スターバックスの新業態「ネイバーフッドストア」

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 下北沢駅から徒歩10分。サブカルタウンの喧騒の先にあるその店は、いつものスターバックスとはまったく違う趣を見せる。

 今や全国各地に出店地域を広げるスターバックスコーヒー(以下、スターバックス)。その新スタイルの店舗としてにわかに注目を集めているのが「スターバックス ネイバーフッド アンド コーヒー」(以下、ネイバーフッドストア)だ。

◆地域に溶け込むスタバ新業態「ネイバーフッドストア」

 ネイバーフッドストアは2015年に生まれたスターバックスのコンセプトストアで、もともとは2013年に展開を開始した「インスパイアード バイ スターバックス」を2015年にリブランドするかたちで誕生したものだ。

 ネイバーフッドストアはその名前が意図する通り、近隣住民への密着をコンセプトとした落ち着いた雰囲気が特徴。駅から少し離れた住宅地など、スターバックスがこれまで出店してこなかった集客の小さな地域へと展開する新たな業態で、見慣れたスターバックスのロゴも控え目な木目調店内外の随所に散らばる緑の多さも印象的だ。

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 下北沢や二子玉川といったターミナルから一歩足を踏み入れると広がるハイセンスな住宅エリアは、小粋ながらも気取らないネイバーフッドストアのコンセプトイメージと親和性が高い。そんな地域に溶け込んだ店舗の中には、近隣住民のニーズに応えるための工夫が随所に散らばる。

 例えば、パートナーの服装はおなじみの緑のエプロンではなくラフな私服にしてリラックスした雰囲気を演出しているほか、カウンターテーブルも通常のスターバックスより低めに設定されており、お客様とパートナーとの間に自然な会話が生まれやすいような仕掛けが目につく。スターバックスの基本的なブランドコンセプトはそのままに、閑静な街の中に自然な形で溶け込める店舗のカラーこそ、ネイバーフッドストアの目指したカフェスタイルと言えるだろう。

◆あえての住宅地、一線を画す雰囲気の内装……その真価とは

 このネイバーフッドストアは、2017年6月現在、都内を中心に8店舗が展開されている。

 特に世田谷区には5店舗が集中しており、いずれも閑静な住宅街の中に店を構える。筆者が訪れた代沢5丁目店もその一つだ。

 各店舗にはそれぞれにデザインテーマが存在する。代沢5丁目店のデザインテーマは「コーヒーシアター」。店舗の中央にはステージに見立てられたカウンターテーブルが配置され、その周辺にはコーヒーへのこだわりが詰まったディスプレイが並ぶ。

 客席にはかつてアメリカの映画館で使われていた椅子も配置され、カウンター越しにコーヒーを作るバリスタがまるで役者のようだ。

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 ネイバーフッドストアは、メニューにおいても他のスターバックスとは一線を画す。

 特徴的なのはアルコールの販売で、グラスでビールや各種ワインが楽しめる。価格設定は強気で、コーヒーは500円からと通常のスターバックスより5割ほど高いが、カフェメニューは常時2種類の豆から選べ、バリスタが一杯ずつ淹れてくれるなどの一手間が満足感を生み出し、メニューの価値を高めてくれる。

 コーヒー以外でも、クリームブリュレやレモネードなどほとんどがオリジナルメニューで、フードは店内手作りの焼き立てが味わえるのも嬉しい。

 既にメガブランドとして全国各地に展開を遂げているスターバックスが、単なる既存ブランドのプレミアム性を活かしたブランド価値向上にとどまらず、あえて集客の厳しい住宅地でビジネスを展開するのはなぜか。

 そこには、「近隣住民との密着」というコンセプトのもとで、より深いお客様のニーズに応え、人と人との距離を縮めていくという、スターバックスの原点ともいえる「サードプレイス」(第3の場所)の発想が根底にあるからではないだろうか。

 生まれてまだ2年足らずの新業態であるネイバーフッドストア。今後は、愚直なまでのコンセプトへのこだわりによって心からの居心地よい場所を提供していくことこそが、さらなる成長への鍵となりそうだ。

<取材・文・撮影/るた(都市商業研究所)>

【都市商業研究所】
若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken」

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