首相官邸ホームページより

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 ゲスの極みとはまさにこのことだろう。本日、内閣府が徹夜で調査したという結果を公表したが、それは鬼畜の所業というべきものだった。

 昨日、文科省は昨年11月1日に内閣府から送られたメールをあきらかにしたが、添付書類には獣医学部新設の条件についての原案に「現在、【広域的に】獣医師系養成大学等の【存在し】ない地域に【限り】」と、【】内の文言が手書きで書きくわえられていた。この文言によって、事実上、京都産業大学はふるい落とされたわけだが、メール本文では〈添付PDFの文案(手書き部分)で直すように指示がありました。指示は藤原審議官曰く、官邸の萩生田副長官からあったようです。〉と書かれていたのだ。

 萩生田光一官房副長官が内閣府に指示をし、加計学園しか選ばれない条件を出した──。これは加計学園ありきを官邸が主導し内閣府が実働していたことの決定的な証拠だが、本日の参院内閣委員会で山本幸三地方創生相は、「『広域的に限る』ということは、私の指示で内閣府において入れた」と答弁し、内閣府の藤原豊審議官も「追記するようにという指示を受けて、私が手書きで文案に修正を加えた」と言い出したのだ。

「大臣の指示」を、どうやったら無関係の官房副長官からの指示だと書く必要があるのか。そんなことを間違える官僚などいるわけがない。

 ようするに、安倍首相の側近中の側近である萩生田官房副長官の指示だったとなると「イコール安倍首相の意向・指示」ということになるため、担当大臣である山本地方創生相と藤原審議官に詰め腹を切らせるというシナリオをつくったのだろう。

「山本地方創生相は、事後的につくられたとの疑惑がある獣医学部新設をめぐる3大臣合意文書の件でもそうでしたが、基本的に官邸の言いなりです。しかも金銭スキャンダルもあって弱みも握られている。官邸としては、萩生田副長官は首相の側近中の側近で官邸の司令塔だから変えるわけにはいかないが、山本地方創生相は内閣改造などいいタイミングで首を挿げ替えれば済むと考えているのでしょう」(大手紙官邸記者)

●山本地方創生相が国会で「文科省から出向してきた職員が勝手に...」と個人攻撃

 しかも、山本地方創生相が責任を引き受けたわけではまったくない。内閣府の調査では、この萩生田指示メールについて、「(メールを作成した職員が)担当者から伝え聞いた曖昧な内容であって、事実関係を確認しないままメールを発信」と一官僚に責任を押し付け。まったくバカバカしいにも程がある言い訳だが、さらに山本地方創生相はあからさまな個人攻撃をはじめた。本日の記者からの取材や参院予算委員会の集中審議で、山本地方創生相はこんなことを口走ったのである。

「メールを作成した職員は文科省からの出向者で、陰に隠れて本省にご注進した」
「職員は課内で飛び交っている話を聞き、確認しないまま書いた」

 文科省から出向してきた"スパイ"が嘘の情報を流した──。出向者とはいえ、メール送信者は立派な内閣府の職員であり、山本地方創生相の部下だ。それを「諜報員」扱いして、メールを否定する材料にするとは。森友学園問題では安倍昭恵夫人付きだった秘書の谷査恵子氏が「勝手にやったこと」として責任を押し付けられたが、これはそれ以上の攻撃だ。

 そして、これは、官邸および内閣府から文科省に対する「報復宣言」でもある。大手紙官邸記者は、「いま、文科省と官邸・内閣府は全面戦争に突入している」と言う。

「文科省の職員たちのあいだでは"違うものは違うとはっきり言おう"という気運が高まっていて、萩生田官房副長官の関与を裏付ける証拠となるメールと文書を出したのも、もはや文科省幹部もそうした職員たちを抑えきれないから。もともと文科省は加計学園問題に限らず教育改革などもあり、宮内庁とならび安倍政権のもっとも強い圧力に晒されてきた省庁で、相当フラストレーションが溜まっている。天下り問題で狙い撃ちされ、さらに人望のある前川氏を官邸が個人攻撃したことで不満が爆発、一気に流れができたんです」

●文科省の出した萩生田指示メールに官邸は激怒!

 再調査で出てきたメールを調査結果として出さなければ、「握り潰された」と職員たちはマスコミに証言する。そのほうがはるかにダメージは大きい。......そうした判断で文科省は爆弾メールをあきらかにしたが、一方の官邸はこれに大激怒した。

「当初、官邸が描いていたシナリオでは、文科省の再調査結果の公表を受けて、ほとんどの内部文書を作成した高等教育局の課長補佐の女性に責任を押し付けるつもりだった。それが、文科省は内閣府職員が送信した萩生田官房副長官の関与を示すメールを出してきた。そこで官邸と内閣府は、『広域的に』『限る』という文言を追加したのは萩生田官房副長官ではなく山本大臣が指示したものだと発表することに決め、さらには『文科省からの出向者の策略』として、文科省を徹底攻撃することにしたんです」(同前・大手紙官邸記者)

 事実を公表した文科省に対し、敵意を剥き出しにする内閣府と官邸。これまでも省庁同士が水面下で暗闘を繰り広げることはあったが、一省庁が内閣に反旗を翻す政府内不一致がここまで表沙汰になったのは前代未聞のことだ。安倍政権お得意の情報操作や謀略で、文科省を抑え込むことは難しいだろう。

 いずれにせよ、官僚ひとりを槍玉にあげて収束をはかろうとするとは極悪非道としか言いようがないが、しかし、そのような説明で納得できるはずがない。

 実際、すでに内閣府側や安倍首相の答弁は、まったく整合性がとれていない。そもそも、萩生田官房副長官の関与を示すメールについて、山本地方創生相は「課内で飛び交っている真偽不十分な情報を送信した」などと言うが、なぜ内閣府の課内で、官邸の人間の名前が飛び交ってなどいるのか。また、内閣府の藤原審議官は、内部文書が作成された時期に文科省との会合に出たことは認めながらも「この時期の記録は内閣府にはない」と強弁するが、今回のメールは内閣府から送信されたものであって、内閣府に記録が何も残っていないはずなどないのだ。

●山本地方創生相「ほかの大学でも新設できてしまうので『広域的に』と入れて、制限した」

 しかも、山本地方創生相は本日午前に行われた参院内閣委員会で、民進党の櫻井充議員から「なぜ『広域的に』という文言をわざわざ入れたんですか?」と質問された際、こんなことまで口にしている。

「もともと獣医師系の大学のないところで限定しようという意図でやっているわけでありますが、文科省等の意見のあいだでですね、それだけではまだほかにもですね、ほかにもいろんなところででき得る可能性も出てくるじゃないかと。そういう意味からですね、『広域的』ということで、少し広げて制限しようと考えたわけであります」

 加計学園以外の"ほかの大学"でもいろいろ獣医学部新設ができてしまうのはまずいから、「広域的に」という文言を入れて「制限した」──。ようするに山本地方創生相は、「ほかを制限するために『広域的に』という文言を追加した」と答弁したのだ。これは「加計学園ありき」であることを認めてしまったようなものだ。

 さらに醜いのは安倍首相だ。安倍首相はきょうの集中審議で、「『広域的』といっても、京都産業大学も残る可能性があるということを念頭に置いていた」などと噴飯ものの苦しい答弁を行ったのだ。繰り返すが、京産大は獣医学系の学部をもつ大阪府立大学が近県にあるため、「広域的」「限る」という文言に阻まれて事実上、断念せざるを得なかったのではないか。だいたい、今治市が公開した資料からは、加計学園の獣医学部新設を前提にしていた事実しか浮かび上がってこない。いまさらこんなことを言っても、何の説得力もないのだ。

 これだけの証拠が出揃いながら、官僚を責め立てることで逃げ切ろうとするなど、もってのほか。文書を「怪文書」扱いしてきた菅義偉官房長官の責任問題だってある。国会を閉会させたあとは問題を有耶無耶にし、内閣改造でこっそり山本地方創生相の首を切れば収束させられるとでも考えているのだろうが、国会が終わっても追及をつづけ、安倍首相にはきっちり落とし前をつけてもらおうではないか。
(編集部)