ソニー、2017映像制作機器 新商品内見会を開催。インスタントHDRワークフローや各種新製品のデモを公開

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ソニーは、6月7日〜8日、東京品川のソニー本社で2017映像制作機器 新商品内見会を開催した。今年4月にラスベガスで開催されたNAB2017に出展した機材やシステムを中心に、ソニーの映像制作機器を一挙に展示するというイベントだ。広い会議室に20以上のブースが設けて展示しており、ソニー単独の展示会もかかわらず見所の多いイベントとなっていた。カメラやモニターの展示コーナーを中心に気になった機材をピックアップして紹介しよう。

Hybrid Log-Gamma収録のカメラを使ったインスタントHDRワークフローのデモを公開

ラージセンサーカムコーダーブースのは、「FS7 II」と「PXW-FS5」の展示が注目となっていた。FS7 IIの特長は、被写界深度を自在にコントロールできるソニー独自の電子式可変NDフィルターの搭載。FS7 IIの隣に電子式可変NDフィルター再現装置を展示し、1/4から1/128までの効果を視覚的に確認できるようになっていた。電子式可変NDフィルターは、液晶の技術を使って電気的に液晶濃度を変えながら透過率を変える技術で、カメラに内蔵しているのはソニーだけとのこと。

ソニー独自の電子式可変NDフィルターを搭載した「FS7 II」電子式可変NDフィルターの効果を視覚的に体験できるNDフィルター再現装置を展示

4Kスーパー35mmCMOSセンサー搭載のPXW-FS5は、7月の無償のソフトウェアアップデートで「PXW-Z150」と共にHybrid Log-Gamma収録に対応。Hybrid Log-Gamma収録対応のカメラはPXW-Z150とPXW-FS5が初めてとのこと。無償のソフトウェアアップデートとPXW-FS5用1080p120fps無制限アップグレードライセンス「CBKZ-FS5HFR」の詳しい内容は以下の通り。

■PXW-Z150 Version 2.0 7月リリース予定(無償)

  • Hybrid Log-Gamma(HLG)搭載
    HGLでの収録が可能となり、HDRに対応
  • QoSストリーミングに対応
    より安定したライブストリーミングが可能
  • タリー表示
    別売りのコンパクトライブスイッチャーMCX-500、リモートコマンダーRM-30BPとの組み合わせで可能
  • ゼブラ機能がアップグレード
    2種類の設定に対応。さらにレベル調整が1%刻みで可能

■PXW-FS5 Version 4.0 7月リリース予定(無償)

  • Hybrid Log-Gamma(HLG)搭載
    HGLでの収録が可能となり、HDRに対応
  • S-Log2/S-log3撮影時の基準ISO感度をISO2000に変更
    ISO3200→ISO2000に
  • 1080p/120fps撮影時が時間無制限で可能に(CBKZ-FS5HFR適応時)

■PXW-FS5用1080p120fps無制限アップグレードライセンス「CBKZ-FS5HFR」
2017年7月末発売予定

希望小売価格(予定) 税抜65,000円
FS5に適応することで、以下の撮影が時間無制限で可能に
XAVC HD 1080収録時
120fps収録 @60p(50Mbps)/30p(25Mbps)/24p(25Mbps)
100fps収録 @50p(50Mbps)/25p(25Mbps)

バージョンアップでHybrid Log-Gammaの収録に対応予定の「PXW-FS5」

短時間でHDR映像制作を実現するインスタントHDRワークフローも見逃せない展示だった。インスタントHDRとは、最初からHybrid Log-Gammaで撮って必要に応じてカット編集を行い、HDRのコンテンツを短時間で作れるというものだ。

これまでソニーが推奨するHDRのワークフローというのは、S-Log3と呼ばれる中間フォーマットで撮影し、撮影後にグレーディングでガンマを変えたり色を変えることで実現していた。そのグレーディングは時間も手間のかかる作業であったが、インスタントHDRによりより短時間でHDRのコンテンツを作れるようになるとアピールをしていた。

グレーディングの工程を省略したインスタントHDRワークフロー。カメラをHybrid Log-Gammaに対応させることで可能となる

インスタントHDRのデモは2つ行われていた。1つは、7月にリリース予定のベータ版のファームウェアを導入したPXW-Z150を使ったもので、インテリアをHybrid Log-Gammaで収録し、そのままHDRモニタで表示するというもの。もう1つは、ベータ版のファームウェアを導入したPXW-FS5を使って事前に野外の風景をHybrid Log-Gammaで撮影し、そのコンテンツをAdobe Premiere Proでカット編集だけしてつなぎ合わせた映像を公開していた。

「インスタントHDRのグレーディングなしでHDRってどうなの?」と半信半疑の人も多いと思う。このデモではHLGで撮ってグレーディングなしの映像を公開していたわけだが、モニターの映像を見る限り十分なクオリティを実現しているといえるのではないだろうか。

こちらはPXW-Z150を使ったインスタントHDRのデモ。Hybrid Log-Gammaのカメラの映像をそのままHDRモニタに表示していたPXW-Z150からの出力されたモニターの映像PXW-FS5を使って事前にHybrid Log-Gammaで撮影したインスタントHDRのデモHybrid Log-Gammaで収録した素材をAdobe Premiere Proで編集したHDRコンテンツが公開されていた

中継車にHDRのマスモニというニーズに応える17インチ有機ELマスターモニター「BVM-E171」

業務用・放送用モニターブースでは、有機ELマスターモニターの展示が注目となっていた。30インチの「BVM-X300」と55インチ「PVM-X550」の既存モデルと、新製品の17インチ有機ELマスターモニター「BVM-E171」の展示が行われていた。3機種ともパネルは有機ELでHDRにも対応しているというラインナップだ。

BVM-X300は、4K制作の制作現場で業界標準と言っていいほどお馴染みの定番のモデル。PVM-X550は、55インチの最大サイズモデルで、グレーディングノイズなどをより精密に確認する際に30インチよりもより大きなサイズで確認をしたいという現場の要望に応えたモデル。

目を引いたのは、PVM-X550の隣にピーク輝度を400カンデラから650カンデラ相当に高めた試作機を展示していたことだ。HDRの表示でより高輝度の表示が求められるニーズに応えようと実現した試作機で商品化については未定とのこと。

業界標準のマスモニと言われる30インチの「BVM-X300」55インチの最大サイズモデルの「PVM-X550」。この隣で550カンデラ相当の試作機が稼働していたが、写真撮影は禁止とのことだった

有機ELのラインナップの中でも特に目についたのは今年1月に発売をした17インチ有機ELマスターモニターBVM-E171。有機ELのHDR対応モニターでありながら、中継車のラックマウントに対応したり、持ち運びも可能でオンセットでも使うこともできる。これは業界初とのことだ。

また、Hybrid Log-Gammaの収録のカメラの登場によって、今後はBVM-E171のようなコンパクトなマスモニをロケ現場で直接つないで確認をするシーンも増えることも予想されるだろう。

BVM-E171で特に強調していたのが、パネルはフルHDだが4Kの制作環境でもきちんと使えるということだ。4K信号の入力は、2SI(2サンプル・インターリーブ方式)の4本のケーブルのうち1本を入力してモニタリング可能で、2SIのレベルAやレベルBをサポート。BVM-X300と同じエンジンを搭載しており、色域はBT.709だけでなくBT.2020やHDRにも対応する。

17インチ有機ELマスターモニター「BVM-E171」。7月にリリース予定のオプションHDRライセンス「BVML-HE171」を導入することで、HDRに対応する形になる

次期バージョンで多数の機能が追加されるスイッチャー「MCX-500」

小規模イベントの映像送出や収録を手軽に行えるスイッチャー「MCX-500」

「MCX-500」は、次期バージョンで対応する機能を紹介していた。現行のバージョンでは、局ロゴを表示するロゴボタンは機能しなかったが、次期バージョンでは機能するようになる。ロゴは2種類登録可能で、320×320でPNG形式に対応し、SDカードに記録して本体に読み込むことができる。

従来からロゴボタンは存在していたものの押しても機能はしないし、光ることもかった。次期バージョンで機能するようになるロゴボタンを押すと、局ロゴが表示されるロゴは2種類登録することが可能

MCX-500にはフェーダーレバーを搭載していないが、次期バージョンではタッチパネル上に「タッチパネルマニュアルトランジションレバー」と呼ばれるフェーダーレバーが追加される。反応したときはオレンジに色が変わって、途中でも止めることもできる。また、マルチビューの画面でアイリスやフォーカスなどの画を調整したいときに画面が小さすぎて調整しずらかったが、Bバスの長押しで全画面に表示されるように改善される。

マニュアルによるトランジション操作が可能になる「タッチパネルマニュアルトランジションレバー」が追加されるBバスの長押しで全画面表示になる。アイリスやフォーカスが調整しやすくなる

ストリーミングはUstreamのみからYouTube LiveやFacebookライブに対応する。また、SDカードにプログラムの映像を録画する際の記録フォーマットはAVCHDのみだったが、XAVC Sも選べるよううになる。

最大5台までのカメラをコントロールできるPCソフトウェア「HZC-RCP5」

最大5台のカメラをPCからコントロールできる「HZC-RCP5」(左)とリモートコントロールパネル「RCP-1501」(右)

カメラリモートコントロールソフトウェアのブースでは、「HZC-RCP5」を展示。リモートコントロールパネル「RCP-1501」のパネル機能をPC上で再現したソフトウェアで、HSCシリーズとHXCシリーズのカメラに対応する。HZC-RCP5を使えば、1番のカメラを選択後にそのカメラのゲインやアイリスをコントロールしたり、2番のカメラに切り替えてコントロールするということをPC上から可能になる。ペイントメニューの調整も細かく対応しており、ホワイト、ブラック、シャッターのコントロールを5台まで同時に可能となる。

「HZC-RCP5」のコントロール画面

また、「リンケージ機能」と呼ばれる新機能を搭載し、1台のRCP-1501をHZC-RCP5に接続されている5台のカメラのいずれかにアサインすることができるようになった。PCからカメラをコントロールするのではなく、実際にRCP-1501を手にとってコントールしたいユーザーには待望の機能であろう。

HZC-RCP5のターゲットとなるのはやはりスタジオユースとのこと。従来はカメラが5台であればRCP-1501も5台購入しなければいけなかったが、HZC-RCP5の導入で1台のRCP-1501で5台のカメラをコントロールできるようになる。また、イベントなどで複数のカメラをカメラをHZC-RCP5でコントロールするのに最適と提案していた。

3型液晶タッチパネルを搭載したリモートコントロールパネル「RCP-1501」

HZC-RCP5に対応しているHDポータブルカメラの「HXC-FB75」も注目のカメラだ。2016年の夏に発売したカメラで、2/3型3CMOSセンサーの性能が高く、高感度でF12を実現しているのが特長。競合メーカーのカメラはF11やF10ぐらいが一般的で、同価格帯のカメラの中でも明るいカメラとなっている。

2/3型3CMOSセンサーを搭載したHDポータブルカメラ「HXC-FB75」

また、標準で光電気複合コネクターを採用し、オプションなしでファイバーを刺すことができる。光電気複合ケーブル接続時で最長350m、シングルモード光ファイバーケーブルで接続時は10kmまで伸ばすことができる。HXC-FB75はソニーのシステムカメラで安価な部類でローエンドだが、ソフトウェア的にはハイエンドと同じもので、かつ機能は高いとアピールをしていた。

光電気複合コネクターを1基搭載

映像収録に最適化したポータブルディスクや2.5インチSSDを展示

業務用で映像収録用のポータブルディスクの展示も行われていた。1TBハードディスクの「PSZ-HC1T」や2TBハードディスクの「PSZ-HC2T」、480GBのSSDを搭載した「PSZ-SC48」、950GBのSSDを搭載した「PSZ-SC96」がラインナップされており、PSZ-SC96のみ9月に発売、ほかのモデルは7月に発売予定となっている。

特長は、デュアルUSBインターフェイスの搭載で、USB 3.0 Type-AとUSB Type-Cを搭載。USB 3.0 Type-Aに関してはケーブルを内臓している。特に業務用として対衝撃性や防塵、防滴を考慮されており、ロケで不意に落としてしまった場合でもしっかりと衝撃吸収ができるシリコンカバー素材で全体を覆っている。また、防塵、防滴への対応として端子にカバーが設けられている。ケースに収納して受け渡しができるようにケーブルとセットの専用ハードケースが用意されており、このケースはユーザーから好評だという。

PSZ-HC1Tの外見。耐衝撃性を考慮してシリコンカバーを採用USBケーブルは本体に収納できる。インターフェイス端子をゴムカバーで蓋ができる構造になっているUSB Type-Cのインターフェイスを搭載専用ハードケースが用意されており、輸送や受け渡しの際の衝撃からドライブを守れるようになっている

ソニーが業務用の映像制作機材向けに特化した記録メディア用として設計、開発をした2.5インチのSSD「Gシリーズ」も展示されていた。960GBのSV-GS96と480GBのSV-GS48の2種類がラインナップされている。インターフェイスはSATAで、ノートパソコンに搭載されているハードディスクと同じものと言えばわかりやすいだろう。

ATOMOSの「SHOGUN INFERNO」やBlackmagic Designの「HyperDeck Shuttle」などに使える2.5インチSSDとしてリリースされているものだ。ATOMOSのWebページには同社のレコーダーの動作確認済みのメディアが公開されているが、Gシリーズも対応として掲載されている。

気になるのは、どのような技術を付加して2.5インチのSSDを業務用の映像記録メディアを実現しているかだ。記録メディアは連続して記録を続けると断片化が発生によって書き込み速度の低下が発生する。この問題に対してGシリーズでは、ガベージコレクション機能と呼ばれるメモリー管理機能を搭載し、常時高速記録性能を維持した状態で書き込みができるように工夫が施されており、スピードの低下を防いで、映像記録中のコマ落ちを防止している。

また、SSDは書き換え寿命が存在しているが、Gシリーズは書き換え回数の長寿用化を実現している。映像収録用メディアは何度も書き換えをするため寿命を考慮しなければならないが、Gシリーズは最大2,400テラバイトの書き込みが可能。週に5回の頻度で全領域を書換えた場合で約10年間の使用できる仕様を備えている。このほかにも、端子についてはSATA規格標準の約6倍にあたる3,000回ものもの耐久性を持たせたコネクターを採用している。

2.5インチの業務用のSSDを映像記録メディアの960GBの「SV-GS96」と480GBの「SV-GS48」独自のコントローラーを搭載することにより、高速安定性書き込みを実現する独自のガベージコレクション機能や長寿命化を実現しているSATA規格標準の6倍にあたる3,000回の挿抜試験をクリアする高耐久コネクターを採用

4K HDR/HD SDR同時制作をシンプルに実現する「SR Live for HDRワークフロー」

「SR Live for HDRワークフロー」のコーナーでは、4KのHDRとHDのSDRをどのように同時に作っていくか?という提案が行われていた。今後4Kの放送が開始すると、4KのHDRの番組制作と同時にHDの番組も作らなければいけなくなるだろう。そこで提案をしていたのが、HDRの広いカラーボリュームでコンテンツを制作して、最終段で4Kの放送のフォーマットに変換をしたり、HDに変えるという提案だ。

このワークフローで核となるのがHDRプロダクションコンバーターユニット「HDRC-4000」。製作用のS-Log3というフォーマットから放送用のHLGへの変換を行なったり、解像度を4KからHDに変換したりするユニットだ。素材は4K HDRで広く作っておいて、落とすときに「HDRC-4000」で変換するという工程で行うというわけだ。

一番上がHDRプロダクションコンバーターユニット「HDRC-4000」

下図の「SR Live for HDR概念図」で説明をすると、左の「入力/素材」の工程の青の部分がS-Log3のHDRで信号を全部まとめたもの。それ以外の昔のVTRのカメラの素材であれば、アップコンをしたりHDR変換をしたりして、1つのフォーマットまとめる。図の中央の「HDR制作」の工程で映像信号処理を行い、右の「配信」の途中で、最終の本線を4K HDR用のHLGやHDのSDRに変換をする。この変換を行うのがHDRC-4000であり、システムを1つにまとめているという。

ソニーの提案する4K HDRライブ制作システム

有線の電源供給によりバッテリー交換なしで飛び続けられるドローンを展示

エアロセンスのドローン。すべて自社開発によって実現している

ソニー子会社でドローン含めたシステムを提供するエアロセンス社のドローンが展示されていた。100mmの長さを有する有線を使って地上から電源を常時送り続けられる仕組みになっており、バッテリー交換が必要ないというのが特長だ。電源のケーブルのほかに非圧縮の映像を送るための光ファイバーのケーブルも一緒になっており、映像もケーブルで送信されるようになっている。通常のドローンから送信されるライブの映像は、無線で圧縮をした状態の悪い映像だったり無線が切れてしまって乱れた映像になることがあるが、ケーブルを使うことでこのようなトラブルを防いでいる。また、無線で高画質な映像を送信するのに免許の申請が必要となるが、有線のために申請をせずに使用ができるというのもメリットとなっている。

展示したドローンは参考出展の状態でまだ実用されていないが、サッカーのスタジアム中継やマラソン中継、監視カメラとしてイベントを俯瞰して撮るのに使えないか?という要望を聞いているという。

電源と光ファイバーのケーブルが伸びる状態で飛ぶようになっている