上司が明らかに間違っている時、デキる部下はこう対処する

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馬鹿馬鹿しいと思っても
上司の話をいったん全部聞く

 部下からの報告書や提案に対して、上司が明らかに間違っている、と思われる反応をすることがあります。知らないなら知らないと言って部下から教えを請えばいいのに、知ったかぶりをしたり、大して調べずに決めつけてきたりします。

 部下から見ると馬鹿馬鹿しいとしか言えませんが、そんな時は上司の話をいったん全部聞くしかありません。こちらにも勘違いがあり得ますし、何より、上司の話を途中で遮ったりしたら、それが明らかに間違っていたとしても確実に不機嫌になるので、いいことは何もありません。部下の仕事は上司をうまく活かして成果を出すことであり、正義を高らかに主張することではありません。

 不機嫌になった上司ほどやっかいなものはありませんし、その被害はその日、その案件だけではなく、それ以降も続く場合が結構あります。他の部下にとばっちりがいくこともあります。

 もちろん、上司であっても上司でなくても、人の話は最後まで聞く必要があり、コミュニケーションの出発点です。最後まで聞かないのは、ケンカを売ってしまうことだというくらいに考えておくほうがいいと思います。

上司がなぜそう言うのか
冷静になって考えてみる

 上司が明らかに間違っていると思うときには、なぜそう言うのか、冷静になって考えてみる必要があります。前提が違うのか、優先順位が違うのか、どういう基準だと自分と全く違う結論に達するのか、などの点を一つひとつ考えてみます。

「上司がおかしい」「この上司はやっぱりだめだ」「器の小さい上司だ」などと感情的になっていると、こちらの判断もおかしくなってしまいます。自分がダメだと思っている上司と五十歩百歩になってしまいますので、批判している場合ではありません。

 そうはいっても、面と向かって反対された時に冷静になるのは、多くの人にとって難しいと思いますので、いくつかの方法をご紹介したいと思います。

 一番効果的なのは、上司がなぜそういう判断に至ったのか、最大限譲歩して、上司の目線で考えてみる、ということです。「上司の目線でなんか考えたくない」という向きもおられるでしょうが、それはそれ、これはこれ。相手の立場で考えることで、ずいぶん見えてくるものがあります。

 二番目に効果的なのは、上司の判断や気になること、気づいたこと、こうしたらよいと思いついたことなどをA4メモにどんどん書いていくことです。A4メモというのは、拙著『ゼロ秒思考』(ダイヤモンド社刊)などでお勧めしている方法で、A4用紙を横置きにして、左上にタイトル、右上に日付を書き、本文4〜6行に各20〜30字を1分で書いていく方法です。毎日何かを思いついたときに10〜20ページ書くことで、見えないことまで見えるようになりますし、心が落ち着きます。頭の中を整理し、上司のポイントと自分の見落としに、感情的にならずに気づくようになる最速の方法です。

 三番目に効果的なのは、できればですが、上司との問題を客観的に聞いて、冷静にアドバイスしてくれる同期や1〜2年先輩を社内で2、3名見つけておくことです。皆、自分のこととなると熱くなっても、人の話に対してはかなり的確な助言ができますので、お互いにそういう役をやり合うのもよいと思います。信頼しあっている仲間を普段から作って、自分のバランス感覚や判断について助言をもらう、というやり方ですね。ただ、これは大々的にやる話ではないので、目立たないようにそっと進めます。

自分が社長だったらどうするか
いつも考え、発言し、行動する

 何より効果的なのは、自分が社長だったらどうするか、いつも考えておくことです。これまで、経営改革や新事業立ち上げ支援などで1000人を優に超える部課長と仕事をしてきましたが、「自分が社長だったらどうするか」という視点をいつも持ち、考え、発言し、行動している人にはほとんどお会いしたことがありません。

 自分が社長だったらと考えようとされているという人でも、会社全体のことを考えずに部分的だったり、「本当に社長の立場で考えているつもり?」と聞き返したくなるような現実性のない案だったりします。

 疑問点を突っ込んだとき、何を聞いても答え続けることができる人は本当にわずかで、大半の人は、「え? あ? いや、そういうつもりじゃなくて」といった反応になりますね。

 実は、社長のつもりで考えることは、そこまで難しくありません。会社全体にとっていいことは何か、よくないことは何なのか、自社の強みを活かしてこの案件を進めるにはどうしたらいいのか、誰にどうやらせれば一番スムーズに進むのか、などをこまめに考え続けることで、ずいぶんいろいろなことが見えてきます。

 大切なのは、「自分は社長になったことがないからわからない」ではなく、真面目に考えてみる、ということだけです。多くの人の本音は、「社長になったら考えよう。社長なんか何十年先かわからないし、とてもなれそうにないし。ともかく、今は面倒くさい」というようなことかもしれません。

 社長も、役員も、部課長も、「自分が社長だったらどうするか、いつも考えろ」とはほとんど言いません。禁句になっているのではないのかと思うほどです。それでいて、「何もわかってないな」「もっと考えてくれよ」「これじゃあうまくいかないぞ」というような、全く意味のない、役に立たない指示だけをしがちです。

 ここに大きなチャンスがあります。先ほど信頼できる仲間を作って相談したらと申し上げましたが、その仲間を活かして「社長になったつもりのロールプレイング」をやってみると効果的です。

 ロールプレイングは、3人1組で「社長役」「社長に提案する部長役」「2人のやり取りを横で見守って実施後にフィードバックするオブザーバー役」の3人で行います。部長役の人からある案件について社長に提案し、社長がそれに対して判断をするといったロールプレイングです。

 難しく考えることなく、その場で適当に話をしても十分自然にできますので、心配はいりません。時間も3分程度で十分にできます。3分したら2分間フィードバックをします。これはまずオブザーバー役の人から気づいた点を3〜5点伝え、次に部長役の人が社長の反応についての感想を言い、最後に社長役の人が感想を話します。その全部を2分あればできます。

 こういった形でロールプレイングをやってみると、即座におかしさ、説明の弱さに気づけるようになります。1ラウンド5分、3人で交代してもわずか15分で社長だったらどうするか、驚くほど発見があります。

 社長の視点をある程度理解できるようになると、上司がどうして反対したのか、この案件はどうすればより通りやすいのかなどに関して、全く新しい視点からのヒントを得られることが多くあります。

機会をとらえて上司への理解を深め
ほどよい提案をする

 上司の話をその場で最後まで聞いたり、上司の立場で考えたり、社長の視点を意識して持とうとしたりするだけではなく、上司の価値感、大切に思っていること、どうでもよいと考えていることなど、普段からよく注意して観察し、理解しておくとさらに効果的です。

 そうすると、より広い視野を持てるようになりますし、上司の考え方の基準、考え方のプロセスがよりよく見えてきて、作戦を立てやすくなるからです。

 理解なしに、自分の提案に対してどう反応するのかを予想することはむずかしいですし、満足いく対応をすることはできません。

 理解があれば、上司の価値感、判断を踏まえて、ほどよい提案をすることができるようになっていきます。ほどよいというのは、自分の信条は曲げないまでも、上司のメンツをつぶさず、できれば上司も満足するような方向に誘導していくことです。

 これは媚びを売ることでも何でもないですね。デキる部下のうまい上司操縦法の一つです。

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(ブレークスルーパートナーズ(株)マネージングディレクター 赤羽雄二)