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text: Kazuhide Ueno(上野和秀)
photo: Kazuhide Ueno(上野和秀)、Automobilli Lamborghini S.p.A)

概要紹介に終わらない、渾身の詳細解説

ランボルギーニ・ウラカン・ペルフォルマンテの日本公開と合わせて、新たに採用された最先端技術を詳細に解説するワークショップが行われた。

通常の新車発表の席では概略の説明に留まるが、各部分に盛り込まれたメカニズムを細かくレクチャーされた。

講師を務めたのは、アウトモビリ・ランボルギーニでアドバンス・コンポジット部門のチーフであるルッチアーノ・デ・オト氏。フォージドコンポジットを始めとする最先端の革新素材のスペシャリストだ。

まずはウラカン・ペルフォルマンテに採用されたメカニズムの中で、表側からわかり難い「アエロディナミカ・ランボルギーニ・アッティーヴァ(Aerodinamica Lamborghini Attiva、略してALA)」のメカニズムを中心に紹介しよう。

ALA/エアロディナミカ・ランボルギーニ・アッティーヴァってなに?

ニュルブルクリンクのノルドシュライフェにおいて、それまで市販公道用スーパースポーツの最速をマークしていたポルシェ918の6分57秒5というタイムを、大きく上回る6分52秒01を記録したのがウラカン・ペルフォルマンテだ。

絶対的なパワーだけでは実現できず、優れたコーナリング性能と高いトラクション性能が要求されるのである。そしてタイヤとサスペンションだけのチューニングでは限りがある。

そこで新たなデバイスとして開発されたのがエアロ・ベクタリング機能付きアクティブ・エアロダイナミクスである「アエロディナミカ・ランボルギーニ・アッティーヴァ/ALA」なのである。

ALAを英語に置き換えると「エアロダイナミクス・ランボルギーニ・アクティブ」となる。つまり積極的に空力を活用することを意味する名称なのである。

ALAのシステム概念図。基本的にフラップで流気をコントロールして、最適な空力状態を選ぶ。

 
このシステムを簡単に説明すると、前後ウイングのフラップを開閉することによりダウンフォースを適切にコントロールするもので、コーナリングやブレーキング時にダウンフォース発生させ、メカニカル・グリップを向上させる。いっぽうで超高速時はフラップを閉じて抗力を低減させることにより最高速度に寄与する。

また車両各部のセンサーや制御系を管理する「ランボルギーニ・ピアッタフォルマ・イネルツィアーレ/LPI」は、ALAシステムと連動してあらゆる条件下で、前後ウイングのエアフローをコントロールし、常に最高の空力設定を行う。

こうした新時代のエアフローコントロールを備えることから、ニュルでベストタイムをマークできたのである。

これらのALAシステムは、ダッシュボードのマルチディスプレイ内でエアロ・ベクタリングをはじめとする作動状況を表示できる。

このALAシステムは車体と一体化されているため、そのメカニズムの全貌はあまり見えないが、CGと部分の写真で説明してゆこう。

ALA、実際にどう動く? パーツごとに解説

ALA:フロントウイング

フロントのウイングに付くフラップは左右のインテーク内に設けられている。フラップを開けると流気はスムースにウイングを通り、インナー・チャンネルを経て床下に導くことにより効力を減少させて加速と最高速度を最大化するという。

フロントウイングのフラップは、左右のインテーク内に設けられている。閉じるとダウンフォースを発生する。

 
一方フラップを閉じると流気が遮断され、高いダウンフォースを生み出す。これにより高速コーナリング時やフルブレーキング時の安定性を実現した。なおフラップは電動モーターで開閉され、指令から0.5秒以内に作動する。

ALA:リアウイング

リアにおけるALAの流れは比較的わかりやすい構造といえる。エンジン・コンパートメント後端に左右それぞれ2つに分かれたエアダクトが設けられている。

それぞれのエアダクトの中央寄りはサイレンサーを始めとするエンジン・コンパートメントのクーリング用だが、外側のエアダクトがキーとなる部分なのである。

エンジンフード後端から取り入れた流気は、エアダクト内のフラップが開くとリアウイングの支柱と翼のインナー・チャンネルに流れる。

取り入れた流気は、エアダクト内のフラップで制御し、開くとリアウイングのインナー・チャンネルに流れる。

 
ウイング内に導かれた流気は翼の下面に設けられたスリットから排出されることにより、抗力を低下させ加速と最高速度を最大化するという。

ウイング内に導かれた流気は翼の下面に設けられたスリットから排出されることにより、抗力を低下させる。

 
ALAがオフの状態では外側のエアダクト内のフラップが閉じられ、流気はすべてエンジン・コンパートメント内に排出される。

これによりリアウイングは従来の固定式と同じ働きとなり、速度に比例してダウンフォースを発生させるのである。ちなみにノーマルのウラカンに対し750%ものダウンフォースを発揮するという。

より高いコーナリング性能を実現したエアロ・ベクタリング

ALAシステムは走行状態に合わせてきめ細かなコントロールを行ってくれる。コーナリング時に作動させてのダウンフォースの増大に加えグリップ性能を高めることにより、舵角を減少させるメリットもある。

リアウイングは左右独立した構造で、個別に制御することでき、コーナリング時に作動する。

 
ウラカン・ペルフォルマンテの場合、リアウイングのエア通路は左右の支柱の中を通るもので、ウイング内は左右が独立した構造になっている。そのため片側だけ流気を遮断することにより、一方だけダウンフォースを高めることが可能なのである。

コーナリング時のALAの介入を示したCG。イン側ウイングのフラップを閉じダウンフォースを獲得する。

 
具体的に説明すると、コーナリングを検知するとイン側のエアダクト内のフラップが閉じられる。これによりイン側のダウンフォースだけを増大させて、高いトラクションとコーナリング性能を実現するもの。このコントロールは、LPIがその状況を検知して自動に行われる。

「あの」フォージド・コンポジットの可能性

ALAで重要な役割を担うリアウイングに設けられたインナー・チャンネルは、フォージド・コンポジット製法があったからこそ実現できたシステムなのである。

レジンの母材に炭素を埋め込んで120バールの圧力をかけて成形するフォージド・コンポジットは、剛性はそのままに従来のカーボンファイバー・コンポジットでは不可能だった3次元の複雑な形状が再現でき、デザインの自由度が高めている。

また、大幅な軽量化を現実のものにし、製作時間の短縮(このリアウイングで約5分で出来上がるという)がはかられた。

フォージド・コンポジット製法のパーツは、CFRPの繊維模様とは異なりマーブル調の仕上がりとなる。

 
ちなみにフォージド・コンポジット製法の開発は3年前から始まり、ウラカン・ペルフォルマンテで初めて市販車に採用された。オト氏は将来的にはウラカンでも使用したいと語っていた。

ウラカン・ペルフォルマンテは、フォージド・コンポジット・パーツを使用することを前提に開発されたという。重量的にはフロントとリアのスポイラー、エンジンフード、リアバンパーに採用することにより、合計で40kg削減することに成功している。

リアウイングはフォージド・コンポジット製法により2ピース構造で作られている。従来のCFRPでは10個のパーツに分割されたが、上下ふたつだけで構成できるメリットがある。

ウイングの上面と、インナー・チャンネルを内蔵する支柱とウイング下面で構成されているもので、上下を合体する際に樹脂製の整風パネルが組み込まれる。この導風構造の中空リアウイングは、フォージド・コンポジット製法があったからこそ実現できたものである。

このフォージド・コンポジット製法では、母材となるレジンに炭素を埋め込んで作られるため、従来のカーボン・パーツに見られた繊維の織り目はなく、どちらかというとマーブル模様に近い仕上がりとなるのが特徴だ。

フォージドの先にある「ナノ・コンポジット」とは?

ランボルギーニはカウンタックQVでカーボン・コンポジットを実用化して以来、常に最先端素材の実用化に取り組んで来た。

カーボンファイバーについてボーイングやキャロウェイとパートナーシップを結び、積極的に取り組んでいる。現在ランボルギーニ社は、燃費や走行性能を向上させるキーとして「軽量化」に取り組んでいる。

2016年にアメリカのシアトルにカーボンファイバーや先端素材を開発する「アドバンス・コンポジット・ストラクチャー・ラボラトリー(ACSL)を開設し、その開発をより加速させている。

ランボルギーニは先端素材の開発拠点としてシアトルに「アドバンス・コンポジット・ストラクチャー・ラボラトリー(ACSL)」を開設している。

 
近年は「脱オートクレーブ・テクノロジー」をテーマに、最先端のテクノロジーを積極的に取り入れている。オートクレーブ工法では製作に多大な時間が掛かるため、より生産性を高めたフォージド・コンポジットを既に実用化している。

次なるテーマとして取り組んでいるのがナノ・コンポジットだ。これは、素材を原子や分子のスケールまで粒子化したものを、別の素材に練りこむ複合材料の総称である。現在ランボルギーニはナノ・コンポジットを、2016年から協力関係にある三菱レーヨンと共同で複合素材の製法や工程を開発しているという。

ナノ・コンポジット最大のメリットは軽量なことで、将来的にはウイングではなく、ナノ・コンポジットのパネルを組み込んだボディパネルで空力をコントロールすることも考えているそうだ。

なお、ウラカン・ペルフォルマンテのエンジン、サスペンションを始めとするメカニカルな部分のチューニングは、既にニュースで語られているのでここでは割愛させていただく。

意欲的に最先端の技術を取り入れてゆくランボルギーニの動向は、スーパーカーファンのみならずメカニズムに興味を持つ者にとっても見逃せない存在だ。