高安が新大関になった。
 不動の最高位「横綱」でもなく、一進一退の「平幕」でもない、特別な存在の「大関」。平幕に「一発決めてやろう」と突っ込まれ、横綱にもカチ上げられて、負けがこめば「休場」の声が響く。そんな苦悩と栄光の狭間にいる男たちのことを、あなたは知っているか。

「自分が関脇のときは、『大関は楽でいいな』と思ってたんですよ。だって、一場所負け越しても番付は大関から落ちないでしょ。負け越してもその次の場所に勝ち越せばいいんだからって」

 こう語るのは元大関・琴光喜の田宮啓司氏(41)。ところが、現実はまったく甘くなかった。

「自分が大関になってみると大違いですよ。連敗なんかすればすぐに『休場しろ』みたいな雰囲気になるし、親方からも言われますからね。どこも悪くないのに休場しろって言われる。それが本当に辛かった」

 番付発表から本場所、千秋楽までのプレッシャーはすごかったという。

「場所前になるとじんましんが出たり、15日間も下痢が続いたり……」

 元大関の把瑠都氏(32)も同様に三役とは違うプレッシャーを感じていた。

「三役だって負け越したくないから緊張感はありました。でも大関はそれだけじゃない。平幕に負ければいろいろ言われるし、ただ勝ち越すだけでもダメ。『大関昇進まであんなに強かったのに』と言われるのが辛かった」

 大関に上がれば待遇も変わる。月給が70万円アップの234万7000円にもなる。

「もちろん給料も上がるし、手当も増えます。付け人も関脇で3人以下だったのが5人くらいにはなったんじゃないかな。でもいちばん嬉しかったのは、国技館に車で直接入れることです。横綱と大関だけの特権ですから。最初に国技館の地下駐車場に車を入れてそのまま支度部屋に入ったとき、あれがいちばんの感動でした」(琴光喜)

 収入が増えるのはいいが、その前にはある「しきたり」が……。

「昇進したら自分の部屋はもちろん、一門の部屋の人みんなに恩返しの気持ちで、贈り物をさせていただきました。親方やおかみさん、力士、行司や呼出、床山にも。プレゼントは衣装やブランド品とか。すごい金額にはなるんですけどね。

 特に私のいた出羽一門はいちばん大きかったから人も多いんです。何百万円かかったかな。昇進パーティでご祝儀をいただいたんですけど……、大赤字でした(笑)」(把瑠都)

 う〜ん、大関になっても大変だ。とはいえ、三役との待遇格差は大きい。

「部屋に大関以上がいるかいないかで、パーティを開催しても集客数が大きく変わります。お座敷に呼ばれる回数も増えますし、“お車代”も関脇が5万円なら大関は10万円、横綱は20万円と増えていきます」(相撲担当記者)

 名誉ある地位だからこそのプレッシャー、そして人気……。大関になるには覚悟も必要なのだ。

(週刊FLASH 2017年6月6日号)