北朝鮮をめぐる米中接近で、就任前の過激な「対中批判」を封じたトランプ大統領。その矛先は確実に日本に向かっているように見える

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トランプ大統領誕生から5か月がたったが、政権運営は難航している。一方、経済政策は今後、どう推移していくのか。5月に『トランプ政権を操る[黒い人脈]図鑑』(小社刊)を上梓したフルフォード氏が解説する!

◆ロスチャイル系のハゲタカと、日米貿易戦争で戦った男を任命

 選挙中から物議をかもしてきたトランプ大統領の誕生に際し、各国首脳が言葉を慎重に選ぶなか、安倍首相は「これこそ民主主義のダイナミズム」と手放しで祝辞を送った。その後の日米首脳会談でも、安倍首相はトランプとゴルフを1.5ラウンドも楽しみ、仲の良さをアピールした。

 しかしこうした現在の蜜月ムードは、長くは続かないかもしれない。

「トランプは対日外交、こと通商政策においては強硬路線を打ち出してくる可能性が高い」

 米経済誌『フォーブス』元アジア太平洋支局長で作家のベンジャミン・フルフォード氏はそう指摘する。トランプ政権の閣僚人事に、隠された“牙”が見え隠れするという。

「その1人が、ウィルバー・ロス商務省長官。商務省は、経済成長と技術競争力、持続的発展を促進させるためのインフラの整備を担当するとともに、海外のアメリカ大使館に出先機関を置き、経済界と極めて密接な部署。そんな商務省のトップに就任したロスは、ロスチャイルド系企業の企業再建部門に在籍していた頃、’99 年に破綻した幸福銀行の再建にも携わった過去がある。また、これが縁で1907年に設立された歴史ある日米交流団体『ジャパン・ソサエティー』の会長も務めた『知日派』とされているが、決して親日というわけではない。対日貿易赤字の削減を訴える彼は就任早々、日本から輸出された鉄筋が不当廉売に当たると認定。206.43%から209.46%の反ダンピング関税を課すことを決定している」

 さらにロスには“裏の顔”もある。

「24年間務めたロスチャイルド系企業を退社した彼は、自身の投資会社を設立しているが、これが典型的なハゲタカ・ファンド。例えば’08年のサブプライム危機の際には、ヘッジファンドから多くの資産や債権を次々に買い叩き、その後、市場が平穏を取り戻すとすぐに売却して大儲けしている。こうしたハゲタカ的手法で、日本を食い物にする気でいるはず」

 ちなみにロスが長官就任前に開示した彼の個人資産は380億円に達している。

 そしてもう一人の“牙”としてフルフォード氏が名指しするのが、米国通商代表部(USTR)代表のロバート・ライトハイザーだ。

「USTRといえば’80〜’90年代から『日米貿易摩擦』という名の経済戦争で、アメリカの利益代表機関としてタフ・ネゴシエーターを演じたことで記憶している方も多いはず。そのトップであるライトハイザーこそ、この時代、レーガン政権下でUSTR次席代表を務め、日本製品に対する輸入抑制を主導して日本側に鉄鋼の輸出自主規制を飲ませた張本人。そんな彼を再びUSTRに、しかもその代表として復帰させたトランプの念頭にあるのはこれから始まる日本や中国をはじめ、各国と始まる「二国間交渉」にほかならない。そんなトランプの意向の下、彼が就任直後に議会に提出した『2017通商政策課題』には、アメリカの貿易主権を擁護し、二国間交渉を進めていくと明記されている。これは過去20年間にわたるアメリカの通商政策を全否定し、新たにアメリカ中心の貿易体制を構築するというもの。そのうえで、『農業分野の市場拡大は、 日本が第一の標的』と名指しして宣言しているのです」

 こうしたなか、アメリカによる日本の“属国化”が強化されるという。

「クリントン政権下では、USTRによる交渉で当時の宮澤喜一内閣に規制緩和の実行を飲ませた。以降、これに基づく『年次改革要望書』という、アメリカから日本への事実上の命令書を民主党に政権交代する’08 年まで毎年出してきた。この命令によって日本では、独占禁止法の解禁や郵政民営化、人材派遣の自由化など“構造改悪”が行われた。また、日本人が長年蓄えてきた資産の多くも吸い上げられることとなった。この年次改革要望書が、トランプ政権下で復活させようとする動きもある」

 日本はいよいよ、これまでのアメリカ追従を見直すべきときに来ているのではなかろうか?

◆トランプ政権を牛耳るゴールドマン・サックス

 暴利を貪るウォール街を批判することで白人労働者の支持を獲得して当選したトランプだが、彼が布陣した政権はゴールドマン・サックス(GS)の“傀儡”と揶揄されるほど、GS出身者が多い。

 代表格が、財務長官のスティーブン・ムニューシンだ。彼はGSで上級役員にまで上り詰め、在籍17年間で総額50億円の報酬を得ている。

 また、経済担当補佐官・国家経済会議委員長のゲイリー・コーンは、政権入りする前までGSの社長兼共同COOの座にあった。同社を離れるにあたり彼に支払われた退職金は1兆円以上といわれている。さらに、首席戦略官・大統領上級顧問のスティーブン・バノンや、SEC委員長ジェイ・クレイトンもGS出身だ。

 また“乗っ取り屋”として名高いカール・アイカーン(規制改革特別顧問)などもおり、トランプ政権の経済・金融面での政策が「富裕層に有利」になることは間違いなさそうだ。

取材・文/奥窪優木 写真/AFP=時事