サムスン電子の「Galaxy S8」

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 韓国・サムスン電子が新たに投入したスマートフォン(スマホ)のフラッグシップモデル「Galaxy S8」と「Galaxy S8+」。昨年、「Galaxy Note7」の発火事故で世界的に信用を落としたイメージを挽回するべく、満を持して投入された「S8」と「S8+」だが、その実力はどのようなものなのだろうか。

●最大の特徴は新感覚の縦長ディスプレイ

 世界最大手のスマホメーカーであるサムスンは、日本でも大手キャリアから「Galaxy」シリーズのスマホを定期的に投入していることで知られる。だが、昨年海外で販売された「Note7」が相次いで発火事故を起こしたことで消費者の信頼を大きく落とし、スマホ事業そのものを揺るがす事態を招いた。

 そのサムスンが、大きく損ねたイメージを回復するべく、新たに投入したのが「S8」と「S8+」である。これらは、昨年日本で発売された「Galaxy S7 edge」の後継に当たるフラッグシップモデルであり、今年3月にアメリカ・ニューヨークで発表されたもの。日本では、NTTドコモとauから発売される。

 サムスンは例年、2月にスペインで実施される携帯電話の見本市イベント「Mobile World Congress」に合わせてフラッグシップモデルを発表しているが、両機種はあえて発表を1カ月遅らせている。そうした点からも、サムスンが「Note7」の事故の影響を受け、念を入れて準備を進めてきた様子がうかがえる。では、「S8」と「S8+」は、どのような機能や性能を備えたモデルとなっているのだろうか。

 両機種の最大の特徴として打ち出されているのは、ディスプレイである。サムスンはグループ内で小型の有機ELディスプレイを手掛けていることを強みとしており、これまでもスマホに有機ELを積極的に採用。さらに、有機ELの「曲げられる」という特性を生かし、側面が湾曲したエッジディスプレイを大きな特徴として打ち出してきた。

 今回は、そのディスプレイをより引き立たせるべく、左右だけでなく上下のベゼル部分も極限まで減らし、本体前面のうちディスプレイが占める面積を最大限に高めている。まるで、ディスプレイをそのまま持っているかのような、新しい感覚が味わえるデザインを実現しているのだ。

「S8」「S8+」のディスプレイに関するポイントとして、もうひとつ挙げられるのは、従来よりも縦長であること。これは、従来の主流である16:9ではなく、18.5:9という比率を採用しているため。本体を横にして映画を見るときに上下の黒帯部分が従来よりも少なくなり、より迫力ある映像が楽しめるほか、縦に持ったときも、画面を上下に分割して複数のアプリを同時に利用しやすくなるなどのメリットが生まれる。

 そして、縦長の画面比率の採用は、ディスプレイサイズを大きくしながらも本体の幅を抑えて、片手でも持ちやすいというメリットももたらしている。実際、「S8」は「S7 edge」より0.3インチ大きい5.8インチのディスプレイサイズながら、幅は68.1mmと4mm狭くなっている。また、大画面モデルの「S8+」も、ディスプレイサイズが6.2インチ、幅73mmと、画面サイズのわりには持ちやすくなっていることがわかる。

●ホームボタンに大きな変化、生体認証は2種類に

 だが、ディスプレイのベゼル部分を大幅に削減した分、従来機種と比べて変化したポイントも、いくつかある。なかでも大きな変化は、従来はハードキーだったホームボタンがベゼル幅を削るためにソフトキーに変更されたことだ。

 ホームボタンをソフトキー化するAndroidスマホが増えるなか、Galaxyシリーズは頑なにハードキーのホームボタンを採用し続けてきた。しかも、サムスンはホームボタンに指紋認証センサーも搭載してきただけに、この変化は従来のGalaxyユーザーの操作性を変えてしまうことにもなる、大きな変更といえよう。

 サムスン側も、そうしたユーザーの懸念に対して最大限の配慮はしているようだ。可能な限り従来と変わらない使い勝手を実現するため、「S8」「S8+」には、ディスプレイ上のホームボタンの位置に感圧センサーを搭載。スリープ時、その場所を押し込むことで、従来のホームボタンと同じようにスリープを解除できるようになっている。

 しかしながら、指紋認証の仕組みをディスプレイ上に搭載するのは難しかったようで、指紋認証センサーは背面のカメラ横という、やや使いにくい位置に移動されている。この点は残念だといえるが、「S8」「S8+」には新たに目の虹彩を用いた生体認証システムも搭載されているため、スリープ解除後にスマホを見るだけでもロック解除が可能だ。複数の生体認証のなかからユーザーの好みのものを用いてほしい、というのがサムスン側のメッセージといえそうだ。

 ただし、ホームボタンがソフトキーになったことでメリットも生まれている。Galaxyシリーズは、ほかのAndroidスマホと比べて、バックキーと履歴表示キーの配置が逆になっており、これが“癖”としてユーザーに違和感を与えている部分もあった。だが、「S8」「S8+」では、それらのキーもソフトキーに変更されたことから、双方のキーの位置を入れ替えることで一般的なAndroidスマホと同じ配置にできるようになったのだ。

●ネックは高価格?VR体験スポットも

 ディスプレイに大きな変化があった「S8」「S8+」だが、一方であまり変わっていないのがカメラである。特に、背面のメインカメラはデュアルピクセルセンサーを採用した1200万画素と、ハード部分だけを見れば「S7 edge」とほぼ変わっていない。変更点は、シャッターを押したときに3枚の写真を連続撮影してブレの少ない写真を合成するマルチフレーム技術など、ソフトウェア面の変化のみにとどまっている。

「S7 edge」もカメラ性能には定評があったことから、「S8」「S8+」のカメラも高い水準の撮影ができることは確かであろう。だが、最近では、2つのカメラを搭載してボケ味のある写真を撮影しやすくするなど、カメラ機能に一層の工夫を凝らした機種が増えているだけに、カメラにももう少し工夫がほしかったところではある。

 また、「S8」「S8+」の主要機能であるアシスタント機能「Bixby」も、カメラで写したモノや場所などを探したり、時間や場所に応じて適切な情報を勧めてくれたりする機能などは用意されているものの、今もっとも注目されている「音声アシスタント機能」の日本での提供は決まっていない。これは、端末に話しかけることでさまざまな操作ができるという機能で、この点もやや残念なところだ。

 とはいうものの、ディスプレイが与えるインパクトの大きさ、そしてクアルコムの最新チップセット「Snapdragon 835」を搭載するなど、フラッグシップモデルならではの高い性能を備えていることもあって、「S8」「S8+」は「Note7」の影響を感じさせないほど、前評判も高かった。それだけに、両機種は「S7 edge」以上に人気を獲得する可能性がありそうだが、気になるのは価格である。

 フラッグシップモデルだけに価格が高くなりがちであることは確かだが、「ドコモオンラインショップ」における両機種の価格(いずれも税込み)を見ると、「S8」の一括価格は9万3960円、「S8+」に至っては11万8584円。機種変更時の実質負担金も、それぞれ5万5080円、6万4800円からとなっており、割高な印象は否めない。

 日本において、GalaxyシリーズはiPhoneほど高いブランド力を持っていないだけに、この点はユーザーが端末を選ぶ上での大きなハードルとなりそうだ。

 サムスンは、両機種を用いたVR(仮想現実)を体験できるスポット「Galaxy Studio」を展開するなどして、積極的なPRを行っている。魅力的な端末であることは確かなだけに、いかにその魅力を知ってもらい、価格面のハードルを乗り越えられるか。それが、両機種のヒットにつながるポイントといえそうだ。
(文=佐野正弘/ITライター)