Doctors Me(ドクターズミー)- ほぼ100%嗅ぎ分ける!? がん探知犬が反応する“がんのにおい”とは

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2017年4月末、山形県金山町で全国初の“がん探知犬”による検診が導入され、テレビやネットで話題になったことは記憶に新しいと思います。(参考)

ところで、がん探知犬はどのようにがんに反応しているのでしょうか?

今回は獣医師に、がん探知犬の検査方法や訓練方法などを詳しく解説していただきました。

がん探知犬とは


犬の嗅覚は人間の1億倍も敏感と言われています。

がん探知犬はその優れた嗅覚を生かし、がんに罹患した人の「におい」を嗅ぎ分けられるように特別に訓練された犬たちのことです。

がん探知犬が反応するがんの人のにおいとは?


がん探知犬が反応するにおいの原因物質についてはまだ仮説の域を出ていませんが、歴史的・経験的に、犬ががんに罹患した人のにおいに反応することが報告されています。

揮発性有機物質(VOCs)


正常な細胞が「がん化」すると、異常なスピードで増殖するがん細胞になります。

がん細胞は独自の特殊な代謝系を持ち、その生活サイクルの中で、正常な時には現れない揮発性有機物質(Volatile Organic Compounds: VOCs)が生じると考えられています。

■ VOCsが含まれるもの
がん患者の以下のにおいに犬が反応していると推測されています。

・血液
・尿
・汗
・呼気

がん探知犬が行う検査方法


手順1


既にがん患者と判明している人の検体のにおいをがん探知犬に嗅がせる

手順2


次に検査したい検体を嗅がせる

手順3


がん探知犬によるがんの有無の判定

■ 陰性反応:正常であれば犬はその場を通り過ぎる
■ 陽性反応:検体からがんの徴候を感じると、犬が反応してその場に立ち止まる

ちなみに現在この検査を行っている検査会社では検体として呼気を、市町村でがん探知犬の検査を導入したと発表された山形県金山町では尿を検体にしています。

がん探知犬が行う検査の費用


現在、がん探知犬による一般向けに検査を受け付けている検査会社は限られていますが、一例として呼気を送付して行う会社では、検査を1回あたり5万円と設定しているようです。

がん探知犬はがんの種類を嗅ぎ分けられる?


基本的に、がん探知犬による検査で判明するのは「がんに罹患しているか、いないか」ということで、仮に本検査で陽性が出たとしてもがんがどの部位に存在しているかまでは特定できないとされています。

これはまた、がん患者に共通したVOCsの存在を示唆するものでもあり、今後の研究課題とされています。

しかしながら、一部のがんでは犬の訓練によって種類によった嗅ぎ分けも可能なのではないかという報告もされており、今後に期待されます。

がん探知犬に育てる為の訓練方法


がん探知犬に必要な資質


どんな犬でもがん探知犬になれる訳ではなく、以下を備えている必要があります。

・犬の中でも特に嗅覚に優れている
・訓練そのものに対する耐性、忍耐強さ、素直さがある

訓練方法


1. 既にがんに罹患していると判明した人の検体のにおいを嗅がせる

2. その直後に、正常な人の検体とがん患者の検体をランダムに一列に並べて順番に嗅がせていく
(※この時、犬に表情や態度から察知されないように、検査中に立ち会う人間もどの検体がどれかが分からないようにしておく)

3. 犬は正常な検体を嗅いだらその場から立ち去り、がんである検体を嗅いだら立ち止まる

4. 確認して正解であった場合には、ただちにご褒美としてボール遊びをしてあげる

このように正解であった場合には褒美をあげる、という作業を繰り返して検査精度を上げていきます。

がん探知犬に期待できること


がん特定の精度の高さ


がん探知犬による検査は、陽性を陽性と当てられる「感度」、陰性を陰性と当てられる「特異度」ともに100%に迫るものであり、驚異的な精度を誇ると言われています。

がん化前の段階の早期特定


陽性と判定できるがんのステージも、超初期や、はっきりがん化する以前の異形成の段階から拾えるとも言われております。

検査負担の改善


検体は尿や呼気であることから被験者にとっても検査の負担が少ない、スクリーニング検査として非常に優れたものになる可能性を秘めています。

現在のがん探知犬における課題


数が少ない


存在するがん探知犬の数はわずかで、日本国内には5頭です。

検査体制が整っていない


1頭あたり行える検査の数は数例であり、人間が大規模にスクリーニング検査として行うには検査体制が整っていません。

時間とコストがかかる


がん探知犬を育成するには1頭あたり3年程度、500万円のコストを要し、育成・訓練ができる場所も限られています。

がん探知犬が広く認知され、育成や普及に理解と資金が集まることが期待されています。

犬の寿命


犬の寿命を考えると現役で活動できる年数はさほど長くありません。

VOCsの正体の早期解明


がん探知犬が反応しているVOCsの正体を科学的に突き止めることで、早期の大規模検査への応用が可能になることが想像されます。

こちらの研究も、今後に期待したいところです。

最後に獣医師から一言


盲導犬や聴導犬、セラピードッグなど、従来から人間のために働く職業犬の存在は知られていますが、今回のがん探知犬のように犬の嗅覚で人間のがんを発見できるというニュースはとてもセンセーショナルなものでした。

どの職業犬も、優れた働きをみせる一方でその特殊さから育成までの長い訓練期間、莫大な費用などが課題とされています。

今後も犬の愛護の観点に則りながら、こうした普及活動が広く認知されていくことを期待します。

(監修:Doctors Me 獣医師)