大野智の凄さを語る中村義洋監督

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 テレビドラマ&映画「怪物くん」(2010・2011)に続いて『忍びの国』(7月1日公開)で嵐・大野智とタッグを組んだ中村義洋監督が、俳優・大野智の魅力を語った。原作は、「のぼうの城」や「村上海賊の娘」などで知られる歴史小説の若き旗手・和田竜の同名小説。大野は、伊賀最強の忍びでありながら普段はぐうたらな怠け者で、妻に頭の上がらない主人公の無門(むもん)にふんし、鮮やかなアクションシーンも披露している。

 織田信長の天下統一を目前に、それまで誰も攻め入らなかった伊賀の国に織田軍が兵を挙げた史実「天正伊賀の乱」を題材にした本作。幼少期より忍者に興味を抱き続け、調べてきた監督が、「何だかわからないうちに瞬間的に忍術が行われてしまうという映像表現ではなく、リアルに、克明に、具体で見せたかった」と語るように、忍術のからくりを目撃できる面白さに満ちている。

 だが何といっても見どころは忍者アクション。大野が伊賀忍者・最強の技を披露する、前半と後半で相手を変えて繰り広げる“川”の死闘は、接近戦ゆえに大野の身体能力の高さが、“無門の人知を超えた強さ”にリアリティーを与えている。相手が何度振りかぶろうが容易にかわす無門の動きを、「漠然としたイメージはあったものの、昨年『デッドプール』の主人公のクネクネした動きを観たとき、“大野君の底力をもってすればコレができる”と全てが着地した」と振り返る。

 同時に、「『オーシャンズ12』でヴァンサン・カッセルが、レーザーが張り巡らされた空間をウォークマンで曲を聞きながら踊りながら避けて進んでいくシーンを観て、“この感じで行きたいから、とにかく体を柔らかくしておいて”と参考にDVDを送りました」と構想から8年を費やしてあらゆる素材からヒントを得た手の内も明かした。

 監督の構想や要望を全て叶えられたのも、「数多くのダンスの振付を覚えてきた大野君だからこそ、その要領でこれだけのアクションを覚えられるんでしょうね」と舌を巻く。「鈴木亮平君が演じる平兵衛の“剛”とは対照的な無門の “柔らかさ”、2人のアクションの習熟方法にも通じる“柔と剛”が、キャラクターにも映画全体にも生きている。まさに大野君は無門のあり方と重なる」と分析。

 “無門と重なる”とは、「大野君って、カットとカットの間は本当にやる気がなさそ〜な風情でいるんですよ(笑)。でも『本番!』とカメラをまわした途端、とにかくスゴイ!! 実は誰よりも準備をしているのに、その真剣なさまを人に見せないのが大野君の美学なのだと思います」と感心する。

 そんな大野が、撮影の合間に唯一真剣な顔を覗かせたのがラストシーンの直前。いつもの調子で監督が「十二家評定衆(伊賀の有力者たち)の横にいる、あの女の子かわいくない?」と話しかけたところ、黙殺されたと頭をかく。「うわ、大野君も真剣になるんだ、と。本当に集中して役に向き合っているときに、“このバカ監督め!”と自己嫌悪すると同時に、あの大野くんが……と非常にありがたく感じました」と苦笑した。

 大野の役者としての魅力を「とにかく芝居に嘘がない」と続ける中村監督。「いい意味で、セリフだけ覚えて現場にくる。余計なことを考えずに現場に入ると、カチンコが鳴った瞬間、相手の役者さんのトーン、天気、セットやロケの状況、時間、暑さ寒さをちゃんと味わいながら、ニュートラルに役に入れる。だから嘘がない」と大野の演技力に太鼓判。監督自身「最後に大野君が見せた表情にゾクゾクした!」とうれしそうに語る衝撃的なラストが圧巻だ。(取材・文:折田千鶴子)