(写真:ゲッティ)

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5月31日に行なわれたAFCチャンピオンズリーグでの浦和レッズVS済州ユナイテッド戦における乱闘騒ぎに関して、AFCから処分が下されました。

試合中にイエローカード2枚で退場となり、試合後の乱闘に加わったチョ・ヨンヒョンに公式戦6ヶ月の出場停止と2万ドルの罰金。阿部勇樹にヒジ打ちを放って退場となったペク・ドンギュに公式戦3ヶ月の出場停止と1万5000ドルの罰金。試合後に浦和・槙野選手を追いまわしたクォン・ハンジンにAFC主催試合2試合の出場停止と1000ドルの罰金。済州ユナイテッドには、試合の評価を貶めたとして4万ドルの罰金。そして、試合後の騒動に関わったこと、試合の価値を貶めたことによって浦和レッズにも2万ドルの罰金が科されました。

この処分に対して、いわゆる「被害者」である浦和レッズはクラブ公式サイトで声明を発表し、「裁定内容について詳細を確認する」としています。抗議ではないにしても、そのまま受け入れられるような処分ではないということでしょう。ヒジ打ちされて、追いまわされて何故か200万円もの罰金を取られるのでは、納得がいかないのも当然です。

ただ、これがAFCの姿勢であるということは学ばないといけないでしょう。

今回の処分で見て取れるのは「原因」を追求することはせずに、「行為」に対して処分を下しているということです。どちらが乱闘の原因を作ったのか、何が理由で乱闘が始まったのかということではなく、「ヒジ打ち」やら「追い回し」やら「乱闘をした」という行為に対しての処分を下しています。

AFCは法や秩序、あるいは「真実」を司る番人ではなく、主催するサッカーの試合の安全な運営を守ることが仕事です。「どちらが悪い」を決める必要はなく、ただただ「乱闘は迷惑だから止めろ」と言っているわけです。加害者とか被害者とか、暴行とか正当防衛とかではなく、結果的に乱闘になってしまったら、是非は問わずに処分する。それはある意味で喧嘩両成敗であり、ある意味で面倒事を避ける姿勢とも言えます。

たとえばこれが裁判であれば、どちらが悪いを決めるまでに膨大な手間と時間がかかるでしょう。どんな無茶な主張でも、裁判で否定するのは簡単なことではありません。AFCにはそうした手間と時間をかけて「真実」を追求する必要などないのです。「真実」や「正しさ」の問題ではなく、結果的に乱闘になるようなら何をやったかは知らないが迷惑なので処分する。それがAFCにとっては一番効率がよく、必要十分なのです。

「にらまれたら踵を返してひたすら逃げる」

これだけが同様の問題への唯一の解決策です。にらみ返したり、言い返したりせず、まっすぐ逃げる。済州ユナイテッド側から騒動の原因に挙げられた浦和・槙野選手は、まさにこの対応が功を奏した格好。追いまわしたクォン・ハンジン選手には処分があっても、追いまわされた槙野選手には処分がないのですから、「逃走」は「乱闘」扱いにはならないのです。「三十六計逃げるに如かず」とはよく言ったもの。揉め事からは逃げるのが一番です。

(文=フモフモ編集長 http://blog.livedoor.jp/vitaminw/)