「誰よりも幸せになるということ」ーー柏崎広(道枝駿佑)が最後に言ったこのセリフに、『母になる』(日本テレビ系)の伝えたかったテーマが込められているように感じた。その直前には、柏崎結衣(沢尻エリカ)と門倉麻子(小池栄子)の対峙シーン。最終回の一番の見せ場であり、広のセリフへと繋がる場面があった。

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 広が参加する学校のマラソン大会の案内状を、結衣は門倉に送っていた。広にとっての、生みの親と育ての親。門倉は、あなたに会いに来たと結衣へ告げる。結衣が案内状を送ったのも、東京を離れる門倉へ気持ちを伝えられなかったからの行動だろう。以前、結衣と門倉は激しい言い争いをしていた。広を奪われた9年間も結衣は母として、子を思い続けていた。その思いの強さに門倉が根負けする形で物語は終息していったが、互いが納得した終わり方ではなかった。

 「奪われた9年間がなければ気づけなかった。あの子を育ててくれてありがとう」、結衣はなんでもない日常がどんなに幸せか、母になるとはどういうことか、門倉のおかげで気づけたとお礼を言い、彼女に別れを告げる。普通、我が子を奪った相手に言えるセリフでは決してない。けれど、この言葉は、結衣が自分、そして門倉を思って言ったものだ。結衣は、門倉を許し次に進むことが、広の幸せに繋がることだと答えを見つけた。結衣に足りなかったのは、びくともしない母としての寛大な心。それを彼女は、すでに持ち合わせている。広の幸せを願うことが、結衣の母としての幸せでもあるのだ。

 結衣に許された門倉も、また次に進むことが出来る。門倉は結衣に会う前、旅館の仕事を解雇されていた。しかし、彼女はそれを結衣には伝えず、いつか会いに来てと約束をした。これは、門倉から連絡を取らなければ、もう二度と会わないということ。彼女が、広と別れる決心をしたということだろう。きっと、門倉は柏崎家に訪れることはない。門倉もまた、自分なりの幸せを見つけたのだ。

 「母親に卒業はないけど、家族にはあるって知ってる? 母親の手を離れた子供が、やがて家を出て行く時、それが家族の卒業、ゴール」。結衣は、広と柏崎陽一(藤木直人)に優しく話しかける。劇中では、そのゴールが描かれることはなかったが、このセリフがエピローグとして柏崎家の今後を見せてくれたような気がした。

(渡辺彰浩)