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毎日発表され、ネットニュースを騒がせるテレビ番組の「視聴率」。自分のお気に入りの番組がどれくらい見られているのか、気になるものだが、そんな中でこんな疑問がマイナビニュース編集部に届いた。

「テレビの視聴率って何で大事なの? テレビの視聴率はどうやって計測されているのか詳しく知りたい」

確かに、なぜこんなに大々的に発表されるのか、その理由は判然とせず、実際に計測されているところも見たことがない。そこで、視聴率調査を行うビデオリサーチ経営管理局局次長兼コーポレートコミュニケーション室長の中原潤一郎氏と、同室副参事の石川恭子氏に、話を聞いた。

――まず、視聴率調査というのはどのように行われているのですか?

中原:一般的に世間に出ているのは「世帯視聴率」といわれるもので、全国27地区それぞれで調査しています。なので視聴率は地区ごとにあります。サンプル数は調査地区によって異なるのですが、関東地区では900世帯、関西地区と名古屋地区はそれぞれ600世帯です。対象となった世帯に専用の測定器を設置し、早朝5時から翌朝5時まで24時間の視聴データを収集します。それをデータセンターにインターネットを通して送り、番組視聴率として集計されます。毎朝、日報として契約している放送局や広告会社にサービスしています。

――関東地区は約1800万世帯ありますが、調査対象はそのうちたった900世帯なんですね!

石川:そうです。視聴率は統計学の理論に基づいたサンプリング調査で実施しています。病院や、事務所、寮、それからテレビを所有していない世帯、マスコミ関係者のいる世帯などを除き、無作為に対象世帯を選ぶという方法です。この方法を用いるのは、視聴率から「その地区で何世帯見たか」を推定することができるからです。ちなみにサンプリング調査なので、標本誤差が伴うことは忘れてはいけません。例えば、関東地区で視聴率10%ですと考慮すべき標本誤差は±2.0%あります。

――実際に設置している世帯には、謝礼などが支払われるのでしょうか?

中原:はい。調査にご協力いただいている対象世帯には、謝礼をお支払しています。

――家に複数台テレビがある場合は、どこまで計測しているんですか?

石川:関東地区を例にとると、1世帯あたり最大8台まで計測可能です。視聴率の算出の仕方ですが、例えばリビングのテレビでA局を見て、子供が自分の部屋でB局を見ている場合は、その世帯はA局もB局も視聴しているとしてカウントされます。

――マイナビニュースの読者から「テレビの視聴率って何で大事なの?」という質問も預かっています。お話を聞いていると、大がかりな調査をしている印象を受けるのですが、どうしてそこまでやるのでしょうか?

中原:民放局さんでは広告の取引する上で、CMがどれくらいの人に見られているのかが非常に大事になってきます。その広告の効果を測るひとつの指標として視聴率は利用されています。それに加え、国民の関心や社会の動きを知るという社会調査的な側面でも利用いただいています。最近はよくニュースに取り上げていただいているので、『逃げるは恥だが役に立つ』もそうでしたが、『半沢直樹』や『家政婦のミタ』など、視聴率が高いとなにかと話題になりました。視聴率はその時代やトレンドを映す鏡でもあります。

――最近「タイムシフト視聴率」や「総合視聴率」など、新たな視聴率の数字が発表されるようになりましたよね。

石川:まず、現行の視聴率の定義ですが、地上波などのテレビ放送を家庭内にあるテレビで、リアルタイムで見ているものを「視聴率」と言っています。去年の10月から新たにタイムシフトでの視聴を示す「タイムシフト視聴率」と、リアルタイムでの視聴とタイムシフトの視聴のいずれかでの視聴を示す「総合視聴率」の各サービスを始めました。タイムシフト視聴率は録画した番組を7日以内(168時間以内)に再生したタイムシフトによる視聴の実態を表わします。リアルタイム視聴率に加え、今回「タイムシフト視聴率」と「総合視聴率」2つの指標を併せて把握することで、番組の見られ方の違いを多面的に捉えることができるようになりました。

――民放は見逃し視聴配信の「TVer」を始めましたし、NHKはインターネットでの同時配信を検討していますから、そうした変化に合わせて視聴率調査も進化していくんですね。

中原:そうですね。視聴の分散化が進んでいる中、私どもはすべての視聴を捉えることが必要だと考えています。その第一歩としてタイムシフト視聴の測定を開始しました。これからはモバイル端末での視聴や自宅外での視聴も増えていくということも考えられるので、将来的に計測できるように研究を進めています。

――よく発表される視聴率は地上波のものですが、BSやCS、さらにラジオはどのように調査しているんですか?

中原:テレビに関してはBSやCSは、地上波とは別の世帯を対象に調査をしています。ラジオの場合は「個人聴取率」と呼びますが、テレビとは逆でむしろ自宅外で聴くことが多いので、radikoで聴いた番組でも、外出先や車の中で聴いた番組でも、デバイスや場所に関係なく、日記式の調査票に記入してもらい、それを集計しています。首都圏の場合、2カ月に1度、東京駅の半径35km圏内を調査しています。

――ところで、テレビにおいては視聴率という量的な調査を行っていることは分かったのですが、最近番組の「質」を求める声が高まっている中、ビデオリサーチさんでその類の調査は行っているのですか?

石川:番組への好意度・満足度や、クリエイティブ面での評価などを質的な面から把握できる「テレビ番組カルテ」という調査を1979年から年2回のペースで調査しています。レギュラー番組280番組を対象に、東京30キロ圏で実施しています。データは放送局さんや広告会社さんにサービスしており、番組制作やマーケティングデータとして利用いただいています。さらに課題があれば、個別にカスタム調査も実施しています。

――ほかにも、新聞や雑誌の閲読状況調査やタレントイメージ調査などをはじめ、生活者を多角的に捉えるいろいろな調査をされているのですね。本日はありがとうございました!