この夏、フランスで「Make our planet great again」(我々の地球を再び偉大にしよう)という英語のロゴが入ったTシャツが流行しそうだ。

 フランスのエマニュエル・マクロン大統領がドナルド・トランプ米大統領の「パリ協定」離脱宣言(6月1日)を批判して、エリゼ宮(仏大統領府)からツイッターで発信したのがこの言葉である。

 トランプ大統領の離脱宣言に対しては、米国の内外から激しいブーイングが置きているが、マクロン大統領も離脱宣言の2時間後にこの言葉をツイートした。同時にエリゼ宮から、「米国は世界に背を向けた。しかし、フランスは米大統領の決定に失望した全てのアメリカ人──科学者、技術者、企業人、市民に背を向けない」とフランス語と英語で演説する映像を流した。

[JBpressの今日の記事(トップページ)へ]

世界各国から「いいね」が続々と

「Make our planet great again」は、言うまでもなく、トランプ大統領が選挙戦中にさかんに使った「Make our America great again」(我々のアメリカを再び偉大にしよう)というスローガンをもじったもの。トランプ大統領の離脱宣言に対する痛烈な皮肉でもある。

 ツイッターでこの言葉と映像が発信された直後から、日本をはじめ世界各国のメディアが「各国の反響」としてマクロン大統領のツイートを真っ先に報じた。

 各国のメディアが飛びついたのは、就任直後の新大統領という話題性に加え、英語でのメッセージなので分かりやすかったこともある。トランプ大統領のスローガンを逆手にとったフランス的エスプリに対する喝采の意味もあった。

 米国のCNNやNBCなどの大手報道機関が公式アカウントで「いいね」とリアクションしたほか、ニュースでもトップの扱いで報道した。米国市民からも「親愛なるフランス大統領。貴殿のメッセージに感謝します」などと感謝と共感のツイートが続々と寄せられた。英ガーディアン紙のシンシャア・オリアリー記者は「マクロンは優秀な戦略家」とツイッターで高く評価した。マクロン大統領のツイートは現在リツイート数が20万を超えている。

 この現象に飛び付いたのが、Tシャツ業界だ。白地に英語のロゴをグリーンで刷ったデザインと、グリーン地に白のロゴを配したデザインが主流である。さらにグリーン以外にも様々な色を使ったり、地球儀のイラストを描き入れたものなどが続々登場し、2000円前後と手ごろな値段で売られている。業者らは「この夏の大流行は間違いない」と鼻息が荒い。

マクロン大統領のツイートをデザインに取り入れたTシャツ(出所:adopteunlook.com)


トランプの離脱宣言を許せないフランス

 マクロン大統領のツイッターでの発信には批判もある。フランス政権の中枢、エリゼ宮から母国語のフランス語ではなく英語で発信した点に対してだ。

 大統領選の決戦投票で敗れた極右政党「国民戦線」(FN)のマリーヌ・ルペン党首は早速「可哀想なフランス」とツイートした。右派政党「共和党」(IR)の支持者からも、「フランス大統領がエリゼ宮から英語で発信するとは何ごとか」「ドゴール将軍だったら絶対に行わない愚挙」といった批判が寄せられた。LRのリオネル・ルカ議員は、「エマニュエル・マクロンは米国資本主義の言葉で抵抗を呼びかけた」とカンカンだ。

 フランスは、2015年12月に首都パリで第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)が開催され「パリ協定」が採択されたことに誇りを持っており、関心も高い。

 この10年来、内閣では、エネルギー環境関係の大臣が首相に次ぐナンバー2やナンバー3の地位に就いてきた。例えば2007年に誕生したサルコジ政権では、大物のアラン・ジュペ元首相が開発・エネルギー・運輸相(国務相)として入閣。オランド政権でも、オランド氏の長年の同居人だったセゴネール・ロワイヤル氏ら大物政治家が環境、エネルギー関係の大臣として内閣で上位の地位を占めてきた。

 また、5月に発足したマクロン新政権でも、環境運動家で元人気テレビ司会者兼製作者のニコラ・ユロ氏が、首相、内相に次ぐナンバー3の「環境移行連帯相(国務大臣-副首相)」に就任して話題を呼んだばかりだ。

 こうした背景があるだけに、フランスとしてはトランプ大統領の「パリ協定」離脱宣言は決して許せないというわけだ。

 マクロン大統領のツイートの「大ヒット」に気を良くしたエリゼ宮は6月8日、声名を発表し、このスローガンの公式サイトの創設と、地球温暖化防止に向けて世界的規模で訴えていくことを決めたと述べた。

 マクロン大統領のツイートのおかげもあってか、最新の各種世論調査によると、6月11、18日に行われる総選挙(議席定数577)では、マクロン大統領の母体政党「共和国前進」の候補者が過半数を獲得するだろうとの予測が出ている。大統領選を頂点に下火になるとの観測もあった「マクロン旋風」は、まだ続きそうだ。

[JBpressの今日の記事(トップページ)へ]

筆者:山口 昌子