6月9日から3日間にわたり、バレーボール・ワールドリーグ2017高崎大会(群馬・高崎アリーナ)が行なわれた。

 スターティングメンバーがコールされた際に歓声が大きかったのは、エースの石川祐希と中垣内祐一監督だった。昨年10月に全日本男子の監督に就任が決まった直後、人身事故を起こして対外活動を自粛していた中垣内監督は、この大会がチームに合流しての初采配となった。


高崎大会で初めて全日本男子の指揮を執った中垣内監督 全日本男子は5月11日から新チームが始動し、ワールドリーグも6月2日から始まっていたが、中垣内監督が戻ってくるまではフィリップ・ブランコーチが監督代行を務めていた。第1週のスロバキア大会を1勝2敗で終え、巻き返しを図る高崎大会の前日(8日)に中垣内監督が合流するという”異例”の事態に、大会前日の会見には多くのメディアが詰めかけた。昨年のワールドリーグの前日会見は3人しか記者がいなかったことを思えば、注目度の差は歴然だった。

「ガイチジャパン」の初戦の相手は世界ランキング24位のトルコ。同ランキング14位の日本にとっては格下だが、昨年は土をつけられている。初勝利を目指す中垣内監督は、昨季、短期移籍したセリエAのラティーナで腰を痛め、スロバキア大会ではワンポイントブロッカーとして出場した石川をスタメンとして起用した。

 ファン待望の石川・柳田将洋の対角が機能し、1セット目を25-15の大差で先取すると、2セット目も26-24とデュースの末に連取。3セット目を25-27で落としたことでトルコに流れがいくかと思われたが、第4セットは代表初選出の司令塔・藤井直伸の好サーブで相手のレセプション(サーブレシーブ)を崩すなどして、25-16と制して試合を終えた。

 初戦を飾った後、中垣内監督は「紆余曲折あって監督に就かせていただき、今日勝てたのは非常に嬉しい。コート際に立つのは久しぶりなので、蘇ってくるものが多々あった。選手は本当に頑張ってくれた。今日の1勝は選手たちにとっても、私にとっても非常に大きかった」と感無量の様子だった。

 記者室では「負けた方が面白い記事になったのに」という冗談めいた感想もあったが、試合前から、監督自身はもちろん、選手やスタッフ陣にも不安はあっただろう。しかしこの初白星で、さまざまなノイズや不安をかき消した。

 続く10日のスロベニア(世界ランク29位)戦は石川を休ませた布陣で臨んだ。フルセットにもつれ込んだ試合は、先にマッチポイントを握られるも、柳田の2連続サービスエースで逆転して逃げ切る。その勢いのままに翌日の韓国(世界ランク22位)戦をストレートで制し、3連勝で大会を終えた。

 3戦を終えた中垣内監督に采配について聞くと、ひとつひとつのプレーに指示をしていたものの、「采配・・・・・・まあ、フィリップコーチの邪魔をしないよう気をつけていた」と振り返った。ブランコーチとの采配のバランスについては、「選手に対して一番やってはいけないことは『船頭多くして船山に上る』ことですから、そうならないように注意している。今後も任せるところは任せる」と、臨機応変に対応していく考えを明かした。

 ブランコーチは、長らくフランスの代表監督を務めた後に、フランスのスター選手だったステファン・アンティガが指揮するポーランド代表のコーチになり、世界選手権を優勝している。5月に行なわれた全日本男子の始動会見でも、「自分は監督代行であろうとコーチであろうと、立場にこだわらない。全日本を強化するためにやることは変わらないので」と述べていた。イレギュラーなスタートにはなったが、この連勝で弾みをつけて体制を盤石なものにしてほしい。

「中垣内監督をなんとしても勝たせたい」。大会前にそう語っていた柳田は、言葉通り抜群の活躍を見せた。初週のスロバキア大会から攻撃が好調で、決定率が70%を超えることもあった。スロベニア戦終盤の連続エースなど、売りであるサーブにも磨きをかけているのに加え、あまり得意ではなかったレセプション(サーブレシーブ)も、「ブランコーチからオーバーハンドでとることをかなり勧められて、それがしっくりきている」と安定してきている。


「ガイチジャパン」の3連勝に大きく貢献した柳田 柳田は、今年4月にプロ転向と海外リーグ挑戦を発表したものの、いまだにチームが決まっていないという状況。「ワールドリーグは、柳田さんの就活の場でもありますか?」と質問すると、「そうですね。誰が見てくれているか分からないので、確かに就活かもしれません。もちろん、前から全力でやっていますが、プロ転向したことで意識は変わっていると思います」と笑顔で答えてくれた。

 現時点で、日本が属するグループ2では、ベストスパイカーとベストサーバーランキングでトップ。中垣内監督も「彼はこの大会を通して、高いパフォーマンスを見せてくれている」と評価していた。

 ただし、今回の3連勝も柳田の好成績も、これがランキング上位12カ国で構成されるグループ1の下の、グループ2でのことだということを忘れてはいけない。同じプレーが上位の国相手に通用するとは限らないし、ミスの多さも変わってくる。

 まずは目の前のワールドリーグ中国大会(6月16〜18日)をしっかりと戦い、今季最大の目標である世界選手権の出場権獲得を勝ち取ることが大切だ。「事故でご迷惑をかけた方や支えていただいた方、応援してくださる方々に、結果で返していきたい」と決意を語る、中垣内監督の長い戦いがこれから始まる。

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