「我々にとって一戦も気の抜けない戦いがスタートします。長野で開催される東アジア選手権は2019年ワールドカップ、2020年東京オリンピックに続く大会。ここからの3年間は、まさに日本バスケットボール界の将来をかけた勝負です」


Bリーグ終了直後ながらも、ほぼベストメンバーが集まった日本代表 6月3日から7日にかけて、長野で開催された男子の東アジア選手権。大会前の会見で三屋裕子日本協会会長が決意を表明した。東京五輪への道は、この6月、長野から始まったといっていい。

 東アジア選手権は出場6カ国中、上位5カ国までが8月に開催されるアジアカップの切符を獲得できる大会のため、ライバルである中国は平均19歳、韓国は平均24歳のチームを結成し、育成の大会に当てていた。そんな中で日本の結果は3位。ケガ人以外のベストメンバーで編成して臨んだ大会だったが、日本と同様に主力と帰化選手を擁するチャイニーズ・タイペイに準決勝で完敗してしまった。

 特に課題だったのは、日本31本、タイペイ46本と、大きく遅れをとったリバウンドだ。ポイントゲッターである比江島慎が「試合にソフトに入ってしまった」と反省したように、出足から消極的になってしまい、リングに向かう意識が見えなかった。チャイニーズ・タイペイはアグレッシブにアタックしてくる国だが、こうしたフィジカルコンタクトに強いプレーで当たられると、日本はとたんに引いてしまう。

 国際大会でこうした弱点が必ず出るのは、Bリーグにおいて、得点やリバウンド面で外国人選手に依存していることが大きな要因である。強化を統括する東野智弥技術委員長は「Bリーグができて、日本人選手が攻める意識はかなり向上しているので、今後は改善できる」と語るように、3位決定戦で若い中国を叩きのめす修正力を見せたことは評価できる。

 だが、日常で戦うプロリーグでこそ、大事な場面で日本人選手がリングにアタックする”習慣”を身につけないかぎりは、国際大会の大事な場面でいきなりリングに向かえといっても無理な話だ。ここ日本で、日本が抱える一番の課題を露呈して敗れたことで、今度ばかりは課題を先送りせずに覚悟を持って取り組まなくてはならないと、目が覚めたのではないだろうか。

 そこで、冒頭の三屋会長の言葉である。この東アジア選手権は3年後の東京オリンピックにつながっている。今後、どのように大会が進んでいくのか説明したい。

 今年度よりFIBA(国際バスケットボール連盟)は、ワールドカップ/オリンピック出場につながる大会フォーマットを大幅に変更した。これまでは2年に一度の大陸選手権(日本ならば『アジア選手権』)が4年に一度のワールドカップ予選と五輪予選を兼ねていたが、2017年からは大陸選手権を4年に一度に変更し、コンチネンタルカップ(総称)として開催することになった。アジアに属する日本は、8月の『アジアカップ』に参戦する。

 アジアカップは従来のアジア選手権のように、優勝すれば五輪出場が決まり、3位までにワールドカップ出場権が与えられる大会ではなくなる。今後、ワールドカップ予選がサッカー方式のように、今年の11月から約1年半かけてホーム&アウェーで争われることになるが、そのワールドカップ1次予選に出場できるのは、アジアカップの上位14カ国とFIBAから推薦された2カ国、計16チームだ。加えて、ここで難敵が登場する。アジアカップの戦いに、オリンピックの常連のオーストラリア、ワールドカップ常連のニュージーランドが加わるのだ。これは競技力の弱いアジアと、競争相手がいないオセオニアにおいて、競争力あるゲームを行なうための措置である。

 そしてアジアカップ後、いよいよ今年11月から始まるワールドカップアジア1次・2次予選こそが本番だといえる。2019年のワールドカップは中国で開催され、出場国が24から32カ国に拡大。アジアは開催国の中国を除く上位7カ国が出場できる。これまでよりチャンスは拡大するが、オーストラリアとニュージーランドが引き続きアジア予選に参加する(※)ため、激戦必至となることは間違いない。

 さらに、ワールドカップにも大きな変更点がある。ワールドカップは世界ナンバーワン決定戦であるとともに、ダイレクトに五輪出場権を得る大会となる。出場32カ国中、順位に関係なく、各大陸の最上位チーム(アジア、アフリカ、オセアニア大陸は最上位国、アメリカとヨーロッパ大陸は2位まで)がオリンピック出場権をダイレクトに得る。ここで五輪出場枠の12カ国中、7カ国の出場が決定する。

※オセアニアはワールドカップ予選ではアジア枠で戦うが、五輪出場枠では本来のオセアニア枠扱いとなる。

 また、これまで同様残る4枠については、世界最終予選にて出場権が争われるが、世界最終予選に出場できる権利も、当然ワールドカップ出場国が優先される。ワールドカップで五輪出場を決めたチームを除く上位16カ国に加え、各大陸から選ばれた8カ国、計24カ国で争われるが、ここまでくると制度が複雑なので、現時点では説明を割愛したい。

 とにかく、東アジア選手権→アジアカップ→ワールドカップ1次・2次予選を経て、ワールドカップに出場しなければ、2020年の東京五輪の出場権を得ることができない仕組みへと変更されたのだ。

 そして残る1枠が『開催地枠』なのだが、これは自動的に与えられるわけではない。FIBAは2012年のロンドン大会から開催国に自動出場権を与えておらず、競技力および、統括組織の運営等において宿題を課している。2012年のイギリスは競技力、2016年のブラジルは財政面での課題をクリアしていずれも出場権を獲得した。この宿題がFIBAランク48位の日本だと、競技力向上であることは言うまでもなく、だからこそ冒頭の三屋会長の言葉につながる。

 東野技術委員長によれば、「開催地枠を得るためには、FIBAからはワールドカップベスト16の水準でバスケができていることが大事と告げられている」という。しかしこれは公式なアナウンスではないため、東野技術委員長は「是が非でもワールドカップに出なければならない」、そして「これからはどの大会も、どの試合も無駄にはできず、強化内容と成長をアピールすることが大事」と話す。現実を見れば、日本は1998年以来、自力でワールドカップに出場していない。アジアの出場枠が7カ国に増えても、そのハードルはとても高いと言わざるを得ない。

 また、リオ五輪でベスト8入りをした女子については実績を残しているが、「女子も同様に成長を示していくことが大事」と東野技術委員長は語る。男女ともに開催地枠での出場可否が決定するのはオリンピック前年。実質は3年ではなく、あと2年で成果を見せなければならないのだ。

 今回の東アジア選手権では、セルビア人のルカ・パヴィチェヴィッチが、今大会までの暫定ヘッドコーチとして采配を振るった。ピック&ロールという世界で主流のシステムを導入してチームの土台作りを行なった。そして8月のアジアカップからは、2012年のロンドン五輪で母国アルゼンチンを4位に導いたフリオ・ラマスが指揮を執ることが決まっている。

 来るアジアカップとワールドカップ1次予選では、何の因縁か、今大会で敗れたチャイニーズ・タイペイと同組で争うことが決定している。まさしく、1試合も無駄にできない険しい道のりが始まった。新指揮官、フリオ・ラマスは7月上旬に来日し、新体制がスタートする予定だ。

■国内バスケットボール 記事一覧>>