炭素繊維のイメージ。

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 日本経済新聞・証券部の竹内弘文氏が電子版で『東レが挑む2つの「1000の壁」』と題する記事を配信している。内容を要約すると次の様な具合になる。

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 <2018年3月期の最終利益目標とし1000億円を見込んでいる。4期連続の過去最高更新。だが薄氷の最終増益見通し。その最大の要因は炭素繊維部門の営業利益を前期並みのゼロ成長と想定しているためだ>

 <もう一つの1000の壁は株価1000円。何回となく挑み瞬間上回ることはあっても、必ずはじき返されてしまう>

 周知の通りいまや「東レ=炭素繊維」のイメージが強いが、実は炭素繊維は苦戦している。最大の取引先とし意識している米ボーイング社(B787)には700機近い分の炭素繊維の発注残が見込まれているが、生産は相変わらず月12機。東レとしては切歯扼腕。炭素繊維急拡大の契機に対し指を銜えながら見ている日々。

 炭素繊維分野の足踏みが、株価1000円大台の手枷足枷となっていると捉えられる。

 そうした現状を「東レ中興の祖」と称された故前田勝之助氏(2013年逝去、東レ元名誉会長・会長・社長)はあの世でどう見ているのだろうか。そもそも炭素繊維開発の入り口を作った御仁でもあった。開発部時代の若い頃「アクリル繊維の開発」を命じられた。その折りに衣料用以外の用途として「炭素繊維がある」ことに気づき、20名程の仲間と独自に研究開発へ取り組んだ。その理由を後に「レーヨンに比べアクリルの方が炭素繊維の密度が高い」と聞かされた。その後、詳細は省くが東レが炭素繊維開発に本腰を入れるまでには紆余曲折がある。

 東レが旭化成、そして帝人にまで抜かれ業界第3位に陥落したのは1983年3月期。4月に前田氏は「上席役員14人抜き」で社長の座に就いた。「大企業病」と「急性肺炎」を患っていると診断しどうやって首位の座を奪還したのかは、是非とも別の機会に記したい。ただ、このことだけは言い及んでおきたい。「大企業病」の処方箋として「中間管理職が曲がらなければ企業は安泰」と考え部課長用に自らの言葉で『五箇条の御誓文』を書き「出社前、勤務中、帰宅後必ず読むべし」と配布した。

 「現実直視」「各論主義」「競争原理の導入」「画一性の排除」「現場主義」からなっている御誓文の「競争原理の導入」の項には、こう記されている。「自分や部下に、能力以上の目標を具体的、かつ定量的に設定しているか!? 目標は昨年比、他社比を一つの基準として、より競争力を促す目標になっているか!?」。

 炭素繊維の足踏みは、ボーイングという相手があってのこと。しかし、東レはいま全社を挙げて「競争原理の導入」を意識すべきと考えるが、如何か。