米フロリダ州ホームステッドのターキーポイント原子力発電所(2017年5月18日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】米フロリダ(Florida)州最大の発電所「ターキーポイント(Turkey Point)」の外にある灰色の恐竜像は、廃炉となった火力発電用ボイラー2基を象徴するためのものだが、それはまた、増大するコストで崩壊しつつある原子力産業をも表していると見ることができる。

 約10年前、ターキーポイントは米国最大級の原子力発電所となること目指していた。所有する電力会社フロリダ・パワー・アンド・ライト(FPL)は、エネルギー源の多様化を維持し、爆発的な増加が予想される州人口への電力供給のために原子力発電の増強が必要だと訴え、そして原子力がクリーンなエネルギーであると大々的に宣伝した。

 だが現在、この発電所ではわずか3基が稼働しているのみだ。1970年代に建設された天然ガスのボイラー1基と原子炉2基だ。州の公益事業委員会に提出された文書によると、さらに原子炉2基を建設する計画が2009年に出されているが、少なくともこの4年間は実質的に保留となったままだ。

 今年、東芝(Toshiba)の子会社である米ウェスチングハウス(Westinghouse)が破産法を申請し、業界は混乱に陥った。同社が製造する原子炉「AP1000」は、ターキーポイント以外でも、サウスカロライナ(South Carolina)州やジョージア(Georgia)州の発電所でも導入が予定されていた。各施設でのプロジェクトは数年の遅れが発生し、予算も大幅にオーバーしている。

 再生可能エネルギーを推進する団体「クリーンエネルギーへのサザン同盟(Southern Alliance for Clean Energy)」の推定によると、ターキーポイントの増強工事は最短で2028年までの遅れがでており、また建設費も200億ドル(約2兆2000億円)を超えるまでに膨れ上がると予想されている。

■通常レベルの最大215倍のトリチウム

 このプロジェクトは開始時点から論争の的となっており、原子力発電に関する数々の懸念が浮かび上がっている。反対派は施設拡張阻止の理由として、気候変動による海面上昇、高潮の危険性、放射性廃棄物の取り扱い、そして飲用水と近隣に位置するエバーグレーズ国立公園(Everglades National Park)に生息する野生生物への脅威を挙げている。

 また反対の声を上げる人々は、周辺の人口密集地域からの非常時における避難が困難であることを指摘。マイアミデード(Miami-Dade)郡には260万人が暮らしている。

 漁船船長で原発プロジェクト阻止を訴える活動家、ダン・キプニス(Dan Kipnis)氏は「いつか水没してしまう原発への数百億ドルの投資(の意図)はまったく理解できない」と語り、「ここから生じる高放射性廃棄物も一緒に沈む」ことを指摘した。

  同発電所の拡張計画に対する法的異議申し立てが始まったのは2010年。今年5月にも原子力安全許可会議(Atomic Safety and Licensing Board Panel)を前に審理が行われた。ここで争点となったのは、フロリダの多孔性石灰岩が、有毒化学物質の飲料水への浸透なしに、地下に注入された廃水を本当に封じ込むことができるのかということだ。

 現在、ターキーズポイントの原子炉2基は複数のクーリングカナル(冷却運河)を使用して廃水の処理を行っている。これらのクーリングカナルをめぐっては昨年、マイアミ(Miami)ビスケーン湾(Biscayne Bay)の海水に、通常レベルの最大215倍の放射性同位元素のトリチウムが見つかったのをきっかけに、近隣の国立公園への漏出が確認された。

 3人の審査員から構成される安全許可会議は今年中に、米原子力規制委員会(NRC)が運転許可を与えるべきか否かについての判断を下すことになっている。

■安全で割に合う製品を実現できず

 FPLはフロリダ州全土において、太陽光システムの設置を拡大し、石炭関連施設の閉鎖を推し進めている。エネルギーミックスの内訳は天然ガス70%、原子力17%、残りが太陽光、石油、石炭となっている。専門家らは、天然ガスの価格が下落し続けており、原子力は日に日にその魅力を失っていると指摘する。

 バーモント大学ロースクール(Vermont Law School)エネルギー環境研究所(Institute for Energy and the Environment)の主任研究員マーク・クーパー(Mark Cooper)氏はAFPの取材に「ほとんどの人はターキーポイントの拡張工事は行われないだろうと思っている」と話す。

「結局、環境主義者のせいではなく、裁判のせいでもなかった。単に、安全で割に合う製品を実現することができなかっただけ。80年代にできず、今日でもできていない」──クーパー氏はこのように述べ、そして「原子力の技術が主役なることはなかった」と続けた。
【翻訳編集】AFPBB News