみで、2012年には61万7000台へ微増したが、これで損益分岐点ギリギリといったところだった。

しかしながら、2016年4月に発表された数字は97万8000台と大きな伸びを見せ、今年4月には106万5000台とさらに増加している。

円高ドル安の進行で、2016年度の第4四半期の当期利益は1000億円をわずかに切ったが、利益率は12%近く、これはBMWやアウディを上回っている。

とくに著しいのが、北米での販売増だ。2016年の総販売台数は61万5000台以上で、トータルセールスの半分以上を稼ぎ出している。また、インディアナの工場では2017年に40万台の生産を計画しているが、2019年までにはこれを43万6000台まで拡大する予定だ。

翻って欧州市場を見ると、アメリカに劣らずクロスオーバー車の人気が高まっているにもかかわらず、スバルの販売状況は惨憺たるありさまだ。欧州全体では約4万6000台、英国に限れば4000台以下に留まっているのである。

先述した「際立とう2020」では「北米を最重要、日本/中国を第二の柱」と位置付けており、欧州市場には言及していない。

欧州を「捨てる」のは、適切だろうか?

ブランドを認知し、プレミアムな価格でも購入する顧客が数多く見込める市場にのみ注力していくというわけで、スバルの経営規模も考慮すれば的確な判断だといえるだろう。

つまり、スバルが今後やろうとしていることは、今までしてきたことと何ら変わらないのだ。それはゆるやかで、コスト効率を重視した前進だ。

単一のプラットフォームとトランスミッションをベースとしたラインナップ、シンプルなハイブリッド、安全装備としての機能を優先した自動運転技術といったメカニズム的な布陣もまた、自社の体力を熟知した上での賢明な選択である。

その場合、最大の問題は円-ドルの為替レートに損益が左右されやすいことだが、北米現地生産の強化で、その弱みは薄めることができる。

確かに、かつて17.5%にも達した利益率は、円高により大幅に落ち込んだが、それでも12.4%というのは業界全体を見回しても驚異的に高い。

そうして、合併を考えるのが常識といわれる規模のメーカーでありながら、一応の独立は保っているのだ。スバルが、ビジネスモデルは破綻しておらず、方針転換の必要もないと主張するのは妥当だといえるだろう。