世界各国が大気汚染に悩まされている

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米国の健康影響研究所(HEI)は、2017年2月に世界で大気汚染が原因で死亡した人の数は2015年だけで420万人以上に上るとする調査結果を、大気汚染と健康の関係に関するレポートウェブサイト「Global Air 2017」で公開している。

調査では中国とインドの死者数だけで半数近くを占めるとされているが、欧州の大気汚染も深刻なようだ。6月7日(現地時間)にパリ在住の女性が、パリ市内の深刻な大気汚染をフランス政府が放置していたため呼吸不全で死にかけたとし、政府を訴える手続きを取っていると欧州の複数のメディアが伝えているのだ。

大気汚染で呼吸器の病気に次々と

6月7日付の仏「ル・モンド」紙電子版によると、パリの行政裁判所に政府の大気汚染対策の不備を訴えたのはパリ在住のクローティド・ノネスさん。ル・モンドに対しノネスさんの弁護士はノネスさん以外の大気汚染被害者もリヨンやリールなど各都市で訴訟の準備を進めているとコメントしている。

ノネスさん自身がル・モンドの取材に答えた内容によると、もともと喘息を発症していたものの極端に体調が悪化し始めたのはパリに住み始めてからだという。それまでは発症していなかった肺炎や副鼻腔炎、胸膜炎など呼吸器に関係する感染症や炎症を多発するようになり、10〜12日間の入院を度々繰り返していた。

そして、2016年12月5〜6日にかけてパリ市内の「PM10(大気中に浮遊する10マイクロメートル以下の粒子状物質)」濃度が、EU基準の「50マイクログラム/立方メートル」を約2倍上回る104マイクログラム/立方メートルを記録した際、呼吸不全に陥り救急車で病院に運ばれた。

検査の結果、医師から肺に水が溜まり心臓の筋肉も炎症を起こし心停止寸前の状態だったと告げられ、「大気汚染の影響が関係している可能性がある」と指摘されたという。治療には5か月以上かかるとされ、ノネスさんは仕事もできない状態にあり、政府に14万ユーロ(約1700万円)の賠償金を請求している。欧州心臓病学会は2014年12月に「大気汚染が心疾患リスクを高めており、運動不足や塩分の過剰摂取よりも危険」とする公式見解を発表しており、医師の指摘は的外れではない。

環境先進国のイメージがある欧州だが、健康被害が発生するほど大気汚染が深刻というのは本当だろうか。

実は欧州では以前から深刻な大気汚染に悩まされている。EUは独自にPM2.5やPM10、オゾン、二酸化窒素など汚染物質の基準値を設定しているが、EUの環境専門機関である欧州環境機関(EEA)が5月22日に発表したレポートによると、フランス南部やイタリア北部、スペインの都市部や東欧各国では日常的に基準値を上回っている。EU加盟国だけでも年間46万7000人が大気汚染によって死亡しているとする驚きの数字も報告されており、とても良い環境とは言えない状況だ。

車と薪ストーブが汚染の主な原因

深刻な大気汚染の原因について、EEAは大きくふたつの理由を挙げている。ひとつめは大都市の交通量だ。パリやロンドンは名指しで「交通渋滞が慢性的に発生し、幹線道路沿いでは汚染物質である二酸化窒素やPM2.5が排出されている」と指摘。ディーゼルエンジン車が普及していることも汚染要因とされている。こうした指摘を受けてか、BBCの報道によるとフランス政府はパリ市内でいくつかの道路を歩行者専用にする、排気ガスの汚染物質排出量認定制度を設け、基準を満たさない場合は罰金対象となるなどの対策を発表しているようだ。

ふたつ目は、東欧や北欧では薪ストーブを主要な暖房器具として利用している家庭が多いということ。欧州全体で発生するPM2.5のうち半分以上が薪ストーブ由来と指摘している。

日本でもPM2.5を含む汚染物質の環境基準値が定められており、全国700か所で濃度を常時監視した速報値が、各自治体の大気汚染情報ページなどで確認できる。基準値より高い数値が確認されている日は外出を控えるなどの対策を取るといいだろう。