全米オープン出場の奇跡に望みをかけるフィル・ミケルソン(GettyImages)

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今週のフェデックス・セントジュード・クラシックの会場で注目を集めていたのは2人の40歳代のベテラン選手だった。
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1人は46歳のフィル・ミケルソン、もう一人は44歳のスチュワート・シンク。そのどちらもが、たとえ瞬間的であっても優勝の可能性を感じさせる首位に立ったことは、彼らにとっても、ファンにとっても、うれしいことだった。
ミケルソンが来たる全米オープンを欠場する可能性が大であることは、すでにご存じだと思う。長女アマンダの高校の卒業式と大会初日が重なるため、彼は卒業式を優先し、全米オープンはすでに欠場を覚悟している。
卒業式をカリフォルニアで見守ってからウィスコンシンへ移動するとなると、スタート時間には物理的に間に合わない。だが、彼はいまなお天候などの理由でスタート時間が遅くなり、間に合うという奇跡に望みを賭けている。
セントジュード・クラシックに出場したのも全米オープン出場を前提にしているからだ。メジャー前週には必ず試合に出て調子を上げていく。それがメジャー優勝を狙う上でのミケルソンのルーティーン。そこで優勝争いに絡んだことは、彼の調子が上がっていることを示している。それなのに全米オープンに出られないのは残念。だが、彼の選択なのだから尊重すべきであろう。
「僕がティタイムに間に合うためには4時間のディレイ(遅延)が必要。でも雷雨の確率は60%から20%に下がってしまった」複雑な表情でそう語ったミケルソンを見つめる人々の表情もやや複雑だった。
さて、全米オープン地区予選を突破して今大会にやってきたシンクの表情はとても明るかったが、彼を笑顔にしていたものはエリンヒルズへの切符だけではなかった。
昨年4月に愛妻リサが乳がんと診断され、シンクはこの大会を最後にツアーから離れ、闘病を開始するリサに寄り添おうとしていた。
当時のシンクとリサは恐怖や不安を胸いっぱいに抱えていたが、帰り際に大会側から渡されたスーツケースを宿舎で開いてみると、セントジュード小児病院に入院している子供たちからリサへ当てた激励の手紙がいっぱい入っていたという。
「幼い子供たちが、しかも私よりずっと容態の悪い子供たちが私を励ましてくれていた。それを見たら、クヨクヨしていられないと思えてきて、気合いを入れた」今年の大会には元気そうになったリサの姿があった。だからこそ、シンクは笑顔を輝かせていた。
ミケルソンもシンクも最後まで首位に居続けることはできなかったが、家族を想う強く温かい心があるからこそ、彼らは40歳代になっても強い選手でいられるのだと思う。
優勝を飾ったのは24歳のダニエル・バーガー。昨年大会に続く2連覇達成となった。2連覇と言えば、松山英樹のフェニックスオープン2連覇が思い浮かぶが、松山とバーガーは、まさに同年代で、偶然にも昨秋のHSBCチャンピオンズで松山が優勝した際、2位になったのがバーガーだった。
とはいえ、今大会を世界ランキング43位で迎えたバーガーは世界4位の松山からは大きく引き離されている。だが、この優勝でフェデックスカップランキングは36位から10位へ食い込み、彼は着実にトップクラスへにじり寄っている。
父親は米国のテニス界を率いるUSTAの男子コーチ。2012年の米五輪チームのコーチを務めたこともあり、そんな優秀なアスリートの血はバーガーにも受け継がれている。
今週は「ドライバーが突然壊れてしまったけど、予備のドライバーがあってくれて助かった。ゴルフはアップダウンの激しいゲームだけど、それを乗り越えるのは楽しい」と言ってのける冷静さ、強靭なメンタリティも持ち合わせている。
バーガーもまた松山のライバルとなり、世界のゴルフ界の勢力図は日々刻々と変化する。全米オープン優勝予想も混沌としているが、メジャー大会であれ、どんな試合であれ、強い心を抱いた選手が、戦いにおいても強いことだけは確かだ。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)
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