「Thinkstock」より

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 2016年度のスマートフォン(スマホ)の出荷台数が3000万台を超え、家庭での無線LAN環境を手軽に整えられるこの時代。複数の調査で、休みの日は家でひとりの時間を楽しむ人が増えていることが報告されており、そのなかでもサイトの巡回や動画共有サイトを視聴する「インターネット閲覧」に時間を費やす人は多い。

 こうした過ごし方から若者の時間の使い方がある意味で高度化していると分析するのは、マーケティングを専門とする立教大学経営学部教授の有馬賢治氏だ。

●若者は「マルチタスク標準」の時代へ

「今の若者は、スマホやタブレットで常に情報収集していますし、テレビを観ながらスマホを操作する“ながら利用”、さらに通勤・通学の“すきま時間”を活用するなど、本来は仕事でビジネスパーソンに求められる能力である『マルチタスク』(複数作業の並行処理)を知らず知らずのうちに実行しています。そのため、若者は従来よりも多くの情報を消費できるようになったといえるでしょう」

 だが有馬氏は、広告など情報を発信する側にとって、若者のこうした傾向は必ずしもいいことばかりではないと語る。

「企業側はいい広告メッセージを送りさえすれば見てもらえると思いがちですが、受け手側が日常マルチタスク状態で膨大な情報を処理しているという実情を考えると、簡単に気に留めてもらえる時代ではなくなったといえるでしょう。注目されるコンテンツにするためには、相当な訴求力が求められることになります」

 消費者から求められるのは、情報の“ながら収集”でもつい興味を持ってしまうようなキラーコンテンツ。もちろんそれを作ることができればベストなのだが、このマルチタスク時代で、“完成した商品”という結果の部分だけで消費者の関心を煽ることが難しいのも実情だ。

●「メイキングビジネス」は広告効果大?

「そういったなかで、非常に固いアイスで知られる『井村屋あずきバー』をかき氷にするための専用機『おかしなカキ氷 井村屋 あずきバー』が今月タカラトミーアーツから発売され話題となりました。製作過程を井村屋の公式Twitterでおもしろおかしく紹介したことが、関心を集めたようです。この例からも『メイキングビジネス』とも呼べる手法が拡がり始めていることが見て取れます」

 確かに近年、新たな商品の開発プロセスやビジネスパーソンを追ったドキュメンタリー番組は多く、視聴者からの反響も大きい。

「昨年大ヒットしたアニメ映画『君の名は。』も、プロデューサーの川村元気氏が多くのメディアでフィーチャーされていましたし、最近話題になった『うんこ漢字ドリル』についても編集者が製作エピソードをテレビで語る場面を多く見かけました。かつては舞台裏を見せないのが企業のこだわりだったのかもしれませんが、クラウドファンディングでモノが生まれるケースも多い昨今、製作過程や失敗談もひとつの広告要素として成立する時代になったのかもしれませんね」

 提供されたものを“平面”で楽しむというよりは“立体的”、つまり開発エピソードや失敗談を含めて商品の全体像で楽しもうという人が増えている傾向にあると有馬氏。広告戦略で考えた場合、単品のメッセージで勝負するのはなかなか難しいが、当事者でなければ知り得ない情報をフックとする「メイキングビジネス」も企業広告の新たな活路となるのかもしれない。
(解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=A4studio)