連続テレビ小説「ひよっこ」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第11週「あかね荘へようこそ!」第65回 6月16日(金)放送より。 
脚本:岡田惠和 演出:福岡利武


65話はこんな話


すずふり亭で働き始めてから何日か経過、みね子(有村架純)はまだお皿を一枚も割ってないことに誇りをもっていたが、とうとう割ってしまい、しょげ返る。

朝の風景


朝、みね子の目覚まし時計が鳴る。木造アパートの薄い壁では、時計の音がアパート中に響いてしまう。
それに対する住人の各々の反応を描きながら、彼らの部屋と朝の様子を紹介するという寸法。
OL早苗(シシド・カフカ)はおしゃれ。服や靴がいっぱい。
漫画家・新田(岡野天音)の部屋は散らかり放題。朝から漫画を描いているが進んでいる様子がない。徹夜か。
慶大生・島谷(竹内涼真)は、ブルーで統一したすっきり部屋で朝から勉強に没頭。部屋でもマフラー、御曹司にもかかわらず暖房がないのだろうか。

みね子のモノローグに変化が


準備は好きだが、ホールの仕事にはまだ慣れないみね子。
でも「ひとつだけやってないことがあるんです」「それが私の誇りというか。ふふっ・・・」
とひとり語り。 ←この「ふふっ」に、いよいよひとりの世界に入り込んでいる感じを受ける。

「お皿を一度も、お皿を一度も・・・」 ← トーンがクレヨンしんちゃんみたいになってきた。

「割ってない・・・(お皿を落して、割ってしまう)んですぅ」← ですぅ って。ドジっ子が主役の少女漫画のようだ。

※注意
ひとりごとは、ほかに語る人がいないと、どんどん増幅していく。
そう、乙女寮にはおしゃべりできる友達がたくさんいた。幼馴染の時子もいた。でも、いま、どんなに、優しい人たちではあっても、おしゃべりできる友がいないのだ。だからといって、ひとり語り上手になるのは、ちょっとやばいですよ、みね子さん。

「人間はやられっぱなしでは生きていられないんだよ」


「負けっぱなしじゃ終われない」ももクロか。
「負けっぱなしじゃ終われねえ」クローズZEROIIか。
省吾(佐々木蔵之介)が突如、「人間はやられっぱなしでは生きていられないんだよ」などと言い出したのは、みね子がしょげているのを、自分が忙しさに流されてつい大声を出して怖がらせてしまったのではないかという心配からだった。
修業時代に、怒鳴る厨房を経験し、戦争中の軍隊でも、怒鳴る殴るを経験したと、過去を語りだす省吾。とりわけ、軍隊時代の話は、これまで誰にも話していなかったもので、鈴子(宮本信子)を驚かせる。

佐々木蔵之介は、ものすごく小さな声で語り、その目は、虚ろ。それによって、瞬時に、よほどの体験をしてきたのだろうと感じさせる。

一番悲しかったのが、やられていたやつが、下が入ってきた途端、やられたことをやり返していたこと、省吾は言い、「人間はやられっぱなしでは生きていられないんだよ」「だから、よけいに悲しいし、いやなんだ」と続ける。

あかね荘編はライトに楽しいかと思わせて、いきなり重たい・・・。
奥茨城村の宗男(峯田和伸)、乙女寮の愛子(和久井映見)、すずふり亭の省吾と、岡田惠和は、ときどき戦争の傷をのぞかせる。

軽く復讐


だが、「ひよっこ」は、傷つきっぱなしではいない。
高子(佐藤仁美)が、日常の苛立ちに、「軽く復讐する」と言って、皆を笑わせる。
「カツまだですかぁ」「海老まだですぁ」とヘン顔する高子に、「あがってますけどぉ」と応酬する井川(やついいちろう)。
お互いの事情と思いがあって、それがぶつかることもあるが、回避のしようもある。
例えば、語尾を伸ばすことで、茶化したり、ものごとにちょっと角度をつけたりできる。
みね子はこうしてまた、社会での居方を学ぶのだ。
(木俣冬/「みんなの朝ドラ」発売中)