POOL inc. CEO&クリエイティブディレクター 小西利行さん

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PCとスマホで仕事を完結させるデジタル派が増えている昨今。数少ない手書きで行う作業のひとつが「メモ」だ。ただの書き写しではなく、次のアイデアを生む価値あるメモはどうすればできるのか。

■あなたのメモはあとで見返せるか

未来の自分を信頼しない──それが仕事の質を上げるメモの極意です。アイデアを考えるとき、企画を練るときやプレゼンの準備、どんなメモでも自分の記憶を信じず、将来の自分の役に立つように意識するだけで、役立ち率が劇的にあがるんです。

では、「使えないメモ」とはどんなものでしょうか。駄目なメモでありがちなのは、何を書いているのか、いつ書いたのかがわからない、ラインを引きすぎたり印をつけすぎて、何が重要なのか見分けがつかないといったものです。

一番意味のないメモは、ホワイトボードの板書やスライドの内容をそのまま書き写したり、話し手が言ったことをそのまま書きとる「お勉強」のようなメモではないでしょうか。そんなメモからは卒業しないといけません。

じつは、偉そうにいっている私も、広告会社に入社して4年くらいはずっと駄目なメモを取っていました。たとえば、ある商品の販促の会議でのこと。前に立って話している人の言葉をメモしていた私は、隣でベテラン社員がつぶやいた「この商品のターゲットは子供を持つ女性なんじゃない?」という着眼点に、「そうですね」とただ相槌を打つだけでした。でもメモを取るべきは、本来そういう会話などの「アイデアのかけら」なんですよね。

そこから脱却できたのは、意識的にメモの取り方を変えたから。具体的には、自分があとで見返すことを想像して書く「未来メモ」をつくるようになってからですね。それがきっかけで大きな案件を任されるようになり、仕事に自信もつき、結果的に独立して働けるようになりました。

■今のアイデアを未来の自分に託す

では、未来メモとは何か。それは、読み返して発見のあるメモです。そのためにも、まずはメモを取ることが大切です。素晴らしいアイデアも、仕事に使えそうなネタも「絶対に忘れない」と思ったその1分後には忘れてしまうのが人というもの。飲み会でいい話を聞いても、すぐ忘れてしまいます。

また、新しいアイデアは「自分の経験」からしか出てきません。アメリカの実業家ジェームス・W・ヤングの「新しいアイデアとは、既存のアイデアを組み合わせたものである」という言葉を知っている人も多いでしょう。でも、やみくもに情報を組み合わせても、新しいアイデアは生まれません。

私の場合、思考に行き詰まったときは過去の自分のメモを見ます。メモは過去の自分の思考や感性と出合わせてくれる。過去の自分と今の情報を掛け合わせると、精度の高いアイデアが生まれるのです。

あとで役立つメモのつくり方はとてもシンプル。かならず日付を書く。○をつける。因果関係を意識して「↓」(矢印)を使う。吹き出しで、視覚的にイメージを付ける。目的ごとにアイデアを繋げる。このルールを自分でやり続けることができれば、見返したときにいつでも情報を引き出すことができるのです。

デジタル化が進み、紙とデジタル、どちらにするか悩んでいる人もいると思います。私はデジタルのメモよりも、紙のメモのほうが優れていると思っています。

なぜなら手書きにすると、労力を避けようと無意識のうちに情報を凝縮しようとするので、自然と精度の高い情報を残すことができるから。またグラフなど、視覚的なイメージもパワーポイントなどでつくろうとすると手間がかかりますが、簡単なグラフや人型に吹き出しをつけるのは、手書きならすぐだし、誰が見てもわかりやすいのです。

どんな仕事にも、たしかな正解はありません。ただ1つ求められるのは、「価値を生むこと」。いいメモはそれを助けてくれる最高の手段なんです。

■価値あるメモをつくる
▼簡単! あとで役立つ自己ルール

気になったこと、ふとした会話などを時系列でメモしていく。同じサイズのメモ帳を使うと、メモの習慣化にも。大事なことに○を付ける際は「ひとつのメモに3つまで」「どこかに書いてあることには○を付けない」「“?”と思ったことに○を付ける」などのルールを決めておくとあとで見返したときに大事だったと気づきます。「→」で目的や繋がりをはっきりさせるのも大事。吹き出しは未来の自分への「指示書」として活用します。

■価値あるメモをつかう
▼見返して去年の自分の思考を確認

メモで大切な要素のひとつが、あとで見返すことを想定して、「検索」できるようにしておくこと。メモはアイデアの外部記憶のための、いわば外付けハードディスク。そのためには、メモを「書いた内容」ではなく「書いた時期」で整理するのがポイントです。メモ帳は仕事別や目的別に分けずに、一冊に書くことをお薦めしています。そうすれば、自然に「時期ごと」にまとまっていくからです。多くの仕事は周期性を持っています。去年の夏はどんなことを考えていたかなど役立つ局面が出てくるはずです。

■価値あるメモを共有する
▼手書きで話し合い、PDFでシェア

会議室のテーブルには常にA4のコピー用紙を用意しています。会議のときはその場で議論しながらメモをつくります。白板を使うと、立っている話し手の言うことを聞くだけになったり、先生と生徒のような関係が生じてしまいがち。テーブルを囲んでメモをつくれば議論も盛り上がり、認識も共有しやすい。つくったメモはそのままスキャンしてPDFに。それを欠席者も共有することができるので便利です。

 

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POOL inc. CEO&クリエイティブディレクター 小西 利行(こにし・としゆき)
1968年、京都府生まれ。大阪大学卒業後、博報堂を経て、2006年に独立。CM制作から商品開発やブランド開発、企業コンサルティング、都市開発までを手がける。これまでに手がけた広告は、500本を超える。サントリー「伊右衛門」「ザ・プレミアム・モルツ」、プレイステーション、LEXUS、一風堂ブランディング等に携わる。著書に『すごいメモ。』(かんき出版)など。
 

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(POOL inc. CEO&クリエイティブディレクター 小西 利行 構成=伊藤達也 撮影=岡田晃奈)