ロシアW杯のアジア地区最終予選で、グループB首位(勝ち点16)の日本代表は6月13日(火)にイラクと対戦します。イラクは同グループ5位(勝ち点4)ですが、昨年10月のホームでは、試合終了間際の山口蛍選手のゴールで2-1として勝利したものの、最後まで苦しめられました。

 今回のイラク戦の会場はイランのPASスタジアム。中立地での開催とはいえ、実質はアウェーです。難敵から勝ち点を獲得するためにも、チーム一丸となった戦いが求められる一戦で、私が注目しているのが、ブンデスリーガ1部のハンブルガーSV(HSV)所属の酒井高徳選手です。


4-0で勝利した、今年3月のタイ戦に先発出場した酒井 photo by Getty Images 酒井選手は、HSVが2部降格の危機にあった2016-2017シーズン途中からキャプテンを務め、チームを牽引してきました。そして、最終節でヴォルフスブルクに勝利して残留を決めた際には、試合後のピッチ上で、サポーターから「よくキャプテンを引き受けてくれた!」と感謝の言葉をかけられたそうです。残留を決めて涙を流していた酒井選手でしたが、「(チームが不調のときは)常にいいことばかりが聞こえてきたわけではなかったので……」と、苦しい時期を乗り越えてきた胸の内を明かしてくれました。


Photo by Yamamoto Raita なによりもキャプテンとして背負うプレッシャーは非常に大きかったといいます。HSVは、1963年から現在まで、ブンンデスリーガで唯一、2部に降格したことのない伝統あるクラブ。そのホームスタジアムには、1部に在籍している時間を刻み続けている時計があり、以前、酒井選手は『やべっちF.C.』の取材で「自分がキャプテンになって、(クラブの1部在籍の継続を)途切れさせることがあってはいけないという重圧は相当なものです」と話していました。

 シーズン中、ヒリヒリとした試合が続くなか、酒井選手がキャプテンとしてもっとも気を配ったのは、チームメイトとのコミュニケーションでした。

「チームが勝つためには、ベンチメンバーを含めた25人が一丸とならなければいけない」と考えた酒井選手は、とりわけ、調子を落としている選手や、出場機会がなく不満を抱えていそうな選手に積極的に声をかけていたそうです。

 自分のプレーやコンディションの問題、さらにはキャプテンとしての重責に悩むことも当然あったそうですが、「そのことを口にすると負のオーラが出てしまって、チームによくない影響が出そうでしたから」と、ぐっと我慢。自分が何をすべきかを考え、チームのことを最優先していたのです。

 酒井選手はキャプテンになる前から、もともと周囲への気づかいを大切にしていたそうです。また、チームメイトから「落ち着いている」と言われることが多く、今シーズンのキャプテンとしての経験で、さらに動じることなく平常心でプレーすることができるようになったといいます。

 残留争いが厳しい状況になるにつれて、チームが動揺している局面でも「自分はその雰囲気に飲まれず、俯瞰(ふかん)して考えるようになった。90分を通してゲームを見られるようになり、前半だけに左右されず、後半も含めた1試合を通してのプレーを考え、メンタルが鍛えられました」と振り返っていました。この厳しい残留争いで「絶対に勝たなくてはいけない試合」を数多く経験したことが、必ず今回の最終予選でも生きてくるのではないでしょうか。

 そして、HSVでキャプテンを経験したからこそ、酒井選手は日本代表が勝つために個々の選手が何をすればいいのか、チーム全体としてどうすればいいのかを考えて行動できるキーマンだと思います。

 また、酒井選手はフィジカル面でも進化を遂げています。それを証明する身体の一部が、アスリートにとって「第二の心臓」とも言われるふくらはぎ。サッカー応援番組『たけうっちF.C.』で太さを測らせてもらったところ、40.2cmでした! これは、酒井選手と同じ身長176cmの日本人男性の平均を約5cmほど上回っているそうです。 

 ドイツに渡った当初は、粘り気があるピッチと毛足の長い芝生に足をとられたり、強靱なフィジカルの外国人選手のプレッシャーに耐えられず、転んでしまうこともあったといいます。それでも、試合を重ねるごとにそうしたこともなくなっていき、酒井選手自身、「鍛えられたのかな」と成長を実感していました。


Photo by Yamamoto Raita

 酒井選手は、左右両サイドバックのほか、ボランチとして出場することもあるユーティリティープレーヤー。もともと右利きですが、「右足よりも左足のほうがクロスを上げやすい」と話すように、現在は両利き。左右両方で質の高いボールを蹴れることが、HSVで複数のポジションをこなす上での強みになっていますし、それは日本代表でも同じだと思います。

 酒井選手は、2010年の南アフリカW杯には香川真司選手らと共にサポートメンバーとして日本代表チームに帯同し、2012年のロンドン五輪に出場すると、2014年ブラジルW杯では追加招集で代表メンバー入り。出場機会はなかったものの、紅白戦では、仮想コートジボワール、仮想ギリシャとして先発選手たちの練習相手になり、チームに貢献しました。

 献身的にサポート役に徹していた酒井選手ですが、日本のグループリーグ敗退が決まった3戦目のコロンビア戦後、「悔しさ」がこみ上げてきたといいます。

 ブラジルW杯では、日本の右SBは内田篤人選手でしたが、このときの内田選手はケガのために右ヒザをテーピングでぐるぐる巻きにしている状態。「そんな故障を抱えていた内田選手と比べても、自分は監督が起用しようと考える選手ではなかったんだ……」と思うと、悔しくて涙が溢れたそうです。

 大会後、同じく出場機会に恵まれなかった”ロンドン五輪世代”の清武弘嗣選手や酒井宏樹選手らと、「次は俺たちの番だ」という想いを確かめ合った酒井高徳選手。そんな決意があったからこそ、「次のロシアW杯にかける気持ちはとても強い」と語ってくれました。

 負けられない戦いが続く最終予選で、酒井選手の活躍に期待しています! そして、注目のイラク戦、日本代表がW杯出場権獲得にさらに前進できるように全力で応援しましょう!

■ロシア ワールドカップ アジア地区最終予選、勝負のアウェー決戦
イラク × 日本
6月13日(火)よる9時〜放送
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