北海道の富良野と美瑛を舞台にした大人の恋を描く『心に吹く風』/[c]松竹ブロードキャスティング

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日本でも大ブームを巻き起こしたドラマ「冬のソナタ」を手掛けたユン・ソクホ監督の初の劇場映画監督作『心に吹く風』が6月17日(土)より公開される。3月に北海道・夕張市で開催された「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2017」に自作を引っさげ訪れた監督にインタビュー。初めて劇場映画を撮った感想、そして創作の秘密に迫った。

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『心に吹く風』は、北海道の富良野と美瑛を舞台にしたラブストーリー。映像作家の主人公・リョウスケ(眞島秀和)は、初恋の相手・春香(真田麻垂美)と20年ぶりに再会。春香には夫も娘もいたが、彼女を思い続けていたリョウスケは彼女を映像作品の撮影に誘い、ふたりは再び心を通わせていく…という物語が展開する。『月とキャベツ』(96)で注目を集めた真田が16年ぶりにスクリーン復帰を果たし、脚本はソクホ監督自身が執筆したオリジナル作品だ。

「普段から常に“風”について色々と考えていまして、いつか、風についての作品を撮りたいと思っていたんです。なので主人公をビデオアーティストに設定して物語を考えました。ストーリーは、1年くらい前に北海道に来た際にロケハンをしながら練りました」と語る監督。過去にチャン・グンソクとユナ(少女時代)主演のドラマ「ラブレイン」でも北海道で撮影を行った経験があり、「美しい風景だけでない、特別なよさがある」と北海道の魅力を語る。

「今回の映画は風のある風景と時間について描いていますが、“過去”と“現在”、そして“偶然”が物語のカギとなっています。そういったものが北海道の風景にはぎゅっと詰まっていて魅せられます。たとえば畑。これは偶然作られた風景なんですよね。様々な色がパッチワーク状になっていて、ひとつの眺めを形作っている。偶然についての話である今作に、ぴったりでした。私たちが撮影した6月はまだ山に雪が残っていて、畑には春が訪れていて、少し別のところに行けば初夏のように花が咲いているところもあって、色々な季節が共存していました。その美しさをひとつの画に入れられるところは魅力的だと思いました」

「冬のソナタ」でタッグを組んだイ・ジスが音楽を手掛けているが、実際の撮影現場にいた韓国人スタッフは監督の通訳が一人だけ。日本の俳優・スタッフに囲まれた、慣れない環境での仕事となった。

「慣れないことに対する好奇心があったので、日本でのこうした撮影に対してそれほどプレッシャーは感じませんでした。この映画のお話をいただいた時は、むしろすごく刺激的で楽しそうだなとわくわくしたくらいです。撮影で大変だったのは天気待ちですね。雲や風や光は自分でどうすることもできないので、常に待っていました。私よりもスタッフの皆さんのほうが大変だったんじゃないかなと思いますよ(笑)」

日本人俳優に日本人スタッフ、そして日本で撮り上げた作品ということで、日本の観客や日本の「冬ソナ」ファンを意識した部分はあるのだろうか?

「『冬のソナタ』も日本の視聴者を意識して作ったわけではありませんでしたし、今回も“自分の中にあるもの”を表現しただけで特別に意識したということはありません。ただ、『冬のソナタ』を気に入っていただいた方々が今回の作品も好きになってくれたらいいなと思いながら作りました」

1992年に演出家デビューして以来、ドラマを撮り続けてきたソクホ監督は今回が初めての映画というフォーマット。監督にとって、連続ドラマとは全く違うアプローチだったという。

「テレビは子供からお年寄りまでの不特定多数が観るもの。何を好む人が観るのか、誰が観るのかもわからないので、大衆的なコミュニケーションがとれるような作品にせざるを得ないのです。しかし映画は、映画館という空間にお金を払ってこの作品が観たいと来る積極的な方を対象に作るので、私がずっとやりたかったことを、より自由にできたと思っています。テレビは説明がどうしても多くなりますが、映画はメタファーを積極的に活用できますしね」

初恋の相手と再会した男女の3日限りの逢瀬をしっとりと描いた本作。監督が男女のドラマを描くにあたって重要視しているのはどのような点なのか?

「私が最も大切にしているのは“ときめき”です。愛を段階に分けてみると、最初にときめきがあって、次に衝突があり、そして安定に向かう。私が一番大事だと思うのは、まだときめきのファンタジーが保たれている初期の頃で、ストーリーではそこに焦点を当てることが多いです。だから、今回も初恋の思い出が回想シーンで出てきますし、ふたりの再会もときめきが維持されるように3日間という期限を決めています」

最後に本作に込めた想いやメッセージについて尋ねると、「この映画では余白をたくさん残して、メッセージを主張しすぎないようにしています。なので、自由に観ていただきたい」と断りつつも、「あえて言うならば…」とコメントを寄せてくれた。

「苦しみのある人生であっても生きることには価値がある。だから、生きることは美しいんだというふうに思っていただけたらいいなと。この映画を観た皆さんが少しでも癒やされて、つらくても生きることには価値があるのだと希望を抱いていただけたらうれしいですね」【取材・文=Movie Walker】