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 善良な市民にとって、普段目にする交番勤務の警察官は頼もしい存在だ。だが、警察組織において、地域住民に慕われているかどうかは警察官の評価に繋がらない。経済ジャーナリストの秋山謙一郎氏によれば、警察社会は数字で見えるものしか信用しないのだとか。

「警察にとっての事件は、民間企業における営業案件と同じです。大きな事件を一人で何年も捜査して解決の糸口を見つけた者と、小さな交通事案をコツコツ積み重ねた者では、後者のほうが点数が高く、評価される。警察を正義の味方だと思って入ってきた新人にとって、この現実は地獄でしょうね」

 さらに、この点数至上主義が露骨に出ているのが昇進制度だ。

「警察は徹底した階級社会。ひとつでも階級が上なら絶対的に偉い。そして、そこに上るためには昇任試験のペーパーテストを受けて、合格さえすればいいんです」

 この試験を突破するには勉強が必要だが、通常の警察業務に真面目に取り組んだ場合、勉強時間はほぼ確保できない。結果として、警察官本来の業務をのらりくらりとかわして試験勉強に集中していた人間が階段を上っていくというわけだ。現役時代は徹底した現場主義で鳴らした警視庁OBで評論家の犀川博正氏の評価は散々だ。

「現場の人間から見れば無能なヤツばかりが管理職になる。そのくせ受付窓口に一般の人がいるときを見計らって、部下に恥をかかせるために怒鳴り散らすのです。管理職の俺はこんなに偉いんだぞ、と自分に酔っているんですよ」

◆プライベートを詮索「貯金通帳を持ってこい」

 警察組織には特有の息苦しさがあると語るOBもいる。『元警察官のブログ』を主宰する田中寛氏(仮名・40歳)は、10年間の警官生活をこう振り返る。

「年に2回、上司からプライベートについて根掘り葉掘り聞かれます。『貯金はいくらあるのか、通帳を持ってこい』から始まり、交際している彼女のことまで踏み込んでくる。パソコン、携帯電話の中身もチェックされました」

 抜き打ちでの家庭訪問も含め、職員の私生活に平気で介入するのが警察の流儀だが、職員から警察組織への意見はまず通らない。

「上申書を出しても、上司に握りつぶされ、不平不満分子に認定されるのがオチです」(犀川氏)

 文字通り息が詰まりそうな環境だが、この中で彼らは警察本来の日々の業務を淡々とこなしている。

「私がいた刑事課は朝の8時半から翌朝8時半まで勤務し、そこから24時間休むことになっていますが、当番中に起きた事件や変死は、翌朝の勤務者に引き継がず、自分で処理を終わらせないといけません。あくまでも責任は、事件が起きたときの勤務者にあります。2、3日連続の徹夜でフラフラの状態で仕事をしていることもざらです」(田中氏)

 現場の誰もが、次の勤務者に引き継ぐ仕組みにすればいいと思っていたが、田中氏の現役期間中に改まることはなかったという。

取材・文/野中ツトム・福田晃広

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