「Thinkstock」より

写真拡大

 フェイスブックやインスタグラムなどのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の普及とともに、「キラキラ起業女子」と呼ばれる人たちが増加している。

 キラキラ起業女子とは、文字通りキラキラと充実したライフスタイルをSNSで発信して集客する女性起業家のことを指す。一時期に比べてブームは落ち着いたかのように見えたが、実は現在進行形で増え続けているという。

 なぜ、キラキラ起業女子が増えているのか。起業支援コンサルタントの相馬一進氏は、「その理由は参入障壁の低さにあります」と語る。

●キラキラ起業女子の正体は“火の車自営業女子”

 そもそも、具体的にキラキラ起業女子とはどのような人たちなのか。相馬氏によれば、「もっともわかりやすい特徴は、ことさらにSNSで豊かな生活をアピールするところ」だという。

「ビジネスの内容よりも、自身のライフスタイルや自撮り写真をアップするのが彼女たちです。これ見よがしに高級ホテルのラウンジで仕事やミーティングをしているのも、特徴のひとつでしょう」(相馬氏)

 キラキラ起業女子が手がけるビジネスは多岐にわたるが、なかでも目立つのは美容コンサルタントや心理学コンサルタント、起業支援といった領域だ。SNSで参加者を募ってセミナーを行い、その売り上げが収益になっているという。

 また、「起業」といっても法人化しているケースは稀で、ほとんどが自営業か副業の枠を出ないそうだ。しかも、それなりの収益を上げているのは、ほんのひと握りにすぎない。そのため、相馬氏は、SNSなどの写真だけを見て「この人は成功している」とうかつに信用するのは危険だと指摘する。

「キラキラ起業女子を一言で表すなら、“火の車自営業女子”です。SNSで集客するためには“成功している自分”を演出する必要があるので、ハイブランドの服やバッグが不可欠。しかし、実際にはそんなブランド品を買えるキラキラ起業女子はほとんどいません。経済状態は常に困窮していて、自己演出のためのお金が大きな負担になっている人は、かなり多いと思います」(同)

 実際、あるキラキラ起業女子はブログに「起業初期は、ホテルラウンジのお茶代がかなりキツかった」と堂々と書いているほどだ。どんなに懐具合が厳しくても、キラキラ起業女子として集客するには、“華やかでリッチな生活を送る自分”を見せなければならないのである。

●キラキラ起業女子は本の出版がゴール?

 では、儲かっている人はひと握りにもかかわらず、なぜキラキラ起業女子が増えているのか。それは、相馬氏の分析にあったように、キラキラ起業女子は非常にシンプルなビジネスモデルで参入しやすい市場だからだ。

「店舗や事務所を持つ必要がないので、自己資金がなくても簡単に起業できますからね。コンテンツを起業コンサルや美容セミナーにすれば、商品開発のための費用も必要ありません。また、集客もブログやインスタグラムでできるので、極端な話、知識がない人でも簡単に起業できてしまうのです」(同)

 キラキラ起業女子は、資金集めや商品開発、人材育成など、一般の起業家が持つような悩みとは無縁なのである。

 しかし、気になるのは、そんなビジネスが本当に安全なのかということだ。昨年11月、起業塾セミナーの経営者が詐欺で逮捕されたが、これはSNSで派手な生活をアピールして自身の起業セミナーに勧誘し、その参加者に契約者を集めさせるという「マルチ商法」だった。この事件の容疑者は男性だったが、大まかな流れはキラキラ起業女子にも通じるように思える。

 しかし、相馬氏は「あくまで私の考えですが、キラキラ起業女子の場合、マルチの可能性はきわめて低いのではないかと思います」という。

「マルチなどネットワークビジネスの仕組みを構築するのは、かなり大変な作業なんです。収益や人件費、商品の価格設定などをすべて計算する必要があり、専門的な知識を持ったエンジニアが必要になります。それこそ、大きな資金が必要になるわけです。彼女たちのブログやホームページを見る限り、そこまで緻密な価格設定をしているとは、ちょっと思えないですね」(同)

 さらに、キラキラ起業女子の市場は、セミナーなどの「商品」に興味を持つというより、憧れの起業女子がいる「キラキラコミュニティ」に入ることを目的とした客が大部分を占める、という特殊な世界でもある。

 つまり、キラキラ起業女子市場では、その輪の中だけでお金が回っているため、仮に何かあっても「詐欺」「騙された」といった感覚を持つ人はほぼいないという。

「SNSが全盛の現在、キラキラ起業女子は今後さらに増加していくと思われます。ちなみに、キラキラ起業女子としての成功のボーダーラインは、自著の出版といわれています。『本を出せたらゴール』というのが、彼女たちの認識のようです」(同)

 SNSの普及によって増殖するキラキラ起業女子たち。もはや、どこに成功の基準があるのかもよくわからないが、キラキラコミュニティ以外の人に迷惑が及ばないのであれば、彼女たちのキラキラ演出を生暖かく見守っていきたい。
(文=北条マサ子/清談社)