「コーヒーは、ドリップした最初の1滴が最も味わいが深く、最後の1滴が最も苦い。最後の1滴は決して淹れてはならない」

(参考:『リバース』のタイトルには複数の意味が隠されている?

 広沢由樹(小池徹平)を殺したのは、深瀬和久(藤原竜也)だった。衝撃の事実で幕を閉じた第9話。冒頭のセリフは、深瀬のナレーションによるものであるが、“最後の一滴”はその衝撃の事実を指す。原作小説は、この“苦い”結末で終了。湊かなえが、“イヤミス女王”と呼ばれる所以はここにある。ドラマの最終回はオリジナルストーリーであり、誰も知らない『リバース』のラストが描かれた。

 一言でいえば、最終回は深瀬達の“贖罪”の物語だ。広沢の事件を追っていたジャーナリスト、小笠原俊雄(武田鉄矢)は、広沢が事故現場で起きていたもう1つの事件に巻き込まれ、不慮の事故で亡くなっていたことを掴む。しかし、酒を飲ました状態で運転をさせたこと、蕎麦アレルギーの広沢に蕎麦入りの蜂蜜を入れたコーヒーを飲ませたこと……谷原康生(市原隼人)、村井隆明(三浦貴大)、浅見康介(玉森裕太)、全員に罪はあった。

 深瀬達は、広沢の両親に全ての事実を伝え、謝罪するために広沢が眠る愛媛へ向かう。しかし、広沢の母親、昌子(片平なぎさ)は深瀬達の話を最後まで聞く耳を持たず、涙を流して深瀬達を罵倒した。「懺悔してこの人らが楽になる」「どこまで行っても地獄」「なんで由樹は死なんといけなかった? あんたらの誰かが代わりに死ねばよかった」。昌子の一言、一言が、深瀬達に十字架として重くのしかかる。息子の死を受け入れられずにいる昌子に対して、広沢忠司(志賀廣太郎)は深瀬達と向き合っていた。「どう死んだのかではなく、どう生きていたか」。忠司が望んだこの思いは、広沢の恋人であり、最期を見届けられなかった越智美穂子(戸田恵梨香)が、深瀬に望んだものと同じだ。

 人は自分の都合のいいように、忘れていく生き物だ。寂しい過去も、犯した罪さえも少しづつ忘れていく。「償いたいけど、償えないこともある」、深瀬は愛媛に向かう前にそう話していた。小笠原が昌子に話す通りに、深瀬たちは許してもらおうと愛媛を訪れたわけではない。広沢は、カレーと野球と落語が好きで優しかった。残された者が故人にできることは、「忘れないこと、思い続けること」だ。墓参りが手を合わせ故人を思うように、深瀬達が広沢の元を訪れることが、これから罪を償うということ。それが小笠原の言う深瀬達が背負っていく“罰”だ。

 著者である湊かなえは、2009年に第3作目の小説『贖罪』を発表し、後にテレビドラマ化もされた。罪の意識と償い。深瀬が再び美穂子と歩み出すラストは、彼らにとっての救いのようにも感じたが、物語の根幹には“贖罪”という重いテーマが眠っている。オリジナルストーリーでありながら、湊かなえの世界観を壊さず、ラストは「もし過去に戻れるとしたらいつに戻る」という第1話の冒頭に“リバース”したのには、賞賛の意を贈りたい。

(渡辺彰浩)