押しも押されもしない中軸の梅津。最終学年を迎え、最終学年となって精神面での成長も見受けられる。写真:雨堤俊祐

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 絶対的エースが去った京都橘が、生まれ変わろうとしている。
 
 昨年の高校サッカー界で脚光を浴び、活躍の場をプロへと移した岩崎悠人(京都サンガへ)が卒業。先のインターハイ京都予選でも実力を見せ付けて優勝を果たすなど、今年も着実に歩を進めているが、いくつかの変化も見せている。
 
 6月10日、インターハイ予選のために中断していたプリンスリーグ関西が再開。京都橘は1-0で関西大一に勝利した。序盤からリズムを掴めないなか、守備陣が踏ん張って失点を許さず、後半に途中出場したFW吉田宗太郎が決勝点を挙げて辛くも勝ちを拾った。勝負強さは見せたものの、米澤一成監督が「内容は悪かった」と話したように、理想とする戦いには程遠かった。
 
 昨年までは堅守速攻型を志向してたが、今年のチームはパスを丁寧に繋ぐポゼッション型を標榜している。戦術変更に踏み切った理由のひとつは、選手の特徴の違いだ。今年は岩崎や堤原翼のような個で局面を打開できるアタッカーがおらず、一方で、ボールコントロールやパスといった技術に長けたタレントが多い。彼らの個性を活かすべく、パスをしっかり繋いで攻撃を構築する戦法がベターと判断したのだ。
 
 もうひとつは、守備面における岩崎の影響力だ。
 
 運動量とスピードを持ち味に、前線からの守備でも労を惜しまなかった前エース。「守備で耐えれば、あいつがなんとかしてくれる」という安心感をチームに与えていた。拮抗した厳しい試合展開を乗り越えられたのは、そこを拠り所とできたからだ。
 
 しかし、前述したように今年はそういった存在がいない。ならば、攻撃の時間を増やすことで守備の負担を減らせないかと目先を変えたのだ。幸い、それを可能にする選手は揃っていた。ポゼッションを円滑にするためにボランチの選手をDFにコンバートするなどの取り組みも、試合を重ねる中で着実に成果を挙げている。
 
 言わば、6年ぶりの原点回帰だ。昨年までの堅守速攻型は選手権で準優勝した2012年度からチームに定着したが、それ以前の京都橘の代名詞と言えば、流麗なパスワークだった。当時、足下の技術に優れた選手たちが織り成すサッカーは魅力的だったが、全国への道は険しかった。その中で、当時の仙頭啓矢、小屋松知哉(ともに現・京都)といった速攻で持ち味を発揮するタレントが戦術変更を後押しし、その後も岩崎らの存在もあり、継続されてきた。
 
 一方で米澤監督はオランダサッカーに強い影響を受けており、以前の取り組みも決して負の遺産だとは考えていない。今年、「脱・岩崎」というテーマと向き合うチームがポゼッションへと舵を切ったのは、必然だったのかもしれない。
 
 モデルチェンジしたチームにあって、存在感を放っているのがMF梅津凌岳だ。
 
 1年時の選手権から背番号10を託され、昨年は岩崎とともに鹿島アントラーズの練習に参加するなど、期待を集める男は、今年からポジションを2列目からボランチに移した。ボールに多く触れながら、2ボランチを組む篠永雄大と攻撃のリズムを作らせる。これが指揮官の狙いだ。チャンスとなれば中盤の低い位置から鋭いドリブルで攻め上がるなど、アクセントを加えている。リズムを創出するか、それとも自ら仕掛けるかの判断が、しっかりできるようになってきた。
 
 さらに、守備面でも貢献度も低くない。「正直、そこ(守備)はできないと思っていたけれど、2列目の時よりもやっている。攻撃面も含めて、覚醒しつつある」と米澤監督も予想外の反応に驚きを隠さない。ボール保持者に身体をぶつけ、球際でも粘り強い対応が見られるようになってきた。本人も「いまは守備に楽しさを感じている」と、前向きに取り組めている様子だ。もちろん発展途上ではあるが、以前のような淡白さは影を潜めている。
 
 また、最終学年となって精神面での成長も見受けられる。関西大一との試合を振り返り、「今日みたいに自分たちの良さを出せない試合というのは、今年の春以降はほとんどなかった。悪いなりにも勝てる力が必要だということ。課題を受け止めつつ、いい経験にしたい」と、チーム全体を見据えた発言をしている。
 
 そうした変化が、高いレベルでどれだけ通用するのか。1か月半後に開幕するインターハイ本大会は、チームにとっても、梅津にとっても試金石となる。
 
 これまでとはひと味違う古都の強豪の戦いぶりに、注目が集まる。
 
取材・文:雨堤俊祐(フリーライター)