「過度な飲酒は健康に悪いが、適度な飲酒は健康に良い」というのが世間の常識ですが、イギリスの研究で、「アルコール摂取量が多いほど脳の認知機能が下がり、たとえ適量の飲酒であっても脳の機能を低下させるのに違いはない」という、お酒好きにとっては残酷な調査報告がされています。

Moderate alcohol consumption as risk factor for adverse brain outcomes and cognitive decline: longitudinal cohort study | The BMJ

http://www.bmj.com/content/357/bmj.j2353

Even moderate drinking may speed brain decline

https://www.statnews.com/2017/06/06/moderate-drinking-brain-decline/

イギリス・ロンドンの公務員を対象に、職員の健康状態を長期的に追跡した調査報告を使って、Ana Topiwala博士らの研究チームが「飲酒の量が脳機能に与える影響度」を調べました。報告書は1985年から2015年までの30年間という長期間にわたって平均年齢43歳の550人の職員が毎週アルコール摂取量を報告したもので、この報告書と被験者である550人をMRIによって脳機能を測定した結果から、アルコール摂取量が脳機能に与える影響力が測られています。

調査では週に30杯以上、飲酒する人は、アルコールを飲まない人に比べると5.8倍も海馬が萎縮しやすいことが判明。海馬は記憶や認知などを司るため、アルコールをよく摂取する人は、長期的に見れば脳の認知機能が低下しやすいことが分かりました。

また、アルコールの摂取量が多ければ多いほど、海馬の萎縮しやすさが高まることが分かりましたが、適度な飲酒量をキープしていた人も海馬の萎縮は免れないことが判明。「適度な飲酒は健康に良い」という定説は、脳については成り立たないことが分かったとのこと。1年間の老化によって海馬が縮む割合は0.02%なのに対して、1週間に1回余分に多く飲酒することは萎縮率を0.01%高めることに相当するとのことなので、お酒を飲む人は適量であっても老化に匹敵するほど脳の海馬の萎縮が進んでいるというわけです。



なお、この調査では海馬の変化は右部分でのみ統計的に有意であり、左部分の海馬ではめだった差がない、という結果が出ており、この原因について研究者はうまく説明できていません。

今回の研究結果に対しては、あくまで「適度な教育を受けた中流のロンドン在住の550人の公務員」という非常に限定的な被験者から得られた結果であって統計的な価値は小さい、と見ることも可能ではありますが、精神科医のKillian Welch氏は、「『健康的な飲酒』の水準を変える可能性がある」と指摘しています。