東京の女性たちは勘違いをしているかもしれない。

結婚できれば、それでハッピーエンドだと。

だが、生活を共にし始めてからが本番だ。結婚した後は、夫婦生活を継続するための「結婚維持活動」が必要である。

ー人間は判断力の欠如によって結婚し、 忍耐力の欠如によって離婚し、 記憶力の欠如によって再婚する。

フランスの劇作家、アルマン・サラクルーの言葉のように、「結婚維持」のキーワードは果たして、忍耐なのか?

この連載では、東京で「結婚維持活動」に勤しむリアルな夫婦の姿をお届けしよう。

今週は、自分自身のキャリアを捨てて専業主婦となった、愛の結婚維持活動に迫る。




<今週の結婚維持活動に励む妻>
名前:愛
年齢:32歳
職業:専業主婦
結婚生活:3年9ヶ月目


3年目の浮気?大目になんて、見れません。


私、こう見えて結婚前は会計士だったんですよ。今はとてもそうは見えないかしら。

いつもフラットシューズ履いてるし、大きなバッグにオムツやら哺乳瓶を入れて見るからに、「お母さん」って感じですものね。

ただ、フラットを履くならグッチかフェラガモって決めているし、着ているものには多少、気を使ってますけれど。

仕方がないとは思っています。子供はまだ1歳ですし、動き出してからどんどんお世話が大変になってきて。

でも、本当に生き甲斐なんです。この子がいれば、何もいらない。妊娠したタイミングで会社を辞めて、正解だったと思いますよ。

側にいて、こうして笑ってくれるだけでもうとろけそうになるくらい幸せになれるんです。子供を産んで、本当に良かった。それは、本当。

え、結婚ですか?夫のこと?

夫はね…。いてくれて、ありがたいとは思っています。でもね、彼、私の妊娠中に浮気していたんですよ。


妊娠中の浮気で、離婚の危機が勃発!?


ありふれた出来事も、自分ごとだと腹立たしい


ご存じないかもしれませんが、女性って妊娠、出産で精神的にも体力的にも凄く負担がかかります。

妊娠は素直に嬉しかったですよ。いずれは子供を、と考えていましたもの。

ただ夫は役人で、すごく激務なんです。

普通のご家庭のように子育てを共にする、という選択肢はなく、私は泣く泣く家庭に入ることにしました。

ただ、妊娠後期に入りどんどんせり出してくるお腹に、腰痛などのトラブルや精神的な浮き沈みで、喧嘩も多くなって…。

男性って、結婚しても苗字は変わらず、生活スタイルも変わらず、女性だけが妻になって子供を産むのに多大な変化を強いられるなんて…と、不公平感を強く感じていました。

もともと家にあまり帰ってこれない夫の帰宅が更に遅くなったのも、その時期だったかしら。

あの時は、不安で不安で笹塚の実家にばかり帰っていましたね。

幸せと不安がごちゃまぜになって、自分でも気持ちのコントロールが出来ない時期でした。

でも、1番堪えたのはやっぱり夫の「浮気疑惑」です。

女の勘、ですかね。

やっぱり、おかしい、ってなんとなく感じるんですよ。普段の様子とか、雰囲気、何かが妙にいつもと違うんです。

その日も、帰宅時間はいつもと同じくらい遅かったんですけどね。

私は昼間寝てしまっていたのもあって、深夜でも目が冴えていたので、スマホで延々と出産情報なんかを見ていたんです。




それで夫が寝室に戻ってきた時に、話したい気分でもなかったので、何となく寝たふりをして。

世の中の妻って、結構寝たふりしてるんですよ。ご存じなかったかしら。

そうしたらね、案の定。

彼がシャワーに入ってる間に、LINEのメッセージが来たんですよ。「もう帰宅しましたか?今日はご馳走様でした。」とか、「今度はもう少し一緒にいたいです。」とか、おかしな内容で。

もう、明らかに浮気ですよね。

彼がその夜一線を超えたかはわかりませんが、それを匂わす文面に頭がおかしくなりそうでした。

苗字が変わった自分。こんな風に体型が変わって、夜もろくに眠れない自分。キャリアを一旦諦め、自分のアイディンティティを見失っている自分。

溜まっていた鬱憤が爆発し、一気に頭に血が上るのを感じました。

夫を問い詰めたかって?

はじめはそんなつもりなかったんですが…。証拠に、と思って文面を写真に残したりしているうちに、怒りが抑えられなくなってしまって。

シャワーから出てくるのを待たずに、思い切り怒鳴りつけてやりました。


怒り狂った妻の報復とは?


徹底的に夫の存在を無視する妻。その怒りが解けた理由とは


彼、相当怯えてましたね。

私は普段からあまり感情的にはならない方なんですけれど、あの時はホルモンバランスも不安定だし、とにかく彼の前で大声で叫んでやったんです。

それこそ、ご近所中に聞こえるんじゃないかってほどの大声で。

全部壊れてしまえ、もう何もかもどうでもいい、って叫びながら思っていました。

あの人、何か恐ろしいものを見るような目で私を見てました。こう、立ち尽くして。

それでも怒りが消えるわけでもなく、その後は事務的な会話以外、出産まで彼を徹底的に無視。落ち着いたら絶対に離婚しよう、と決意していました。

ただ、それが変わってきたのが、やはり出産後1ヶ月程経った頃でしょうか。




ウェスティンホテルの日本料理、『舞』で、両家の両親とお食い初めをしたんです。

私の両親もですが、特に夫の両親がとにかく子供が産まれたことを泣いて喜んでくれて。

目に入れても痛くないってこういうことなんだなぁというくらい、可愛がってくれるんです。

母親って、自分の子供を可愛がってくれる人には無条件で心を許してしまうんですよね。

「息子が忙しくて手伝えない分、私に何でも言って頂戴。」なんて、お義母さまもいつも連絡をくださる。

そんな気遣いで、夫への怒りも徐々に消えていきました。怒りが消えたというより、離婚する気がなくなった、という感じかしら。

産まれたばかりの時は、育児にも慣れず睡眠不足が続いて相変わらず不安定だったのも、まとまった睡眠がとれてきてだんだん精神的にも落ち着いてきましたね。

近隣の子育て施設に子供を連れて遊びに行ったり、ランチをするほど心を許せるお友達もできました。

そうして穏やかな日々が続くと、凄く冷静になるんです。

夫は相変わらず激務ですが、最近やっと子供の世話をすることを覚えたみたい。この子の写真をFacebookに頻繁にあげたりして、少しずつ父親らしくなってきました。

何より、この子を安全に、幸せに、穏やかに育てていくには彼の存在は必要不可欠ですから。

仕事も失い、苗字も変わり、家の中にいて何の評価もされない、専業主婦だった私。おまけに浮気までされて、自分の存在意義って何だろう?と悩んだ時期もありました。

でも、この子が私の存在意義なんです。

こんなにも私を求め、必要とし、愛してくれる存在はありません。

この子を中心に、初節句、初めてのお誕生日、クリスマスにお正月など、イベントごとも盛りだくさんで…。忙しくも充実しています。

夫から認められなくても、義両親も両親も、この子も、みんな母親である私を認めてくれる。

何より私自身が夫からの承認を必要としなくなったのが、今の穏やかな毎日の秘訣なのかもしれません。

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愛の夫、翔の結婚維持活動に迫る。

【これまでの結婚維持活動夫妻たち】
Vol.1:結婚維持活動:婚活よりも大変な、結婚生活の“維持”。その秘訣とは?
vol.2.子供を持ちたい夫 vs 持ちたくない妻。結婚維持活動の妥結点とは?