韓国の三陟市内の稽古場で練習するおばあちゃんチアリーディングクラブ「チアマミー」のメンバーたち(2017年3月3日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】赤と白のユニホームを着たチアリーダー数十人が、稽古場に流れるKポップに合わせて、白いポンポンを振りながら軽やかに踊っている。メンバーは皆、年配の女性たちだ。

 2時間の練習も半ばを過ぎたあたり。高齢チアのほとんどは息を切らし、汗まみれになっている。だが、膝が悪くても、腰痛持ちであっても、それを言い訳にして休もうとはしない。チアのおかげで、健康で若々しくいられている──。皆そう考えているのだ。

「ここに来ているので、薬も飲まなくて済んでいるんです。見た目は年寄りでも、心は若いままなんですよ」。82歳のオ・グムニュ(Oh Geum-Nyu)さんはそう語る。

 オさんは韓国東海岸・三陟(Samcheok)市を拠点とするチアリーディングクラブ「チアマミー(Cheer Mommy)」のメンバーの一人。チーム30人の平均年齢は75歳というから、その中でも年長のほうだ。

 アジア4位の経済規模を持つ韓国では、平均寿命が急速に伸びている。英医学誌ランセット(The Lancet)に掲載された論文によれば、2030年生まれの女性の平均寿命は90歳と、世界最長になる見通しだ。

■家父長制の束縛

 こうした長寿の裏には社会的要因もあるとの見方がある。ソウル(Seoul)にある梨花女子大(Ewha Women's University)のチョン・スンドル(Chung Soon-Dool)教授(社会福祉学)は、韓国の高齢女性について「気楽な集まりに参加したり、人間関係を新しく作ったりするのが大好きなことが、エネルギーの源になっているのではないか」と推測する。

 60代以上の韓国人女性では、「女は家にいて子どもを育てるもの」と期待される極めて家父長的な社会に生きてきた人が多い。そうした女性の中には、家族の面倒を見る役回りを引退してようやく、自分で選んだことを追求する人も出てきている。

「7人いる孫たちの養育がひと段落ついた頃に、友だちからこの場所のことを教えてもらったんです」と話すチアマミーのメンバー、アン・ヨンジャ(Ahn Young-Ja)さん(65)もそんな一人だ。

■出生率は世界最低

 英インペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)の研究によると、韓国人は女性だけでなく男性も世界で最も長寿になると予想されている。高齢者人口の増加に対応して、韓国政府もコミュニティーセンターの増設や高齢者向けレジャー活動の推進など、さまざまな福祉プログラムを打ち出している。

 とはいえ、こうした高齢者対策をめぐっては、コストが国に重くのしかかってくるとの見方もある。背景には、出生率が世界最低の水準にある韓国に迫っている人口動態上の危機がある。

 韓国統計庁(Statistics Korea)が昨年12月に公表した報告書によると、総人口5000万人の韓国で65歳以上の高齢者は2015年時点でおよそ650万人。さらに向こう10年で、5人に1人が高齢者になると予想されている。

■あきらめない心

 チアマミーも、もともとは地元当局のレジャープログラムの一環で結成された。しかし今では国内各地を転戦し、全国大会で数十歳年下のライバルと競い合うまでになった。

 最も若いメンバーが63歳のチアマミーの振り付けには、前方宙返りや後方宙返りといったダイナミックな技は取り入られておらず、メンバーが振り付けを覚えるには一般的な場合の2倍の時間がかかる。それでも講師のユン・ポクジャ(Yoon Bok-Ja)さんは「彼女たちは亀のようにのろいけれど、完璧にできるようになるまであきらめない」と舌を巻く。

 元気いっぱいのチアマミーのメンバーたちは急いで次のユニホームに着替える。今度はグラフィティー柄のジャージーに白のトレパン、黒の野球帽といういでたちだ。曲は「江南スタイル(Gangnam Style)」が大ヒットとなったPsy(サイ)の最新曲「Daddy」。おばあちゃんたちは声を張り上げる──。「ヒップホップ! ユース! 100歳まで!」
【翻訳編集】AFPBB News