呼ぶ方にも、呼ばれる方にもお作法があるホームパーティー。

人格やマナーが試される場でもあるが、その正解を知らぬ者も多い。

都内の様々な会に参加し、その累計回数は約100回にものぼる29歳の優子が、多角的な視点でホームパーティーを評論してゆく。

前回は、正しい家主の振る舞いを考えた。さて、今回は?




脱いだ靴から伺い知る、パーティーのレベル


東京には、様々なコミュニティーが点在し、知らないと永遠に見ることのできない世界がある。

まさに今日お邪魔しようとしている“後藤邸”は選ばれし者しか参加できぬホームパーティーだった。



六本木にある後藤邸は、とあるマンションの最上階に位置している。

厳重にロックされた扉を開けると華やかな空気に一瞬たじろいだ。

「く、空気が既に華やかだわ...」

玄関先には、ブランドの靴が並ぶ。シャネルにマノロブラニク、もちろんクリスチャン・ルブタンも。

これだけで、既に来ているゲストがどの程度の人たちなのか容易に想像できる。今夜は、男性5名、女性5名の計10名の会だと聞いている。

2フロアー分の高い吹き抜けが開放的なリビングには、センスの良い大きな絵が飾られている。

(お手洗いに飾ってある絵でさえ、時価数百万はくだらないと誰かが言っていた。)

そして東京の夜景を一望できる広々としたテラス。東京の真ん中に、こんな素敵な空間があることなど、多くの人は知らないだろう。

驚くのは、この豪奢な家だけではなかった。

来ているゲストの顔ぶれが、尋常ではないほど豪華だったのだ。


これぞ東京のホームパーティー?そこに集う華やかな面々と、会の活用法。


ゲストで決まる宴の良し悪し


ダイニングエリアにある巨大な大理石のテーブルの上には、名だたる銘柄のシャンパンやワインが置かれている。

そして出来立ての料理がサーブされていた。

お抱えのシェフが作りに来たというそれは、空腹を刺激するような香りを放ち、見た目にも豪華で、今日のパーティーの質の高さが表れていた。

部屋も、料理も、ドリンクも...全てが完璧なことは言うまでもない。しかし普段だったら気になるこれらの項目よりも、実は今夜は、ここに集う人々の方が気になって仕方ない。

東京で生きていると、様々な人に出会う。年齢を重ねるほど経験値は増えていき、知り合いの数も増える。

東京の中心で生きてきたと思っていたけれど、知らない世界が東京にはまだたくさんあることを、最近になって痛感する。知り尽くしたつもりになっていた自分が恥ずかしく思えるほど、東京というのは青天井なのだ。

「一体、どんな人たちが集まっているのかしら...」

何しろ、あの後藤が厳選した顔ぶれが揃うのだ。抑えきれない好奇心と共に、広い室内をぐるりと見回す。

ホームパーティーの割には、女性陣はやたらと肩か脚を露出しており、男性陣も皆スマートカジュアルな装いだ。

ーあ、あの人…。

男性ゲストの中に、メディアでよく見かける人がいた。気鋭のアパレル企業の経営者で、その発言が度々話題になる人だ。

女性は、私を入れて5名。赤文字系の、有名ファッション雑誌で見かけるモデルもいた。

ー 話には聞いていたけど、どうしたらこんな豪華な顔ぶれが揃うのかしら...

しかし主催者である後藤に会えば、この会に豪華な顔ぶれが集う理由が全て判明する。




「優子ちゃん、楽しんでますか?」

温厚そうな、柔らかな表情を浮かべた後藤が微笑んでいる。

「後藤さんのホムパは噂には聞いていましたが...お招き頂き、光栄です。」

この会は、後藤のおめがねに適わないと招いてもらえない。呼ばれるためには後藤と直接繋がり、彼からお声がかからなければ参加はできない。

「今日はいつもより人数が少ないんだ。最後まで楽しんでいってね。」

本人は決して前のめりではなく、あくまで自然体。そこがまた、彼の魅力なのだろう。

限られた(自分が納得出来る)人しか招かないのが後藤のポリシー。ゲストリストは、後藤の緻密な計算の上で成り立っている。

後藤がゲストに求めることは、この場を、何か交流の場として大いに活用してくれる人。(そしてSNSに投稿しない人、という点も外せないらしい。)


ゲスト同士の交流でビジネスが生まれる?これぞホムパの極意


できる主催者は、ゲスト同士のメリットまで視野に入れた人選を行う


そしてここから、私はこの会の本当の醍醐味、後藤が厳選した人しか参加できない理由を目の当たりにする。

「優子ちゃんは、商社で働いてるんだよね?」

「ええ、そうです」

「じゃあぜひ、彼を紹介させて。貿易系の事業をしているから、知り合いになっておけば、この先何かの役に立つかもしれないから。」

そう言って、後藤は斜め向かいに座る男性の隣に座るよう促した。




「伊藤さん、こちら優子ちゃん。商社で働いているんだけど、伊藤さんの会社は天然資源専門の貿易関連会社だよね?」

「そうですよ。最近業績好調の一方で、優秀な人材を探してて...優子ちゃんの専門は、何かな?」

そこからしばらく専門的な仕事の話をすると、最後に「これ、僕の名刺です」と言われ、差し出された名刺には業界では有名な会社と、その隣に代表取締役という肩書きがあった。

「優子ちゃん優秀みたいだから、もし何かあったらいつでも連絡してね。人材募集中だから(笑)」

転職で悩んでいる同期も多い中、こんなフランクな会話ですぐに転職先が決まることを、知らない人も多いだろう。

世の中なんて、そんなものだ。いかにキーパーソンを知っているか、彼らと繋がっているか。それだけで、世界は大きく変わる。

伊藤と言うその男性の隣で暫く話し込んでいる間に、気がつけば後藤はまた違う席に移動している。

そしてまた別の女性を、また別の男性に紹介している。そうかと思えば、その会話にもう一人の男性も引き込み、名刺交換を促していた。

男女間だけでなく、後藤は同性同士も積極的に紹介していることに気がつく。

「優子ちゃんは、後藤さんの会に参加するの初めて?この会はね、呼ばれるゲスト同士が仲良くなって、交流が生まれやすいんだ。何よりも後藤さんが積極的に、ああやって色々と紹介してくれるから、ビジネスチャンスにもなるんだよ。」

伊藤にそう言われて初めて気がついたが、女性モデルには出版社の上層部を、男性は同じような業界にいる人を繋げている。

ゲストを見れば、その会の品格、言うならば主催者の人格が一目瞭然だ。ここに集う人々は一流の人ばかりで、後藤の顔の広さ、そして人望の厚さがよく分かる。

しかしもう一歩進んだところで、後藤はゲスト同士の相性を緻密に計算していた。後藤の、主催者としての手腕を感じた今回のホームパーティー。

本人はいたって控えめながらも、参加した人にとってメリットがあるよう、様々な人を繋げ、新たな交流を生み出そうとしている後藤。

-ただ華やかなだけではなく、マッチングの相性まで考え抜いてゲストを厳選する。

ホームパーティーとは、料理や飲み物、家だけではなく、来てくれたゲスト全員に、どんな付加価値を与えられるかも大事な要素なのだと学んだ夜だった。

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【これまでのホムパのお作法】
Vol.1:会話を盛り上げるだけでは不十分。見られている、家主の品格