5度目の全米オープンの開幕を前にして、松山英樹はいつものとおり淡々と、つかみどころのないコメントに終始した。

「全米だからといって、特別に意識することはありません。勝ちたいという気持ちはどの試合も同じですし」


入念に練習ラウンドを消化して、本番に挑む松山英樹 117回目を迎えた全米オープンも、今年のコースであるエリンヒルズ(ウィスコンシン州ミルウォーキー近郊)は初開催となる。「世界で最も厳しいゴルフの試練」と称され、例年、優勝スコアがイーブンに設定される全米オープンではあるが、今年はまるで違った表情で、世界のトップゴルファーの前に立ちふさがっている。

 全長は7741ヤード(パー72)で、フェアウェーが全米オープン史上、最も広い。グリーンはアンジュレーションがきつく、例年どおりメジャー仕様のコースと言えるが、エリンヒルズは湿地帯に位置し、サンダーストームが頻繁に襲来することもあって、グリーンはソフトで、決して”高速”というわけではない。

 そうした条件を踏まえて、今大会に出場する谷原秀人が「飛距離が出るゴルファーには圧倒的に有利」と話せば、同じく今大会に出場する宮里優作は「予選通過のカットラインはアンダー(パー)になるかもしれない」と口にした。

 とはいえ、ラフはひざ上にまで伸びた洋芝のフェスキューが群生し、風は強弱、そして方向も実に気まぐれである。ティーの位置によっては、距離も、難易度も大きく変わってくるのがこのコースの特徴だ。

 松山は言う。

「全米より全英に近い印象は僕も受けますね。(フェアウェーが広いとみんなが口にするが)人は人。フェアウェーをキープすることが大事になると思います」

 コースを歩いてみれば、フェアウェーが左右にうねっているようにレイアウトされ、きついアップダウンもある。コース上には樹木という樹木がほとんど存在せず、まるで大草原にゴルフコースが切り開かれたかのような印象であり、ゴルファーの距離感を狂わせることもあるはずだ。

 今シーズンの松山は、ここまでパー5におけるスコア部門で1位。今回の全米オープンは久しぶりにパー72と4つのロングホールがあり、飛距離が伸びている今、距離の長いエリンヒルズとの相性は悪くないはずだ。優勝争いに加わるためには、得意としているロングホールでどれだけスコアを伸ばせるかがカギとなる。

「すべてのショットで、真っ直ぐ打つことが大事になると思います。(気をつけることは?)クラブを投げないことかな(笑)」

 あれは2年前の夏、日本に帰ってきていた松山をインタビューしたときのこと。同じ事務所に所属するプロテニスプレーヤーの錦織圭と自身を比較し、こう話していた。

「僕は、国民から近い将来のグランドスラム制覇を夢見られている錦織さんのような存在にはなり切れていない。まだまだ海外で1勝しただけのゴルファー(現在は通算4勝)で、錦織さんほどトーナメントで勝ててはいないし、世界ランクも僕の17位に対し、錦織さんは4位(※いずれも2015年8月当時)。トップ10入りを僕も早く果たしたいけど、この壁がとてつもなく大きい。ここまで来ると簡単には上がらなくなるし、安定した成績を残さないとすぐに落ちていく」

 しかし、昨春には2勝目を挙げ、今シーズンが開幕してさらに勝利数が2つ加わった。世界ランクのトップ5以内をキープし続け、現在4位の松山は、錦織の背も見えてきたのではないだろうか。

 少なくとも、スポーツファンは錦織にグランドスラム制覇を期待するように、日本人初の快挙を期待せずにはいられない立ち位置に、松山はいる。

「(日本人初のメジャー制覇に向けて)自分に期待するかと言われたらそうでもないし、期待しないのかと言われたら、そんなこともない」

 大望は胸に秘めたまま、リッキー・ファウラー(28歳/アメリカ)、そしてジョン・ラーム(22歳/スペイン)と回る初日がまもなくスタートする。

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