「笑×演」の裏側に迫る。ハライチ岩井の「ニャーニャー」だらけの台本を役者に渡す緊張感

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芸人が書いたネタを役者が演じるネタ番組『笑×演』(テレビ朝日系列)。「ネタ作り」と「役作り」の双方を映し出し、ギャラクシー賞(4月月間賞)も受賞した『笑×演』は、一体どうやって作られているのか?

テレビ朝日にお邪魔して、番組プロデューサーの鈴木忠親さん、チーフディレクターの上山健太郎さんに聞きました。


あえてバラエティで見ない役者さんを


── まずは『笑×演』の企画を立ち上げたきっかけから教えていただけますか

上山 元々お笑いが好きで、実は学生時代にM-1の予選にも出たこともあって……。テレビ朝日に入社してから、ネタ番組は絶対一度はやってみたいなと。で、お笑いとまた別に、舞台も好きで。大学では演劇映像コースみたいなところで学んでいて、シェイクスピアやチャップリンなどを題材に勉強していたんです。そうした経緯があって、単純に「役者さんがネタをやったら面白いんじゃないか」と、企画書を書きました。

── じゃぁホントに『笑×演』の通り、お笑いも演劇もお好きだったんですね……!

上山 そうですね。レギュラーになってから登場されている芸人さんも、全員ライブで観ていると思います。実際にネタを観て面白いなと思った方をキャスティングしている感じですね。


── 役者さんはどうやってセレクトを?

上山 あえてバラエティであまり見ない方に声をかけたり、逆に「この芸人さんのネタなら、この人に作ったら面白くなりそう」とイメージしたり……色々ですね。僕の中で「夢の組み合わせ」みたいなリストを作って、無謀だと思いながらも大御所に声をかけてもらったりとか(笑)

鈴木 役者さんは名前ははっきりわからなくても「あの人だ!」って言ってもらえる人にはしたいなと。演じているのは見たことがあっても、普通にしゃべっているところを見たことがない人はいっぱいいると思うんですよね。

上山 意外と気さくな人だったりとか、普段から面白い人だったりとか、僕らもロケで初めて知って楽しかったりするんですよ。日野陽仁さんなんて渋い映画ばかり出ているイメージでしたけど、めちゃめちゃ弾けてやってもらいましたし(※筆者註:日野さんはロビンソンズが書いたネタで顔をいじられていました)

鈴木 あ、でも笑いの芝居に特化してる役者さんには、あえて声をかけていないかもしれないですね。上手いだろうな、と思いますので。

── 芸人さんと役者さんの組み合わせはどうされてるんですか?

鈴木 組み合わせについては、ちょっと意地悪をしたり、遊んでいる部分がありますね。年配の役者さん同士をぶつけたら芸人はやりづらいだろうなぁ、じゃぁあえてやりづらい環境にしてみよう……とか。あとは、男性コンビにあえて女優二人をあててみたりとか。

── ザ・ギースや三拍子がそうでしたね。「女性にネタ書いたことないぞ!?」と戸惑ってました。

台本にずっと「ニャーニャー」


── 芸人と役者の組み合わせが決まってから、顔合わせ、稽古、収録はどれくらいの期間でやってるんですか?

上山 1週間〜2週間といったところでしょうか。組み合わせが決まったら芸人さんにネタを作ってもらい、ネタが完成してから顔を合わせるようスケジュールを調整しています。本当はもっと稽古の時間をたっぷり取りたいんですが、ネタが出来ないと先に進まないのが難しいところです……。

── ネタが出来ると緊張の「顔合わせ」ですね。役者さんが台本に笑ってくれるのか、芸人さんが固唾をのんで見守っている姿が印象的です。

鈴木 あれは僕らも緊張するんです。あそこでつまずくと、極端な話成立しなくなってしまうんで……。今のところそんなことは無くて助かっています。

上山 台本はあの場で初めて役者さんに見せています。スタッフは事前にネタを見ているんですが、ハライチ岩井さんのときは「あ、これ渡すんだ……」と(笑)

鈴木 あれは悩みましたよね……。「どういう事なんだこれ……?」って。

上山 台本にずっと「ニャーニャー」って書いてありましたから……(※筆者註:ハライチ岩井が「普段出来ないものを」と書いたのはリズムネタ。舞台ではピンクのヒョウ柄の全身タイツを着た迫田孝也が、終始ニャーニャー歌いながら台詞を言うことに)

鈴木 芸人さんの書く台本ってドラマの台本と違って、みなさん書き方まちまちだし、やっぱり僕らも全部文字面だけじゃわからないんです。Aマッソさんも紙で見たときは、「上山、大丈夫……?」って。(※筆者註:Aマッソが書いたネタは、漫才をしては体温を測る、スピッツの曲に合わせて相手をしばくなど奇行だらけ。あまりにシュールすぎて金子昇は台詞が飛んでしまった)

上山 ト書きもなくて台詞だけバーッと書いている人が多いですもんね。

鈴木 コントは芝居に近いので、文字で見てもなんとか物語がわかるじゃないですか。漫才のかけあいや音楽ネタみたいなのが紙で来ると……Aマッソさんのああいう独特な世界観も、やってもらわないとわからないんですよね。やったのを見せてもらって始めて「こういうことか」と。

── とりあえずその場で台本を読み合わせして、その後また別の日に稽古を設定していますよね。

上山 「ネタを覚えてからやりたい」という役者さんがほとんどなので。台本をもらってその場でやれることは少ないみたいなんですよね。

── 確かに神保悟志さんも台本は「一旦寝かせたい」と言ってました。

鈴木 カメラが入る稽古日を1日設定させてもらいますが、あとは本人達で連絡を取り合って練習されている組もいます。ニッチェ×西尾まり&松井玲奈のときは、稽古終わりに4人で食事に行ってましたよ。

上山 稽古を見ていると、役者さんはネタの覚えが本当に早いんです。普段の演技に比べたら、ネタの3分4分の尺を覚えるなんて楽勝なのかもしれません。短い時間のなかで台詞回しを全部覚えてくださるのは本当に感動しますね。

収録は「お笑いライブ」を撮るように


── 稽古の次はいよいよ収録当日ですね。役者が舞台の上でネタを披露して、芸人が客席から見守ります。

鈴木 収録で意識しているのは「お笑いライブ」を撮ることなんです。バラエティ番組を撮るというよりは、お客さんを入れたお笑いライブを撮って、それをうまく放送できればなと。番組で登場するのは1回あたり2組ですが、収録では4組に舞台に上がってもらいます。2本収録するので、4組×2の8組が1日にネタを披露しています。

── それだけネタが続くと確かにライブっぽいですね。

鈴木 放送では使ってないんですけど、実は毎回勝者を決めているんです。客席投票で4組中1位を決めています。芸人さんもそういうほうが頑張れるんじゃないかと思いますし、役者さんの中にも「せっかくだから優勝したい」という方もいらっしゃいます。


── 裏でスタンバイされている役者さんの緊張感も大変なものじゃないですか?

鈴木 普通のネタ番組とは違う、変な緊張感がありますね。芸人同士だと、共演者がどんな感じのネタをやるかあらかじめ知っているじゃないですか。ナイツはこんな感じ、ハライチはこんな感じみたいな。『笑×演』だと、他の役者さんがどんなネタをやるか何も分かってないんです。自分たちも緊張しているし、お客さんを笑わせないといけない。役者さんは笑いの正解がわからないので不安でしょうね。

しかもそんなところに、迫田さんみたいな格好した人(※ピンクの全身タイツ)が急に裏に登場すると「なにやんの!?」ってなるでしょうし……。

── 芸人さんたちのリアクションはどうですか?

鈴木 当日スタジオにいる芸人さんは舞台を見るしかないんですよ。自分たちで笑われせられないから。歯がゆいと思います。自分が書いたネタで、どうなるかを見守るしかない。

── じゃぁ終わったあとというのは……

上山 もう、「すごい仕事を終えた!」という感じですね。

鈴木 終わった組と待ってる組の、裏での感じが全然違います(笑) みなさんウケているので、そういう意味では嬉しいんでしょうね。

上山 「いい経験させてもらいました!」と言ってもらえると、こちらもとても嬉しいですね。「また出たい」という声もよく聞きます。芸人さんではザ・ギースさんやジグザグジギーさんから「是非またやりたい」「めっちゃ楽しかったです」と言ってもらえたのが印象的でした。

鈴木 芸人さんと役者さんは、終わったあと仲良くなってますよ。やっぱり引き受けて下さった役者さんは腹をくくってくれてますよね。あがってきた台本に意見を言うことはあっても、ケチをつけることは全然無いですし。やると決めたらどんなことでもする。役者さんってそういう仕事なのかもしれません。


後編に続きます!


※本日6/14放送の『笑×演』は2組とも「番組初」の出来事が。顔合わせで番組初の展開になった「笑撃戦隊×六平直政&窪塚俊介」と、番組初の女優トリオ「我が家×藤田朋子&伊藤ゆみ&武田梨奈」の2本です!

(井上マサキ)