乃木坂46 3期生に感じる“可能性” 単独公演がもたらした大きな意味とは

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 乃木坂46の3期生が渋谷・AiiA 2.5 Theater Tokyoで5月9日〜14日にかけて行なった乃木坂46の『三期生単独ライブ』は、選抜ともアンダーとも違った12人の立ち位置を改めて異端たらしめるものとなった。

 筆者は以前、オーディションと『お見立て会』を見たうえで、この12人について「“新たな坂の上り方”を示す」のではないかと書いた(参考:乃木坂46の3期生は“新たな坂の上り方”を示す 『お見立て会』に感じたこと)。当時はその予感を裏付ける具体的な物事があったわけではないが、『三期生単独ライブ』はそれを確信するには十分すぎるものとなった。今回は11日と千秋楽である14日を見たうえで感じた、いくつかの可能性について述べたい。

 先日東京体育館公演を終えたアンダーメンバーは、自分たちのオリジナル曲をメインとし、選抜曲をあくまでイレギュラーの存在としながらセットリストに独自性を打ち出していた。3期生としてオリジナル曲が2つしかない彼女たちは、先輩たちの楽曲をただのコピーに見えないよう、自分たちらしく演じることが求められる。この公演では本編だけで21曲が披露されたが、特に目を引いたのは「せっかちなかたつむり」や「他の星から」「あらかじめ語られるロマンス」「偶然を言い訳にして」といったユニット曲を3期生バージョンとしてパフォーマンスしたことだ。

 これらの楽曲は「どうマネしても、同じことはできないから」(大薗桃子)といったメンバーによる決意表明のVTRとともに披露され、どれもがオリジナルとは違う、フレッシュな印象を与えてくれた。個人的なハイライトは「せっかちなかたつむり」。キュートさと艶っぽさを併せ持つ与田祐希による、オリジナルメンバー・西野七瀬の持つ影のある声を継承したボーカルが印象的だった。

 また、同公演の肝というべき演出は「ダンスパート」と「歌パート」の存在だろう。ダンストラックに合わせ、ただ複雑なものではなく“止めてまた動く”ことに重きを置いた振り付けで、強弱のある表現に挑戦したり、直後にグループ最難易度といわれるダンスの「インフルエンサー」を持ってくる攻めの姿勢に驚かされるばかり。中盤の歌パートでは、ギターとパーカッションと鍵盤をバックに「悲しみの忘れ方」「何度目の青空か?」「きっかけ」「君の名は希望」を披露。グループ随一の歌唱力を持つ久保史織里は、「何度目の青空か?」でのソロ歌唱をはじめ、このパートで圧倒的な存在感を見せつけた。

 ダンスパートでも歌パートでも、一つの事柄にフォーカスすると、個々の優劣はどうしても目立ってしまう。演出によっては、それを誤魔化すことだってできたはずだが、現状をありのままに見せてくれた。「観客を楽しませながらメンバーを育てる」という演出の意図だったのかは不明だが、この公演・パートは今後の彼女たちにとって大きな意味を持つだろう。

 歌パートでは、「君の名は希望」で、大薗桃子がピアノ伴奏を担当したことも注目を浴びた。乃木坂46において、ピアノ伴奏といえば音大にも通う生田絵梨花の名前が真っ先に挙がる。そんな先輩の影もちらつくが、ピアノというのは弾き手次第で音色が全く変化することを、大園の演奏で改めて思い知らされた。生田がおしとやかに楽曲の切ない雰囲気を強めるプレイだとすれば、大園の伴奏は純粋に音と遊ぶような、軽やかなテンポが印象的だった。先述したお見立て会の記事で、大園の異端さについて書いたが、今回の公演を見てもなお、彼女の可能性は底が知れない。

 千秋楽の公演では、そんな大園が喉を潰してしまう場面も見受けられた。初めてのロングランに、身体もまだ慣れていなかったのだろう。「きっかけ」のAメロ頭、掠れた声を絞り出すように歌う彼女の姿を受けて、もう一段階ギアが入ったようにほかの11人の雰囲気は一変。鳥肌ものの歌唱を見せてくれたことも記しておきたい。

 12人それぞれの持つポテンシャルについて書き記すことは難しいが、全公演を通して活躍したメンバーといえば、MCを務めた梅澤美波と伊藤理々杏だろう。梅澤はその大人びた雰囲気と言動で場を速やかに進行してみせれば、伊藤は元気一杯ながら的確に他のメンバーを扇動する。伊藤に関しては、オーディション時のSHOWROOMからその適性があるのではないかと感じていたが、ここまで早い段階で開花すると末恐ろしさすら覚える。

 最後に、この日初披露された新曲「思い出ファースト」についても触れたい。この曲はほかの乃木坂46楽曲と比較してもとりわけ明るいもので、AKB48の夏曲と言われてもおかしくないくらい、ギターサウンドが目立つ王道グループアイドルソングだ。選抜表題曲でこれまで披露されてきた夏曲よりもとりわけ明るいこの曲をもって、3期生は彼女たちにしか出せない、新たな乃木坂46のオリジナリティを会得したといえる。(中村拓海)