by Rikki's Refuge

ドイツ語で他人の失敗や不幸を喜ぶ気持ちを「シャーデンフロイデ」といい、日本では「メシウマ」がそれに近い言葉として存在します。他人の失敗ムービーを見て楽しんでいるだけなら無害なメシウマ感情ですが、人々の生活を大きな危険にさらす可能性もあるとして、ムービーで解説されています。

Check Your Schadenfreude - YouTube

「人の不幸は蜜の味」「他人の不幸で今日も飯がうまい」という感覚はインターネット上に多く見られ、その人気を現すようにYouTubeでは失敗ムービーが何十万回・何百万も再生されています。例えばゴルフカートで移動する2人が……



障害物に衝突。



カートが大破してしまいました。これは「Jackass」というテレビ番組のワンシーンで、YouTubeにアップロードされたムービーは46万回以上再生されています。人の不幸や失敗は喜ばれるということで、Jackassや「America's Funniest Home Videos」では失敗ムービーが多く公開されています。



これらはいわば、ノンフィクションのチャップリン映画のようなもの。



では、他人の不幸を喜ぶ気持ちはなぜ生まれるのか?というと、これはアイデンティティと自尊心が理由だとYouTubeチャンネルのNerdwriter1は主張しています。



人間の社会は競争と比較によって成り立っているので……



誰かの失敗を見ると、失敗した人よりも自分が優れているとして心理的にブーストされるのです。



このメシウマ感情は失敗する人が横暴であったり、大きな成功を収めている時に、あるいは「当然のむくい」というような状況の時に強くなります。タイガー・ウッズのようなセレブリティが失敗するとメディアの注目を浴びやすいのはこのため。



また、スポーツチームのファンなど、メシウマ感情はしばしば集団レベルにまで達します。



ズボンに花火を挟んでいた男性が……



自分の方に火花を散らしてしまいます。



慌てて逃げ出しました。このように、YouTubeやスポーツ観戦において他人の失敗を喜ぶ気持ちの多くは無害です。



一方で、このメシウマ感情が問題となるのは、政治に関する事柄について。



メシウマ感情はスポーツなど、自分の属するグループと、敵対するグループの競争において生じやすいというのは上記で述べた通り。つまり、政治おいては政党の優勢・劣勢でメシウマ感情が生まれます。



過去の研究でも、党派の関係や党に対する自分のアイデンティティの強さがメシウマ感情に影響するということがわかっています。



共和党のジョージ・ブッシュがつまずくと……



民主党のヒラリー・クリントンが笑う、というように。



問題は、政治には多くの人々の幸福がかかっており、例えライバルグループの失敗であっても、ネガティブな結果はもれなく「全員」にふりかかるということです。そして、政治的な事柄であっても、人はライバル政党の失敗を喜んでしまうことが調査から判明しています。



しかし、多くの人は政治的な事柄について感じるメシウマ感情を「不適切」だと理解しているために、あまり感情を表に出しません。そのため、喜びながらも、心の奥底では喜びを抱いた自分に対して相反する感情も抱くという状態になります。



2016年のアメリカ大統領選挙では、ドナルド・トランプと民主党支持者の間で多くのメシウマ感情が見られました。



Nerdwriter1によると、政治におけるメシウマ感情が相反する2つの感情を生み出すのは、私たちが心のどこかで「ライバルグループは間違った方法をとっているが、状況をよくしようと努力している」と考えているためとのこと。



一方でトランプ大統領は「横暴」で「成功」していて「自業自得」であるという、メシウマ感情を抱かせやすい人の特徴を全て満たしていて、それどころかあえて自分をそう見せようとしています。つまり、政治に関してメシウマ感情を抱いた人が持つ「これは不適切な感情だ」という相反する考えは、トランプ大統領については抱きにくいのです。



トランプ大統領の支持者が彼の立候補や行動に喜びを抱くのは当然ですが……



問題はトランプ大統領を支持しない人も、失敗ムービーを見て喜ぶ人のように、トランプ大統領の振る舞いを喜んで見てしまうこと。



インターネットのニュースメディアは、このようなトランプ大統領を支持していない人の行動をも、「トランプ大統領に興味がある人の行動」と認識してしまいます。それゆえにトランプ大統領がニュースに登場する割合が極端に大きくなってしまいます。



トランプ氏の大統領当選は、集団的なメシウマ感情が政治的な結果に影響を与えた史上初の出来事だったわけです。これはもはやジョークでは済まされません。



現在、私たちの回りにはエンターテイメント・政治・ジャーナリズム、そしてメシウマ感情をまぜこぜにした混合物があふれていて、しかもこの混合物はニュースメディアの最高の餌となっています。



ニュースメディアによってかき立てられる人々のメシウマ感情はどんどん大きくなっています。しかし、トランプ大統領の行く先に何があるかに関わらず、私たちが覚えておかなければいけないのは、メシウマ感情は薬物のようなものだということ。薬物は種類が何であるかに関わらず、使っていれば耐性がついてくるもの。そして、「もっと効き目が強いものを」という欲求を生み出します。これは政治には明らかに不向きな感情であるとして、Nerdwriter1は注意を呼びかけています。