『映画 山田孝之3D』より
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 「山田孝之の東京都北区赤羽」(2015)、「山田孝之のカンヌ映画祭」(2017)と約3年にわたり、俳優・山田孝之とタッグを組んだ山下敦弘監督。その集大成として、盟友・松江哲明監督とともに完成させた『映画 山田孝之3D』が間もなく公開を迎える。山下監督は「山田孝之という人間には中毒性がある」と語っていたが、この言葉にはどんな意味が込められているのだろうか。

 “ドキュメンタリードラマ”と銘打って始まった「山田孝之の〜」シリーズ。SNSでは、放送が開始されると「どこまでがフェイクで、どこまでが真実なのか」という議論が巻き起こっていたが、山下監督は「あくまでドキュメンタリードラマということ以外に語ることはないんです。あえて言うなら『フェイクかリアルか』じゃない次元の魅力を伝えたいというのが僕らの思いです」と本シリーズの魅力の次元を語る。

 山下監督と山田の出会いはオムニバス映画『BUNGO〜ささやかな欲望〜 告白する紳士たち』(2012)の中の一遍「握った手」だった。「その後、僕は『己斬り』という映画を撮っていたのですが、ある事情で撮影が中断になったんです。それで出演していた山田くんから『自分の記録を撮ってほしい』と相談され、松江くんに協力してもらって、『山田孝之の東京都北区赤羽』で彼に密着するという流れになったんです」と山下監督は当時を振り返る。

 そこから、壮大なドキュメンタリードラマは始まった。続く「山田孝之のカンヌ映画祭」でも、山田の「カンヌを目指したい」という一言から、カンヌ映画祭パルムドール(最高賞)獲得のための日々に密着することになる。しかし、映画作りへの主張の違いから山下監督と山田は決裂。主演女優を務めるはずだった芦田愛菜が、険悪な状況を見かねて仲裁に入り新たな企画として『映画 山田孝之3D』が誕生することとなる。

 「山田くんに巻き込まれたという表現が正しいかわかりませんが、気がついたらこういう形になっていたんです」と山下監督は苦笑いを浮かべると「楽しいとか楽しくないではなく、山田孝之という川に船が用意されていて、僕と松江くんが乗ってしまった感じ」と約3年にわたる山田との仕事を振り返る。

 さらに「山田くんの言葉って、本音なのか芝居なのか、ずっと横にいてもわからないんです」と長い時間を共にした感想を述べると、「だけど、そんなことはどっちでもいいと思ってしまうぐらい彼には引き込まれるものがある。スターって一方的に発信している感じだけれど、山田くんには、多くの人が吸い寄せられる。だから、すごく大変なことがあっても『一緒にカンヌ行きましょう』とか言われると気持ちよくなっちゃう。中毒ですよね」と笑う。

 その「山田孝之のカンヌ映画祭」で、山田はプロデューサーという立ち位置で映画を作っていた。しかし、「僕は監督という立場でその場にいたんですが、すごく山田くんに演出された感が強かったんです。『山田孝之の東京都北区赤羽』のときも、山田くんがいると、赤羽の人たちのスイッチが入るんです。でも彼は監督には興味がなく、やるならプロデューサーみたいです」と語る。

 「山下監督、松江監督、山田孝之という座組で目指したものは何か?」と尋ねると「“悪戯”ですかね。男だけが集まって体育館脇でくだらない話をして盛り上がっているみたいな……。その男子校のノリを客観的に観ている芦田さんが叱りにくる……そんな関係性だったのかなって思うんです」と答えた。(取材・文:磯部正和)

『映画 山田孝之3D』は6月16日より公開