Astell&Kernから、またもや超弩級のポータブルハイレゾプレーヤー「A&ultima SP1000」が発表されました。今回は筐体に使われているメタル素材の種類が異なる2つのモデルが限定版としてではなく、レギュラーのラインナップとして登場します。ステンレス・スティールの「SS」が7月7日に先行発売され、1〜2か月後にあとを追うかたちでカッパーの「CP」が国内で発売となります。価格は現行フラグシップモデル「AK380」とほぼ同じ50万円前後になる見込みです。

 

 

ハイレゾの元祖・Astell&Kernが目指した究極のフラグシップ

AK380が発売されてから約2年の歳月が経ちました。AK380はその価格だけでなく、規格外のハイスペックも話題になった高級プレーヤーですが、最新モデルのA&ultima SP100(以下:A&ultima)では、またどこがブラッシュアップされているのでしょうか。

↑左から「AK380SS」、「AK380 Copper」、「AK380」(いずれも専用ヘッドホンアンプを装着)と、「AK70」

 

まず製品の名前ですが、こちらは「エー・アンド・ウルティマ」と読みます。「世界最高峰のハイエンドポータブルプレーヤー」を目指したという開発者たちの思いが英語の“ultimate=究極の”という意味の単語から派生して取り込まれています。

 

なおAstell&KernではA&ultimaを、ブランドのポータブルハイレゾプレーヤーの“第4世代”に位置づけています。その理由は新しいDACチップICの搭載をはじめ、またイチから究極の音づくりを追求してきたモデルだからとのこと。これから発売する新製品はネーミングのルールを「A&○○+アルファベットと数字」のような形に変更するそうです。今回のモデルがフラグシップの“ウルティマ”なので、その兄弟機は「A&middle」とか「A&casual」のような感じになるのでしょうか。

 

今年の5月に発表され、先日GetNavi webでレポートもお届けした「KANN」については、ポータブルオーディオの楽しみ方の幅を広げることをコンセプトにした「パフォーマンスシリーズ」として別立てのラインに加わります。確かにKANNには今回のA&ultimaにも搭載されていない純度を高めたライン出力や、ポタアン要らずのハイパワーなど独自の個性が備わっています。将来は「A&○○」シリーズと平行して、パフォーマンスシリーズも個別に進化を遂げていくのでしょうか。例えば本体にSIMが挿せて、ネットワークに常時接続できるポータブルハイレゾプレーヤーなんていうのも、個人的にリクエストしたいです。

↑KANN

 

AK380との違いは?

A&ultimaの特徴をAK380と比較もしながら明らかにしていきましょう。まずDACのICチップは旭化成エレクトロニクス(AKM)の最新フラグシップである「AK4497EQ」をデュアルで積んでいます。AK380は一つ前世代のフラグシップIC「AK4490」をデュアルで搭載していました。

 

本体のサイズも大きくなっています。画面のサイズは4インチから5インチになって、解像度が1280×720に上がっています。GUIもホーム画面の上下左右スワイプからのメニュー遷移を採り入れて、よりスマホによる操作感を近づけた印象です。CPUがデュアルコアから一気にオクタコアに強化されたことで、タッチ操作への反応が機敏になっています。

↑ユーザーインターフェースも刷新。ボリュームを操作すると矢印のようなパターンが表示される

 

↑画面の左右スワイプでメニューを表示。画面の上側を下に向かってスワイプするとWi-FiやBluetooth設定のアイコンがあらわれる

 

イヤホン出力は従来と同じようにアンバランスとバランスに対応。バランス出力はAK380よりも高出力化を図っているので、ハイインピーダンスの高級ヘッドホンもさらに余裕を持って鳴らせます。アンバランス出力の方でも、ベイヤーダイナミックの「T1p 2nd Generation」をしっかりとドライブできました。

 

デジタル端子がmicroUSBからUSB 3.0のType-C端子に変更されています。高速充電に対応するUSB ACアダプターを別途用意すれば、約2時間の充電で最大12時間の連続再生ができるまで一気にフル充電できます。KANNは音楽データの伝送用として別途microUSB端子を搭載していましたが、A&ultimaはUSBオーディオ出力や、PCとつないでUSB-DACとして使う場合にもUSB Type-Cを使います。外部オーディオ機器にUSBオーディオ信号を出力する場合はType-CのUSB OTGケーブルが必要になりますが、国内ではアユートがこれに対応するケーブルを商品化する予定です。

↑底面にUSB Type-C端子を搭載。隣の5ピン端子は機能拡張などのためにも使える

 

本体内蔵のストレージは256GBと強力ですが、microSDカードも外部記憶メディアとして併用できます。スロットが本体のサイドからトップ右側に位置を変えて、トップをオープンなデザインにした付属のレザーケースを着けていてもSDカードの出し入れができるようになっています。ただし、スロットがハイエンドのスマホに多く採用されているトレイ方式に変更されたため、カードの着脱時には本体に付属するピンを使うか、またはスマホ用のSIMピンが必要です。

↑SDカードスロットは本体のトップに配置。専用のピンで開ける

 

では従来は本体のトップに配置されていた「電源ボタン」がどこにいったのかと、AKシリーズのユーザーならすぐ疑問に感じるかもしれません。SIMトレイに場所を譲った電源ボタンは、本体右側のボリュームダイアルを兼ねたホイールキーに移動しています。ホイールキーを長く押し込んで電源のON/OFFを操作。ホイールキーにダイアモンドカットの装飾を施しているところにもフラグシップのこだわりを感じます。

↑側面には電源ボタンとボリュームを兼ねたマルチファンクションボタンを配置。ダイヤモンドのようなカットを施している

 

本体のデザインについては写真で比較していただければ、多くのことを加えて語るまでもありません。シェイプはストレートになった印象。持ってみると手に貫禄の重さが伝わってきます。

↑原石を多面的にカットした宝石をイメージしたというデザイン。背面にも複雑なパターンを配置した

 

A&ultimaの音を聴いてみる

音質についてはAK380も限定モデルとして発売されていたステンレススティール筐体の「AK380SS」も用意して、A&ultimaのステンレスモデルと聴き比べてみました。ディティールの圧倒的な再現力を備え、切れ味も鋭いAK380SSのサウンドとテイストこそ似ていながら、A&ultimaでは格段に底力がスケールアップしています。音像の立体感が豊かで階調もきめ細かく、ボーカルや楽器の音色がとても生々しく浮かび上がってきました。A&ultimaの音楽からは温かみとリアルな空気感が伝わってきます。

↑A&ultimaとAK380SSを聴き比べてみた

 

ちなみにA&ultimaのカッパーモデルについても、以前別の機会に聴き比べた時の音のインプレッションを報告しておきたいと思います。解像度が高くシャープなステンレスモデルの音に対して、カッパーモデルは中低域のふくよかな余韻と、鮮やかで充実したメロディ感、抜けがよく透明な高域とのバランスがとても自然に釣り合っていました。AK380のカッパーモデルと比べてみると、音の制動力がいっそう高まったようにも感じます。SSとCPで、メタル素材によって音が大きく変わることも、わりと明快に聴き分けられると思います。筆者はA&ultimaのカッパーモデルの音がより好みでした。発売後に店頭で聴き比べられる機会があれば、ぜひゆっくりテイストの違いを吟味してみたいですね。

↑600Ωのインピーダンスを持つベイヤーダイナミック「T1p 2nd Generation」も余裕で鳴らせた

 

A&ultimaはブランドの単体ポータブルハイレゾプレーヤの集大成と呼べる完成度の高さが魅力です。従来は専用ヘッドホンアンプなどの、プレーヤーの機能を強化、または追加するアクセサリーがAstell&Kernから発売されてきましたが、アイリバーのGlobal Sales&Marketing Department ディレクターのAlex An氏は、A&ultimaについては従来と違うアクセサリー展開を活性化させたいと語っています。具体的には本体のボトム側に搭載する5ピンの拡張用端子の仕様を公開して、他のオーディオブランドがA&ultimaに対応するアクセサリーを開発しやすい環境を整えていくそうです。ポータブルハイレゾプレーヤーの歴史を切り開いてきたAstell&Kernの新たな究極のフラグシップは、発売後もその進化から目が離せなくなりそうです。